7 / 16
7.
しおりを挟む
「私が、セルクス様にもたらすことができる利益とは一体なんでしょうか?」
「簡単なことです。シュタルド王国の情報が私は欲しい」
「情報……」
質問してみると、セルクス様はとても簡単に答えをくれた。
シュタルド王国の情報、確かに私はそれを持っている。隣国の王族としてそれが知りたいというのも、理解することはできる。
考えてみれば、それはとても単純な話だった。少し拍子抜けなくらいである。
「それに、あなたが本物聖女であるなら、バルメルト王国で使えるとも思いました」
「え? 私を雇ってくれるということですか?」
「はい。あなたさえ良ければ、そのつもりです。聖女になる程に優秀な人材をみすみす野放しにしたいとは思いませんからね」
「そうしてもらえると、こちらとしても助かります」
セルクス様に雇ってもらえるなら、それはとても嬉しい。働き先は探さなければならないと思っていたので、これは願ってもない提案である。
ただ、彼は私が本物聖女であるならと言っていた。ということは、まずはその証明をしなければならないということだ。
「罪人であった場合も、結果はそれ程変わりません。シュタルド王国の神器をどのように操ったか聞くつもりです」
「ああ、なるほど、それもあるんですね……」
私が本物の聖女でなかったとしても、利益は得られるという算段だったようである。
情報を持っているのは、本物でも偽物でも変わらない。重要な情報でいえば、偽物の時の方が持っていたとさえいえる。
「残念ながら、私は資質を持たない者が神器を操る方法は知りません」
「ほう、ということはあなたは本物の聖女だったという訳ですか?」
「ええ、そうです。といっても、信用できないかもしれませんが……」
「いえ、ポールス先生がそう言っていたので、恐らくそうなのだと思ってはいました」
私の言葉に対して、セルクス様はゆっくりと首を振った。
そういえば、彼とポールス先生はどういう関係なのだろうか。
「セルクス様は、ポールス先生とどういったお関係なんですか?」
「彼は、私の師匠のようなものです」
「師匠?」
「魔法やその他勉学の家庭教師のようなことをしてもらっていました。今でも、彼とは連絡を取り合っています。個人的なことも、個人的ではないことも含めて」
「それって……」
セルクス様の言葉が、私は少し怖かった。
個人的なことはともかく、個人的ではないこととはなんなのだろうか。
いや、そもそも私のことも個人的なこととは言い難い。もしかして、シュタルド王国の内部事情というものは漏れているのだろうか。
「簡単なことです。シュタルド王国の情報が私は欲しい」
「情報……」
質問してみると、セルクス様はとても簡単に答えをくれた。
シュタルド王国の情報、確かに私はそれを持っている。隣国の王族としてそれが知りたいというのも、理解することはできる。
考えてみれば、それはとても単純な話だった。少し拍子抜けなくらいである。
「それに、あなたが本物聖女であるなら、バルメルト王国で使えるとも思いました」
「え? 私を雇ってくれるということですか?」
「はい。あなたさえ良ければ、そのつもりです。聖女になる程に優秀な人材をみすみす野放しにしたいとは思いませんからね」
「そうしてもらえると、こちらとしても助かります」
セルクス様に雇ってもらえるなら、それはとても嬉しい。働き先は探さなければならないと思っていたので、これは願ってもない提案である。
ただ、彼は私が本物聖女であるならと言っていた。ということは、まずはその証明をしなければならないということだ。
「罪人であった場合も、結果はそれ程変わりません。シュタルド王国の神器をどのように操ったか聞くつもりです」
「ああ、なるほど、それもあるんですね……」
私が本物の聖女でなかったとしても、利益は得られるという算段だったようである。
情報を持っているのは、本物でも偽物でも変わらない。重要な情報でいえば、偽物の時の方が持っていたとさえいえる。
「残念ながら、私は資質を持たない者が神器を操る方法は知りません」
「ほう、ということはあなたは本物の聖女だったという訳ですか?」
「ええ、そうです。といっても、信用できないかもしれませんが……」
「いえ、ポールス先生がそう言っていたので、恐らくそうなのだと思ってはいました」
私の言葉に対して、セルクス様はゆっくりと首を振った。
そういえば、彼とポールス先生はどういう関係なのだろうか。
「セルクス様は、ポールス先生とどういったお関係なんですか?」
「彼は、私の師匠のようなものです」
「師匠?」
「魔法やその他勉学の家庭教師のようなことをしてもらっていました。今でも、彼とは連絡を取り合っています。個人的なことも、個人的ではないことも含めて」
「それって……」
セルクス様の言葉が、私は少し怖かった。
個人的なことはともかく、個人的ではないこととはなんなのだろうか。
いや、そもそも私のことも個人的なこととは言い難い。もしかして、シュタルド王国の内部事情というものは漏れているのだろうか。
13
お気に入りに追加
394
あなたにおすすめの小説
四度目の正直 ~ 一度目は追放され凍死、二度目は王太子のDVで撲殺、三度目は自害、今世は?
青の雀
恋愛
一度目の人生は、婚約破棄され断罪、国外追放になり野盗に輪姦され凍死。
二度目の人生は、15歳にループしていて、魅了魔法を解除する魔道具を発明し、王太子と結婚するもDVで撲殺。
三度目の人生は、卒業式の前日に前世の記憶を思い出し、手遅れで婚約破棄断罪で自害。
四度目の人生は、3歳で前世の記憶を思い出し、隣国へ留学して聖女覚醒…、というお話。
結婚式前日に婚約破棄された公爵令嬢は、聖女であることを隠し幸せ探しの旅に出る
青の雀
恋愛
婚約破棄から聖女にUPしようとしたところ、長くなってしまいましたので独立したコンテンツにします。
卒業記念パーティで、その日もいつもと同じように婚約者の王太子殿下から、エスコートしていただいたのに、突然、婚約破棄されてしまうスカーレット。
実は、王太子は愛の言葉を囁けないヘタレであったのだ。
婚約破棄すれば、スカーレットが泣いて縋るとおもっての芝居だったのだが、スカーレットは悲しみのあまり家出して、自殺しようとします。
寂れた隣国の教会で、「神様は乗り越えられる試練しかお与えにならない。」司祭様の言葉を信じ、水晶玉判定をすると、聖女であることがわかり隣国の王太子殿下との縁談が持ち上がるが、この王太子、大変なブサメンで、転移魔法を使って公爵家に戻ってしまう。
その後も聖女であるからと言って、伝染病患者が押しかけてきたり、世界各地の王族から縁談が舞い込む。
聖女であることを隠し、司祭様とともに旅に出る。という話にする予定です。
【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!
チャららA12・山もり
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。
お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。
無能と罵られた私だけど、どうやら聖女だったらしい。
冬吹せいら
恋愛
魔法学園に通っているケイト・ブロッサムは、最高学年になっても低級魔法しか使うことができず、いじめを受け、退学を決意した。
村に帰ったケイトは、両親の畑仕事を手伝うことになる。
幼いころから魔法学園の寮暮らしだったケイトは、これまで畑仕事をしたことがなく、畑に祈りを込め、豊作を願った経験もなかった。
人生で初めての祈り――。そこで彼女は、聖女として目覚めるのだった。
仕事ができないと王宮を追放されましたが、実は豊穣の加護で王国の財政を回していた私。王国の破滅が残念でなりません
新野乃花(大舟)
恋愛
ミリアは王国の財政を一任されていたものの、国王の無茶な要求を叶えられないことを理由に無能の烙印を押され、挙句王宮を追放されてしまう。…しかし、彼女は豊穣の加護を有しており、その力でかろうじて王国は財政的破綻を免れていた。…しかし彼女が王宮を去った今、ついに王国崩壊の時が着々と訪れつつあった…。
※カクヨムにも投稿しています!
※アルファポリスには以前、短いSSとして投稿していたものです!
二周目聖女は恋愛小説家! ~探されてますが、前世で断罪されたのでもう名乗り出ません~
今川幸乃
恋愛
下級貴族令嬢のイリスは聖女として国のために祈りを捧げていたが、陰謀により婚約者でもあった王子アレクセイに偽聖女であると断罪されて死んだ。
こんなことなら聖女に名乗り出なければ良かった、と思ったイリスは突如、聖女に名乗り出る直前に巻き戻ってしまう。
「絶対に名乗り出ない」と思うイリスは部屋に籠り、怪しまれないよう恋愛小説を書いているという嘘をついてしまう。
が、嘘をごまかすために仕方なく書き始めた恋愛小説はなぜかどんどん人気になっていく。
「恥ずかしいからむしろ誰にも読まれないで欲しいんだけど……」
一方そのころ、本物の聖女が現れないため王子アレクセイらは必死で聖女を探していた。
※序盤の断罪以外はギャグ寄り。だいぶ前に書いたもののリメイク版です
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる