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「私が、セルクス様にもたらすことができる利益とは一体なんでしょうか?」
「簡単なことです。シュタルド王国の情報が私は欲しい」
「情報……」

 質問してみると、セルクス様はとても簡単に答えをくれた。
 シュタルド王国の情報、確かに私はそれを持っている。隣国の王族としてそれが知りたいというのも、理解することはできる。
 考えてみれば、それはとても単純な話だった。少し拍子抜けなくらいである。

「それに、あなたが本物聖女であるなら、バルメルト王国で使えるとも思いました」
「え? 私を雇ってくれるということですか?」
「はい。あなたさえ良ければ、そのつもりです。聖女になる程に優秀な人材をみすみす野放しにしたいとは思いませんからね」
「そうしてもらえると、こちらとしても助かります」

 セルクス様に雇ってもらえるなら、それはとても嬉しい。働き先は探さなければならないと思っていたので、これは願ってもない提案である。
 ただ、彼は私が本物聖女であるならと言っていた。ということは、まずはその証明をしなければならないということだ。

「罪人であった場合も、結果はそれ程変わりません。シュタルド王国の神器をどのように操ったか聞くつもりです」
「ああ、なるほど、それもあるんですね……」

 私が本物の聖女でなかったとしても、利益は得られるという算段だったようである。
 情報を持っているのは、本物でも偽物でも変わらない。重要な情報でいえば、偽物の時の方が持っていたとさえいえる。

「残念ながら、私は資質を持たない者が神器を操る方法は知りません」
「ほう、ということはあなたは本物の聖女だったという訳ですか?」
「ええ、そうです。といっても、信用できないかもしれませんが……」
「いえ、ポールス先生がそう言っていたので、恐らくそうなのだと思ってはいました」

 私の言葉に対して、セルクス様はゆっくりと首を振った。
 そういえば、彼とポールス先生はどういう関係なのだろうか。

「セルクス様は、ポールス先生とどういったお関係なんですか?」
「彼は、私の師匠のようなものです」
「師匠?」
「魔法やその他勉学の家庭教師のようなことをしてもらっていました。今でも、彼とは連絡を取り合っています。個人的なことも、個人的ではないことも含めて」
「それって……」

 セルクス様の言葉が、私は少し怖かった。
 個人的なことはともかく、個人的ではないこととはなんなのだろうか。
 いや、そもそも私のことも個人的なこととは言い難い。もしかして、シュタルド王国の内部事情というものは漏れているのだろうか。
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