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65.なき後悔
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「姉上、僕は使用人達の思いをありがたく思っています。僕にとって、彼らの提案は都合が良い。その申し出を断わる理由はありませんでした。しかしながら、姉上の判断を仰ぎたい。当然、お二人の判断も……」
ロディオスは姉に目を向けた後、私とリオネル様にも目を向けた。
改めて見てみると、彼の服には黒い染みがある。それはここで起こったことを示唆していた。
ルルファナ嬢も、悪い冗談だと思いたかったことだろう。しかしどうやら、これは現実に起こっていることであるらしい。トレイル子爵は、既に亡くなっているのだ。
「……私は」
ロディオスの言葉を受けて、ルルファナ嬢はゆっくりと口を開いた。
その表情は暗い。彼女は落ち込んでいる。いくらひどい扱いを受けてきたとは言っても、実の父親の死に憔悴しているのだろう。
「あなたがやったことを、支持することなんてできない……そう言いたいけれど、でも」
「でも?」
「……お父様には恨みがあるわ。恨みしかないとさえ、言えるかもしれない。それが人道に反していることであっても、私はあなたの行動を否定できない。お父様が消えることが、このトレイル子爵家の未来を切り開くことも私にはわかります。あのお父様よりも、あなたが当主になった方が絶対に良い……」
ルルファナ嬢は、ゆっくりと言葉を発していた。
彼女の考えとしては、トレイル子爵の件を見逃すというのが結論であるようだ。内に入っているルルファナ嬢は、自身の感情に加えて、子爵家にとって良いことを選んだということなのだろう。
私やリオネル様は、同じように判断ができるという訳ではない。部外者である私達は、トレイル子爵家を考慮するかどうかを、まず考えなければならないのだ。
「お二人はどう思われますか?」
「……ロディオス子爵令息、あなたは僕達が反対したら、大人しくその首を差し出すつもりなのですか? まず僕はそれを確認しておきたい」
「もちろんです。覚悟はしています。そうなったとしても、後悔はありません。正しいことをしたとは思っていません。しかしながら、これが間違いであったとしても僕はそれでいいと思っています。少なくとも、レメティア姉上のようなことはもう起きないのですから」
リオネル様の言葉に、ロディオスは答えた。
彼は、手を上げている。それは自らの運命を、私達に委ねるという合図であるだろう。
その言葉には、恐らく嘘はないのだろう。少し話しただけだが、彼がそういう人であることは理解できた。
それなら後は、結論を出すだけだろう。私達はこの一件を、どう判断するべきなのだろうか。
ロディオスは姉に目を向けた後、私とリオネル様にも目を向けた。
改めて見てみると、彼の服には黒い染みがある。それはここで起こったことを示唆していた。
ルルファナ嬢も、悪い冗談だと思いたかったことだろう。しかしどうやら、これは現実に起こっていることであるらしい。トレイル子爵は、既に亡くなっているのだ。
「……私は」
ロディオスの言葉を受けて、ルルファナ嬢はゆっくりと口を開いた。
その表情は暗い。彼女は落ち込んでいる。いくらひどい扱いを受けてきたとは言っても、実の父親の死に憔悴しているのだろう。
「あなたがやったことを、支持することなんてできない……そう言いたいけれど、でも」
「でも?」
「……お父様には恨みがあるわ。恨みしかないとさえ、言えるかもしれない。それが人道に反していることであっても、私はあなたの行動を否定できない。お父様が消えることが、このトレイル子爵家の未来を切り開くことも私にはわかります。あのお父様よりも、あなたが当主になった方が絶対に良い……」
ルルファナ嬢は、ゆっくりと言葉を発していた。
彼女の考えとしては、トレイル子爵の件を見逃すというのが結論であるようだ。内に入っているルルファナ嬢は、自身の感情に加えて、子爵家にとって良いことを選んだということなのだろう。
私やリオネル様は、同じように判断ができるという訳ではない。部外者である私達は、トレイル子爵家を考慮するかどうかを、まず考えなければならないのだ。
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「……ロディオス子爵令息、あなたは僕達が反対したら、大人しくその首を差し出すつもりなのですか? まず僕はそれを確認しておきたい」
「もちろんです。覚悟はしています。そうなったとしても、後悔はありません。正しいことをしたとは思っていません。しかしながら、これが間違いであったとしても僕はそれでいいと思っています。少なくとも、レメティア姉上のようなことはもう起きないのですから」
リオネル様の言葉に、ロディオスは答えた。
彼は、手を上げている。それは自らの運命を、私達に委ねるという合図であるだろう。
その言葉には、恐らく嘘はないのだろう。少し話しただけだが、彼がそういう人であることは理解できた。
それなら後は、結論を出すだけだろう。私達はこの一件を、どう判断するべきなのだろうか。
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