妹のように思っているからといって、それは彼女のことを優先する理由にはなりませんよね?

木山楽斗

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57.とりあえずの訪問

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 ボルダン子爵から話を聞いた私達は、トレイル子爵のことを警戒することになった。
 今回の件は、彼が起こしたことかもしれない。私達は、そうも考えている。恐らくボルダン子爵もそれが過ったから、忌憚のない評価を述べてくれたのだろう。
 ただそれらの話を受けても、私達の目的地が変わる訳ではなかった。とりあえずトレイル子爵家の屋敷に向かうことにしたのだ。

「まあ、僕達の訪問を無下にすることなどはないでしょう。トレイル子爵が苛烈な思想を持つ者だとしても、外面は保たなければならないですから」
「そうですね。家では暴君だったとしても、外で同じように振る舞えば、待っているのは孤立です」
「僕達の訪問には、正当性があります。事件の記事を読んで駆けつけてきた。それは何もおかしいことではありません」

 新聞には、レメティア嬢が重傷であると書いてあった。
 それを見て急いで支度して見舞いに行くということは、友人であればおかしいことではない。故に、リオネル様の言う通り無下にされることなどもないだろう。
 そもそもそういったことに関しては、公爵令息であるリオネル様の存在によってなんとでもなる。彼の地位を考えれば、多少は無茶な要求でも通るだろう。

「記事では確か、レメティア嬢は意識がないとされていましたよね?」
「あ、はい。そうですね」
「本人から話を聞けないというのは、中々に辛いことではありますね。とはいえ、その記載が本当かはわからないし、本当だとしてもこの何日かで目覚めている可能性はありますか」
「そもそも大怪我がなかったということなら、とりあえず安心できるのですけれど……」
「そう思いたい所ですね……」

 私の言葉に、リオネル様は神妙な顔をして頷いた。
 自分でもわかっていることではあるが、怪我がなかったという可能性は低そうだ。むしろ、何か別の理由で怪我をして、それを隠すために事故ということにしているように思えてくる。
 とはいえ、それらは私達の予測に過ぎない。まだ本当に事故にあったという可能性もある。私達が邪推しているだけかもしれない。

 しかし事故の場合でも、チャルリオ様の関与を考えなければならなくなる。
 というか、本来の目的はそちらであった。今となっては、その可能性は低いように思えるが、頭の片隅に留めておくとしよう。

「さて、そろそろ行くとしましょうか」
「ええ、そうしましょう」

 リオネル様と頷き合って、私達は歩き始めた。
 真実を知るためには、とにかくトレイル子爵家を訪ねてみるしかない。そう思って私達は、子爵家の屋敷へと足を踏み入れていくのだった。
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