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41.確かな力量差
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「これ以上、あなたの好きにはさせません!」
「うぐっ、このぉ!」
素早く距離を詰めて来るリオネル様に対して、チャルリオ様はナイフを振るった。
しかしそれは、華麗に避けられている。リオネル様の身のこなしは軽い。何かしらの武術の心得があるのだろうか。彼はそのまま、チャルリオ様の喉に向かって腕を伸ばした。
「ほごっ……!」
喉を突かれて、チャルリオ様は苦しそうに声をあげた。
その間にリオネル様は、チャルリオ様の右の手首に対して手刀を振るっていた。
それによって、彼が持っていたナイフが、辺りに転がる。それを見て私も動いた。私には武術の心得なんてないが、ナイフを拾うくらいはできるからだ。
「くそっ……」
「これで武器もなくなりましたよ。大人しく諦めてください」
「だ、誰が諦めたりなんか……」
数々の打撃を受けたにも関わらず、チャルリオ様は闘志を失っていなかった。
その目はリオネル様を見据えている。周囲の状況については、よくわかっていないようだ。
人質も武器も失ったことで、これまで様子を伺っていた屋敷の使用人達も動けるようになっている。既に数的に不利という事実さえ、チャルリオ様は見落としているらしい。
「僕を馬鹿にするなよ……油断していなければ、お前なんて!」
「無駄に傷つけたくはなかったのですが……」
「――何っ!」
一直線に向かってきたチャルリオ様の手を、リオネル様は取った。
無防備にも伸ばしていた腕を起点に、チャルリオ様の体は宙に浮きあがっていく。
それはきっと、一瞬の出来事ではあったのだろう。ただ私からしてみれば、その時間はとても長く感じられた。
「あ、がっ!」
しばらくしてから、周囲には鈍い音が響き渡った。
それはチャルリオ様が、背中から地面に叩きつけられた音だ。リオネル様は、自分よりも大柄である彼を見事に投げたのである。
それができたということは、二人の間にはかなりの力量差があったということなのだろう。同時に、リオネル様が裏を取った意味もわかった。ぶつかり合ったら勝てるという算段が、彼にはあったということだろう。
「……あ、トゥーリア嬢! 大丈夫ですか?」
リオネル様の投げに見惚れていた私は、先程の出来事を思い出した。
周囲からは使用人達が、チャルリオ様の方に向かっている。衝撃と痛みでのたうち回っている彼を拘束するつもりだろう。
そちらは使用人達に任せればいい。私はそう思いながら、トゥーリア嬢の傍に駆け寄った。
「アルリア嬢、私なら大丈夫です……」
「これは……」
トゥーリア嬢は、自らの頬を押さえていた。
そこからはゆっくりと血が滴り落ちている。どうやら切られたのは、顔であったようだ。その事実に私は思わず、固まってしまうのだった。
「うぐっ、このぉ!」
素早く距離を詰めて来るリオネル様に対して、チャルリオ様はナイフを振るった。
しかしそれは、華麗に避けられている。リオネル様の身のこなしは軽い。何かしらの武術の心得があるのだろうか。彼はそのまま、チャルリオ様の喉に向かって腕を伸ばした。
「ほごっ……!」
喉を突かれて、チャルリオ様は苦しそうに声をあげた。
その間にリオネル様は、チャルリオ様の右の手首に対して手刀を振るっていた。
それによって、彼が持っていたナイフが、辺りに転がる。それを見て私も動いた。私には武術の心得なんてないが、ナイフを拾うくらいはできるからだ。
「くそっ……」
「これで武器もなくなりましたよ。大人しく諦めてください」
「だ、誰が諦めたりなんか……」
数々の打撃を受けたにも関わらず、チャルリオ様は闘志を失っていなかった。
その目はリオネル様を見据えている。周囲の状況については、よくわかっていないようだ。
人質も武器も失ったことで、これまで様子を伺っていた屋敷の使用人達も動けるようになっている。既に数的に不利という事実さえ、チャルリオ様は見落としているらしい。
「僕を馬鹿にするなよ……油断していなければ、お前なんて!」
「無駄に傷つけたくはなかったのですが……」
「――何っ!」
一直線に向かってきたチャルリオ様の手を、リオネル様は取った。
無防備にも伸ばしていた腕を起点に、チャルリオ様の体は宙に浮きあがっていく。
それはきっと、一瞬の出来事ではあったのだろう。ただ私からしてみれば、その時間はとても長く感じられた。
「あ、がっ!」
しばらくしてから、周囲には鈍い音が響き渡った。
それはチャルリオ様が、背中から地面に叩きつけられた音だ。リオネル様は、自分よりも大柄である彼を見事に投げたのである。
それができたということは、二人の間にはかなりの力量差があったということなのだろう。同時に、リオネル様が裏を取った意味もわかった。ぶつかり合ったら勝てるという算段が、彼にはあったということだろう。
「……あ、トゥーリア嬢! 大丈夫ですか?」
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周囲からは使用人達が、チャルリオ様の方に向かっている。衝撃と痛みでのたうち回っている彼を拘束するつもりだろう。
そちらは使用人達に任せればいい。私はそう思いながら、トゥーリア嬢の傍に駆け寄った。
「アルリア嬢、私なら大丈夫です……」
「これは……」
トゥーリア嬢は、自らの頬を押さえていた。
そこからはゆっくりと血が滴り落ちている。どうやら切られたのは、顔であったようだ。その事実に私は思わず、固まってしまうのだった。
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