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37.虚ろながらも
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私とリオネル様は、デュオーラム伯爵家の玄関付近までやって来ていた。
そこには、知った顔が二つある。一つはトゥーリア嬢、もう一つはチャルリオ様だ。
ただチャルリオ様の人相は、以前とは少し変わっているような気がした。その鋭い目つきからは、穏やかさというものが微塵も感じられない。
彼は、トゥーリア嬢を拘束していた。その手にはナイフが握られており、刃はトゥーリア嬢の首元に向けられている。妹を完全に、人質としているようだ。
そんなチャルリオ様は、私とリオネル様の方にその視線を向けてきた。
虚ろながらも、その視線はしっかりとこちらを捉えている。
「アルリア嬢、それに、リオネル様も……うぐっ」
「来ていたのか、アルリア」
「チャルリオ様、トゥーリア嬢をどうするつもりですか?」
「どうするつもり……さあ、どうしようかな。実の所、まだ決まっていないんだ」
私の質問に対して、チャルリオ様は曖昧な言葉を返してきた。
しかしそれでも、受け答えできていることに私は安心する。既に狂いに狂っている可能性もあったからだ。
「そちらはリオネル公爵令息か。あなたは部外者であるというのに、随分と深くかかわっているものだなぁ……」
「僕もここまで関わるつもりはありませんでしたよ。しかしながら、あなたの行動は目に余る。友人として、どうしても放っておくことができませんでした」
「トゥーリア、良い友人を持ったものだな。兄として、僕も鼻が高い」
「お、お兄様……」
チャルリオ様は、自らの腕で拘束しているトゥーリア嬢に話しかけた。
彼女は、苦しそうにしている。それは当然だ。あんな状態のチャルリオ様に拘束されていて、気持ちが良い訳もない。
「チャルリオ様、トゥーリア嬢を離してください。何があったかは知りませんが、あなたも彼女のことを傷つけたい訳ではないでしょう」
「……ああ、それはもちろんだとも。僕はトゥーリアを愛しているからね」
「なっ……」
チャルリオ様は、驚く程に素直にこちらの言葉に頷いた。
ただその言葉には、含みがあるように思えてならない。なんとも奇妙なことではあるが、彼の言葉が私は少し恐ろしかった。
「チャルリオ伯爵令息、あなたがやっていることは、凡そ愛している相手にやることではないと思いますが」
「僕の邪魔をしないでいただきたい。勝手に入り込んできたあなたには特にそう思う」
「お兄様、どうか離してください」
私は、トゥーリア嬢の表情にも注目していた。
彼女の表情からは、恐怖が読み取れる。状況を考えれば、それは当然だ。しかし何故だろうか。今までのトゥーリア嬢のチャルリオ様に対する態度とは、違うような気がする。何か一線を越えているような気がしてならない。
そこには、知った顔が二つある。一つはトゥーリア嬢、もう一つはチャルリオ様だ。
ただチャルリオ様の人相は、以前とは少し変わっているような気がした。その鋭い目つきからは、穏やかさというものが微塵も感じられない。
彼は、トゥーリア嬢を拘束していた。その手にはナイフが握られており、刃はトゥーリア嬢の首元に向けられている。妹を完全に、人質としているようだ。
そんなチャルリオ様は、私とリオネル様の方にその視線を向けてきた。
虚ろながらも、その視線はしっかりとこちらを捉えている。
「アルリア嬢、それに、リオネル様も……うぐっ」
「来ていたのか、アルリア」
「チャルリオ様、トゥーリア嬢をどうするつもりですか?」
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私の質問に対して、チャルリオ様は曖昧な言葉を返してきた。
しかしそれでも、受け答えできていることに私は安心する。既に狂いに狂っている可能性もあったからだ。
「そちらはリオネル公爵令息か。あなたは部外者であるというのに、随分と深くかかわっているものだなぁ……」
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「チャルリオ様、トゥーリア嬢を離してください。何があったかは知りませんが、あなたも彼女のことを傷つけたい訳ではないでしょう」
「……ああ、それはもちろんだとも。僕はトゥーリアを愛しているからね」
「なっ……」
チャルリオ様は、驚く程に素直にこちらの言葉に頷いた。
ただその言葉には、含みがあるように思えてならない。なんとも奇妙なことではあるが、彼の言葉が私は少し恐ろしかった。
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「僕の邪魔をしないでいただきたい。勝手に入り込んできたあなたには特にそう思う」
「お兄様、どうか離してください」
私は、トゥーリア嬢の表情にも注目していた。
彼女の表情からは、恐怖が読み取れる。状況を考えれば、それは当然だ。しかし何故だろうか。今までのトゥーリア嬢のチャルリオ様に対する態度とは、違うような気がする。何か一線を越えているような気がしてならない。
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