妹のように思っているからといって、それは彼女のことを優先する理由にはなりませんよね?

木山楽斗

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33.襲われた彼

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 レーゼル・フェリバー辺境伯は、良い人であると聞いていた。
 好青年、リオネル様はそんな印象を抱いたらしい。
 そんな好青年レーゼル様は、頭に包帯を巻いていた。それは先日あったごたがたによって、傷を負ったからだ。

「あの日は驚きましたよ。まさかチャルリオ伯爵令息が、俺を訪ねて来るとは思っていませんでしたからね。とはいえ、妹を心配する兄が秘密裏に婚約者を確かめに来たというなら、別に納得できないことではありません。快く迎え入れましたよ」

 レーゼル様は、言葉を発しながら苦笑いを浮かべていた。
 どうやら彼は、チャルリオ様のレメティア嬢に関する噂などは知らなかったらしい。知っていたら、きっと少しくらいは警戒しただろう。

「その結果がこれとは、情けない限りです。油断したというのは、言い訳でしかない。辺境伯として、俺はまだまだのようですね」
「……そういった問題ではないと思いますが」

 レーゼル様は、頭の包帯を指差して言葉を発していた。
 その内容は、少しずれているような気がする。襲われたことに関して、彼はあまり気にしていないようだ。気にしているのは、自分が油断したことであるらしい。
 フェリバー辺境伯として、彼は国境付近のいざこざに対応することもある。そういった意味で、油断は禁物ということなのだろうか。

「しかし、チャルリオ伯爵令息のことであなた達二人が訪ねて来たのは、どういったことなのでしょうかね? アルリア嬢に関しては、チャルリオ伯爵令息とは婚約破棄したと聞いていますが」
「……それ程深い理由がある訳ではありません。強いて言うなら、トゥーリア嬢と友人だからでしょうか」
「なるほど、それはわかりやすい。俺は嫌いではありませんよ、そういうのは」

 レーゼル様がチャルリオ様に襲われたということは、大きな事件だ。
 それによって、デュオーラム伯爵家は揺れている。私が恐れていた打撃を、受けることになってしまったのだ。

 それに私達エポイル伯爵家が被害を受けなかったのは、幸いなことではある。
 私の判断は間違っていなかった。両親もきっと、わかってくれたことだろう。

 しかしながら、デュオーラム伯爵家を助けられなかったのは心残りだ。
 だからこそ、私は今現在行方不明になっているチャルリオ様を見つけ出そうと思っている。彼には色々と、報いを受けてもらわなければならない。
 きっとリオネル様も、同じような気持ちであるはずだ。私達は、友人としてトゥーリア嬢を助けたい。それはレーゼル様の言う通り、ともすればわかりやすいことではあるだろう。
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