妹のように思っているからといって、それは彼女のことを優先する理由にはなりませんよね?

木山楽斗

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25.彼女の言い分

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「……まさか、あなたに見られるなんて思っていませんでした」

 私とリオネル様の訪問に対して、レメティア嬢はその表情を歪めていた。
 ボルダン子爵との一件は、彼女にとっても知られたくないことだったのだろう。それがその表情からは伝わってきた。
 ただ、私達に対してそこまで敵対心を抱いているという訳でもなさそうだ。普通に部屋に入れてもらえたし、案外私に敵意などはないのかもしれない。

「先に言っておきますが、別にボルダン子爵とはチャルリオ様のような関係ではありませんからね。それは勘違いしないでください」
「……え?」

 レメティア嬢は、私の方を見てよくわからないことを言ってきた。
 私達は、まだボルダン子爵からどのようなことを聞いたかまでは話していない。彼と一緒にいたこと、父親と呼んでいたことなどを指摘しただけだ。
 それなのに彼女は、既に全てを理解しているかのような言葉を発している。それは私達にとっては、不思議なことだった。

「信じてもらえないかもしれませんが、ボルダン子爵のことは本当に父親のように思っています。私は実の父親と折り合いが悪かったですからね。あの人は私のことを、軽蔑していた。男子を期待していたようですからね」
「あの、レメティア嬢、話が見えてこないのですが……」
「え?」

 レメティア嬢は、早口で捲し立ててきた。
 それは、何かに対する言い訳であるとは思う。ただ、その内容が私にはよくわからない。彼女は一人で、突き進んでいる。

「まず言っておきたいのですが、私はあなたとチャルリオ様の関係について、それ程よく理解できている訳ではありません」
「……チャルリオ様から聞いていないのですか?」
「ええ、何も聞いていません。ああいえ、心の妹だと聞いています」
「そうですか……」

 レメティア嬢は、私の言葉に驚いているようだった。
 その反応から、彼女が心からチャルリオ様のことを兄だと思っていないということは理解できる。どうやらあれは、彼の独りよがりではあるようだ。
 となると、私が当初していた予測は間違っている訳でもないかもしれない。チャルリオ様に関しては、ボルダン子爵とは違い、契約などがあるということではないだろうか。

「てっきり聞いているものだと思っていたのですけれどね」
「どういうことですか?」
「私とチャルリオ様との関係は、金銭の上で成立しているものです。一つのビジネス、と言えますかね」
「ビジネス……」

 私とリオネル様は、顔を見合わせることになった。
 やはり私達の予測は、間違っていなかったようだ。
 ただとなると、ボルダン子爵との違いというものが気になってくる。一体レメティア嬢は、どういった経緯でそのようなことをしているのだろうか。
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