私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗

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39.これからのこと

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「……さてと、これからの話をした方がいいだろうな」

 ブレットンさんの罪から、ギーゼル様は話を切り替えた。
 彼の表情は、明るい。いや明るく振る舞っているのだろうか。やはり先程の話は、これ以上議論したくないようだ。
 そういうことなら、私達も気持ちを切り替えておくべきだろう。行動ができない以上、考えても仕方ないことだからだ。

「アルティリア嬢、わかっているとは思うが、あなたはアンデルト伯爵家の血を引く唯一の令嬢だ。あなたが伯爵家に戻ることを、誰もが望んでいるだろう」
「……そういうものでしょうか?」
「アンデルト伯爵家を狙っている者もいるだろうが、そういう者達もとりあえずあなたには戻って来てもらっておいた方がいいと考えているはずだ。今の揺れているアンデルト伯爵家を狙っても手に入れられるかどうかなんて怪しい所だからな。もっと確実な方法を狙うだろう」
「私との婚約、という訳ですか……」

 現状のアンデルト伯爵家は、宙ぶらりんといっていい状態である。それに手を伸ばすのは確かに危険そうだ。同じように手を伸ばしてきた者と、泥沼になる。
 一方で、私と婚約すれば確実な大義名分を得られるだろう。小娘一人を懐柔するのはそう難しいことではないだろうし、貴族達もそちらの方が楽と思っているのかもしれない。

「……正直な所、戻りたいとはあまり思えませんね」
「まあ、そうだろうな。あなたにとってアンデルト伯爵家は居心地が良い場所ではなかったということは、俺も理解している」
「とはいえ、私が戻らないと困る人が出てくるのですよね? 貴族とかではなくて、アンデルト伯爵家の領地に暮らす人々などが……」

 宙ぶらりんの状態のアンデルト伯爵家は、何の力もない。その状態で被害を一番受けるのは、領地に暮らす人々ということになるだろう。
 今だって、ただでさえ混乱している領地が、これ以上混乱すると何が起こるかはわからない。それは流石の私も、見過ごしたくはなかった。

「まあ、しがらみがなくなった今だからこそ、先祖に報いるというのも良いのかもしれませんね。私にも貴族としての誇りというものが多少はありますし……」
「そうか。しかし、そうなるとあなたはこれから色々な問題に直面することになるな」
「ええ、ですからギーゼル様には力を貸していただきたいのです」
「え?」

 先程まで意気揚々と喋っていたギーゼル様は、私の言葉に驚いているようだった。
 これについては、予想していなかったということだろうか。ただ私としては実の所、レオールさんからイフェルーナのことを聞いた時から考えていたことではある。

「ギーゼル様、どうか私の夫になってください。あなたにはアンデルト伯爵家を、一緒に支えてもらいたいのです」
「それは……」

 何の後ろ盾もない私が、アンデルト伯爵家を守っていく方法、それは単純明快なものだ。
 ギーゼル様及びグライム辺境伯の力を借りる。それが私の考えだ。そのために私は、ギーゼル様と結婚したいのである。
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