私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

３３．無事だったメイド

　騎士団によって、ボルキアとドステロの一味は拘束されていた。
　彼らはこれから、裁きを受けることになるだろう。今回は今までとは違い、彼も成人している。権力による介入もない。彼がまた野に放たれることはないだろう。
　そのことはそれなりに重要なことではある。ただ、今回の私達の主目的はメアリーを助け出すことだった。という訳で、私とギーゼル様とブレットンさんは、一味の拠点に足を踏み入れた。

「あ、アルティリアお嬢様、それにギーゼル様に、ブレットンさんも……」
「メアリー……」
「……元気そうですね？」

　メアリーがいつもと変わらない調子で話しかけてきたため、私とブレットンさんは思わず顔を見合わせていた。
　連れ去れたはずの彼女が、こんな風に元気であるというのは予想外のことだ。もちろん良いことではあるのだが、疑問が湧いて来る。ここで一体、何があったというのだろうか。

「えっと、どうしてそのように元気なのか、私達に教えてくれませんか？　私はてっきり、メアリーはここで大変な思いをしていたと思っていたのですけれど」
「え？　ああ、まあ、確かに大変でしたけど、でも案外話せばわかる人達だったんです」
「というと？」
「私にひどいこととかは、しませんでしたよ。身の上話とかして、盛り上がっていました。最初に連れ去れた時はどうなることかと思っていましたが、危険ではないとすぐにわかりました」

　呆気からんと言葉を口にするメアリーに対して、私は考えることになった。
　基本的に彼女は、良い人である。誰にでも優しいし、だからこそ私の味方にもなってくれた。
　そんな彼女の優しさというものは、ここにいたゴロツキ達にとっても心地良いものだったのだろうか。それで丁重に扱っていたとしか、今は考えらえない。

「イフェルーナお嬢様だけは、反発していましたが……」
「え？　ああ、なるほど、それで彼女が人質になったということですね……」
「人質？　そんなことになっていたんですか？」
「ええ、実はそうなのです。といっても、その件についても解決したのでご心配なく」

　どうやらイフェルーナは、この場において輪を乱す存在となっていたらしい。
　ゴロツキ達に気に入られたメアリーを非難すれば、当然反発されただろう。彼らには、伯爵令嬢の権力なんてものは通用しない。自分達の感情を優先することだろう。
　その結果として、ボルキアはメアリーではなくイフェルーナを人質に選んだ。彼の中でも、優先順位というものが変わっていたということだろう。