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27.話を終えて

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 話を終えた私とギーゼル様は、アンデルト伯爵家の裏口に向かっていた。
 入って来たのもそこからだ。私達の存在というものは、外部に知られてはならないものなのである。

「まあ、なんとかなったと思って良いんだろうな……」
「ええ、流石のアンデルト伯爵夫人も、グライム辺境伯家を敵に回すことは避けたいはずですからね」
「ああ、そこまでの馬鹿ではないだろうな。色々と問題はあるようだが、伯爵夫人であるということは間違いないらしい」

 ギーゼル様は、アンデルト伯爵夫人のことをそれなりに評価しているようだった。
 それについては、私も同意だ。彼女は苛烈な部分はあるものの、愚か者という訳ではない。今回の取引というものを、きちんと認識しているだろう。
 故に私とブレットンさんの安全は、確保できているといえる。もちろん、これから情勢が変わることがないとは言い切れないが、現状特に問題などはないだろう。

「メアリーというメイドも連れていくとしよう。彼女もどちらかというとこちら側であると、アンデルト伯爵夫人も判断するだろうからな……その辺りについて、問題はないだろうか?」
「彼女はラオート男爵家の三女ですから、ここから離れるということにそれ程大きな問題はないと思います。もちろん、ラオート男爵家に話を通しておく必要はあると思いますが」
「その点については、父上が嬉々として行うだろうから問題はないだろう。こちらに仕えられないというなら、別の雇い先を探すだろうさ」

 グライム辺境伯は、ブレットンさんのことを無二の友だと思っている。今回の一件において、彼はなんでもしてくれるだろう。
 メアリーのことも、きっと手厚く保護してくれるはずだ。ブレットンさんは、彼女のことも気に掛けていた。グライム辺境伯も、それを考慮してくれることだろう。

「さてと、そうとなったらさっさとこのアンデルト伯爵家の領地から去りたい所だな。安全ではあると思っているが、どうにも居心地が悪い」
「それはそうですね……メアリーを拾って、ブレットンさんを連れて行きましょう」
「そのメアリーがどこにいるかが問題なのだが……」

 私とギーゼル様は、周囲を見渡していた。
 メアリーとは、事前に話をしている。私達の話が終わったら、裏口の近くで待っていて欲しいと言っておいたのだ。
 しかし、彼女の姿が見えない。それはおかしな話である。メアリーが、その言い付けを守らない訳がない。彼女は優秀なメイドなのだから。

「何か起こっていると考えるべきか」
「……そうかもしれません」

 ギーゼル様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 彼女の身に何かが起こったのかもしれない。これは少し調べてみる必要がありそうだ。
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