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18.影も形もなく
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「隠れたのは賢明だったな。どうやら、騎士達はあなたのことを探しているらしい」
「そうですか……」
馬車の中でじっと隠れていた私は、しばらくして戻って来たギーゼル様と対面していた。
とりあえず戻った判断は、やはり間違っていなかったようだ。ギーゼル様を多少困惑させてしまったかもしれないが、それはこの際もう仕方ない。
「それで話はそこまでしか聞いていないのか?」
「ええ、とにかく私が見つかったらややこしいことになると思って馬車まで隠れて来ました」
「どうやら、アルティリア嬢はアンデルト伯爵の殺害に関与しているとされているらしい。中には首謀者という意見もあるようだ」
「私が首謀者、ですか……まあ、そういう可能性もありますかね」
ギーゼル様の言葉に、私は強い否定の言葉を返すことはできなかった。
お父様には、諸々の恨みがある。お母様のことを抜きにしても、今まで散々な扱いを受けてきたからだ。
そのことで殺意を覚えたことなどはない。しかし、可能性がなかったとは言い切れないのが正直な所だ。一つ何かが違っていたら、私はそうしていたかもしれない。
「しかし、今回に関してそれは的外れとしか言いようがない」
「それはそうですね……」
「問題は、だ。ブレットン氏が影も形もないということにある。騎士は彼のことをまったく何も言っていなかった。何もだ。それはおかしな話じゃないか」
「……影も形も? あり得ません。ブレットンさんは、アンデルト伯爵家で執事をやっていたのですから、いなくなっているなら触れられるはずです。いなくなってないなら、本人が私の関与を否定していることでしょう」
ギーゼル様の言う通り、おかしな状態であった。
ブレットンさんという事件の重要人物の存在がなくなるなんてことは、あり得ないことである。
まさかいなくなって自ら命を絶った結果、わからなくなってしまったのだろうか。
いや、ブレットンさんだって私のことが頭を過ったはずだ。万が一私が罪を被ったりしないように、犯人が自分であると名乗り出てから、ことに及ぶだろう。
「恐らく、この事件の筋書きは、何者かが自分の都合が良いように書き換えたものである可能性が高い。ブレットンさんの犯行の動機を、知られたくなかったのだろう」
「ということは……」
「ああ、アンデルト伯爵夫人が怪しいと俺は思っている。そのことについて、アルティリア嬢に聞いておきたい」
「可能性は高いと思います……ブレットンさんが危ないかもしれませんね」
一応私の母となっているアンデルト伯爵夫人は、利己の利益のためになら事実を捻じ曲げることだろう。
それは別に、悪いことという訳でもない。家を守ろうとすることは、立派なことだと考えることもできる。
問題は、彼女が手段を選ばないことだ。
あの人にとって余計なことを知っているブレットンさんは、もしかしたら今危機的状況にあるかもしれない。それ以上の可能性だってある。
とにかく私は、彼を探さなければならない。無事でいてくれれば良いのだが。
「そうですか……」
馬車の中でじっと隠れていた私は、しばらくして戻って来たギーゼル様と対面していた。
とりあえず戻った判断は、やはり間違っていなかったようだ。ギーゼル様を多少困惑させてしまったかもしれないが、それはこの際もう仕方ない。
「それで話はそこまでしか聞いていないのか?」
「ええ、とにかく私が見つかったらややこしいことになると思って馬車まで隠れて来ました」
「どうやら、アルティリア嬢はアンデルト伯爵の殺害に関与しているとされているらしい。中には首謀者という意見もあるようだ」
「私が首謀者、ですか……まあ、そういう可能性もありますかね」
ギーゼル様の言葉に、私は強い否定の言葉を返すことはできなかった。
お父様には、諸々の恨みがある。お母様のことを抜きにしても、今まで散々な扱いを受けてきたからだ。
そのことで殺意を覚えたことなどはない。しかし、可能性がなかったとは言い切れないのが正直な所だ。一つ何かが違っていたら、私はそうしていたかもしれない。
「しかし、今回に関してそれは的外れとしか言いようがない」
「それはそうですね……」
「問題は、だ。ブレットン氏が影も形もないということにある。騎士は彼のことをまったく何も言っていなかった。何もだ。それはおかしな話じゃないか」
「……影も形も? あり得ません。ブレットンさんは、アンデルト伯爵家で執事をやっていたのですから、いなくなっているなら触れられるはずです。いなくなってないなら、本人が私の関与を否定していることでしょう」
ギーゼル様の言う通り、おかしな状態であった。
ブレットンさんという事件の重要人物の存在がなくなるなんてことは、あり得ないことである。
まさかいなくなって自ら命を絶った結果、わからなくなってしまったのだろうか。
いや、ブレットンさんだって私のことが頭を過ったはずだ。万が一私が罪を被ったりしないように、犯人が自分であると名乗り出てから、ことに及ぶだろう。
「恐らく、この事件の筋書きは、何者かが自分の都合が良いように書き換えたものである可能性が高い。ブレットンさんの犯行の動機を、知られたくなかったのだろう」
「ということは……」
「ああ、アンデルト伯爵夫人が怪しいと俺は思っている。そのことについて、アルティリア嬢に聞いておきたい」
「可能性は高いと思います……ブレットンさんが危ないかもしれませんね」
一応私の母となっているアンデルト伯爵夫人は、利己の利益のためになら事実を捻じ曲げることだろう。
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問題は、彼女が手段を選ばないことだ。
あの人にとって余計なことを知っているブレットンさんは、もしかしたら今危機的状況にあるかもしれない。それ以上の可能性だってある。
とにかく私は、彼を探さなければならない。無事でいてくれれば良いのだが。
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