私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。

木山楽斗

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13.歓喜する辺境伯

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「アルティリア嬢、どうなのだ? ヴォルバルト――いや、ここは敢えてブレットンと呼ぼう。彼はやったのか? やり遂げたのか?」
「……諸悪の根源を断ち切ったという意味ならば、彼はやり遂げたといえるでしょうね」
「……そうか!」

 私の少し曖昧な返答に対して、グライム辺境伯は笑顔を浮かべていた。言わんとしていることは、理解してくれたようだ。
 ただ、本来であれば、それは許されるようなことではない。しかし、私も気持ちは同じだった。お父様は悪魔だ。少なくとも母親と父親になるはずだった人を奪われた私は、そう言ってもいいだろう。

「立場上、直接的に手を貸す訳にもいかなかったが……流石はヴォルバルトだ。彼ならば必ずやり遂げられるとは思っていたが、やはり嬉しいものだな。祝杯でもあげたい気分だ」
「それは流石に、不謹慎かと」
「ふむ、それもそうではあるな」

 グライム辺境伯の喜びようは、異様であるとも思えた。
 それは戦地で築いた友情というものを、私が正しく理解できていないからだろうか。
 いや、お父様のことだ。私が知らない悪事も働いていたに違いない。その辺りの認識の違いが、グライム辺境伯の反応には現れているのではないだろうか。

「さてと、それで君のことだが……」
「あ、えっと……」
「ヴォルバルトは、私に対してそれ程何かを望んではいなかった。手を貸すと言っても、拒否していたくらいだ。しかし、そんな彼が唯一私に頼んできたことがある。それが他ならぬ君のことだ。何かあったら保護してもらいたいと、頼まれている」
「お世話になっても、よろしいのでしょうか?」
「もちろんだ。遠慮する必要などはない。むしろこちらから頼みたいくらいだ。今回の件で、私はヴォルバルトをほとんど手助けできていないからな」

 グライム辺境伯を頼ることについて、私は遠慮しようとは思っていなかった。
 行き場なんてどこにもない私がこのままどこかに行っても、野垂れ死ぬのが関の山だろう。
 当然のことながら命は惜しいため、ここはブレットンさんに感謝しながら助力を得ることにする。ただ、私にはもう一つ気になっていることがあった。

「ブレットンさんは、どうなるのでしょうか?」
「む……」
「私は、あの悪魔を手にかけたブレットンさんがどうするのかを考えていました。その結果は、良いものであるとは言い難いと思うのですが……」

 私の言葉に対して、グライム辺境伯は目を瞑った。
 その思案が、私にとっては答えに等しい。ブレットンさんは、これで終わっても良いという覚悟で、ことに臨んだのだろう。
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