おしどり夫婦を演じていたら、いつの間にか本当に溺愛されていました。

木山楽斗

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16.変化する関係

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「結局、何もなかったみたいですね……」
「何もなかったという訳ではないのではないだろうか。少し雰囲気が違う訳ではあるし……」
「まあ、それはそうですね。でも……」

 夫とともに朝を迎えた日の朝食時、使用人達の声が聞こえてきた。
 本人達は、小声で話しているつもりらしいが、私の耳にはしっかりと届いている。恐らく、アルフェルグ様の耳にも届いているだろう。
 ただなんというか、私達はお互いにそのことについて避けていた。朝起きてからは、なんだか無性に恥ずかしくなって、そそくさとそれぞれの部屋に戻った次第だ。

「……さて」

 朝食が一段落したからか、アルフェルグ様はため息をついた。
 それを聞いた私は、深呼吸する。恐らく、会話が始まるからだ。

「ラフィティア、俺は君に伝えたいことがある」
「……はい、なんでしょうか?」

 アルフェルグ様は、昨日とは違って私のことを真っ直ぐに見てきていた。
 ただ、その顔は昨日と同じように赤い。それはつまり、その内容自体は昨日と同じであることを表している。
 ただ、覚悟が違うのだろう。彼は真っ直ぐに、私と向き合うことを決めたのだ。

「昨日は、まだ気持ちが完全にまとまっているという訳ではなかった。色々とあり過ぎた日だったからな。故に今日、改めて考えていたのだ。そして結論を出すことができた」
「そうですか……」

 アルフェルグ様の行動は、非常に共感できるものだった。私も、今日一人になった時に色々と考えていたからだ。
 そこで私は、周りの様子に気付いた。いつの間にか、使用人達が集まっている。これは恐らく、呼び出されたと考えるべきだろうか。
 つまり、これはランドール侯爵家としての決意表明なのだ。私はそれを心して受け止めなければならない。

「俺は今まで、家族というものを恐れていた。俺自身、その繋がりで苦労してきたからだ。だが、君と暮らしていく内に、その考えは変わっていった。俺は君と家族になりたいと思っている」
「家族に……」
「君を愛し、君に愛されたい。俺はきっと、そういう関係を望んでいる。勝手なことであるとは思っているが、それが今の俺の気持ちだ」

 私は、アルフェルグ様の言葉に固まっていた。
 その真っ直ぐな言葉に、私は感動していたのである。

 アルフェルグ様の心を溶かすことができた。それは私にとって、とても嬉しいことだった。
 彼は良い人である。そんな彼が、過去の因果から解放されたということは、やはり喜ぶべきことだろう。

「アルフェルグ様……私も、気持ちは同じです」
「……そうか。それはなんというか、嬉しいな」
「ええ、私も嬉しいです」

 私達は、お互いに笑顔を浮かべていた。周りの使用人達もそうだ。皆、この関係の進展を祝福してくれている。
 こうして私達は、その関係を進めたのだった。
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