おしどり夫婦を演じていたら、いつの間にか本当に溺愛されていました。

木山楽斗

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13.嫌そうな態度

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 私から提案したことではあるが、いざ部屋を訪ねてみるととても緊張した。
 アルフェルグ様と同じ部屋で一夜を過ごす。それは当然初めてのことだ。彼の方は、この状況をどう思っているのだろうか。

「……」

 そう思って様子を見ると、神妙な顔をしているアルフェルグ様が目に入った。
 なんというか、それは緊張しているというよりも、嫌だと思っているような表情であるような気がする。
 そういう表情をされると、普通に傷つく。私は彼に、女性としてまったく見られていないのだろうか。

「……少しいいか?」
「あ、はい」

 そんなアルフェルグ様は、私に話しかけてきた。
 その表情は、先程までとはまったく違う。なんだかとても真剣だ。
 もしかして、もうことを始めるつもりなのだろうか。思い切りが良すぎるような気もするが、その可能性もあり得ない訳ではない。

「……君は今日、私用で出掛けていたな?」
「え? あ、はい。友人と会っていました」
「申し訳ないが、君には尾行をつけていた。色々と懸念があったからな」
「そ、そうなのですか?」

 アルフェルグ様の言葉に、私は少し驚いた。
 つけられていたなんて、まったく思ってもいなかったことだ。
 護衛をつけていたということだろうか。昼間とはいえ、危険がない訳ではない。アルフェルグ様はその辺りを考慮してくれていたのだろうか。

「今日君があっていたのは、本当にただの友人なのか? まずは、それを君の口から聞かせてもらいたい」
「え? その……確かに、普通の友人という訳ではありません。友人以上の関係と言いますか……」
「何?」

 質問に答えた私に対して、アルフェルグ様はその表情を歪めていた。
 それを見て、私は首を傾げる。私は何か、変なことを言ってしまっただろうか。エルドスは親友であるし、間違ったことは行っていないと思うのだが。

「友人以上の関係なのか? それはつまり……今日の提案はやはり、アリバイ作りということなのか?」
「アリバイ作り?」
「いやしかし、尾行からは何もなかったと聞いているが……」
「アルフェルグ様?」

 アルフェルグ様の様子は、なんだかとてもおかしかった。
 その様子を見ながら、私は少し考えることになった。この妙な反応は、一体なんなのだろうか。

「……あれ?」

 そこで私は、とある大切なことを思い出していた。
 私の親友であるエルドス、彼女には人と異なる事情がある。それを私は、誰かに伝えていただろうか。
 私は、色々なことを失念していたのかもしれない。恐らく、アルフェルグ様は勘違いしている。彼は私が浮気をしていると、思っているのだ。
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