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9.友達との再会

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「久し振りね、エルドス」
「あら、ラフィティア。もう来たのね」
「ええ、善は急げと思ってね。というか、あなたはただでさえ風来坊みたいな所があるもの。早く来ないとどこかに行ってしまいそうだわ」
「流石にあなたと会わずに去るなんてことはしないわよ」

 宿屋の食堂までやって来た私をエルドスは、快く迎え入れてくれた。
 久し振りに会うが、エルドスはまったく変わっていない。いつも通りの涼しい笑顔が、なんだか少し懐かしく思えてくる。

「それにしても、エルドスは変わらないわね。いつも通りで少し安心しているわ」
「あら、ひどいわね。これでも、前より綺麗になったつもりよ」
「ああ、確かに言われてみればそうかもしれないわね」
「ふふ、あなたも綺麗になったわよ、ラフィティア」

 私とエルドスは、軽口を叩き合った。
 気心が知れた相手であるためか、少々饒舌になってしまう。いや、元々口数が少ない方という訳でもないのだが。

「さてと、あなたと会うのはいつ以来かしら? 確か、嫁入り前にはロナリアと三人でお茶会したはずだけれど」
「まあ、一年以上経っているのは確実ね。手紙はもらったけど……それはあなたが婿入り先で上手くいかなかったという手紙だったし」
「それについては、本当に心残りね。両親に申し訳ないことをしてしまったとは思っているわ。でもまあ、私には無理な話だったのよ」

 エルドスは、とある伯爵家の令息である。
 故にエルドスは、同じくとある伯爵令嬢に嫁ぐことになった。
 しかし彼女は、上手くいかなかった。よって今は、家を離れて旅をしているのだ。

「相手と友達にはなれたのだけれどね」
「ふふ、本当に変わっていないわね」
「あら、それはどういう意味なのかしら?」
「エルドスが、優しくて温かい人だという意味よ」

 エルドスに言うつもりはないが、私は彼女の変化に気付いた。
 元々柔らかい雰囲気の人ではあったが、以前よりもそれが顕著になっている。
 それはもしかしたら、肩の荷が下りたからなのかもしれない。もしかしたらエルドスには、今の生活の方が性に合っているのだろうか。

「そう言ってもらえるとありがたいわね。でも、温かい人が友人に碌に連絡もせずに旅したりするかしらね?」
「……まあ、確かにそれについては少し文句が言いたくなってしまうわね。ロナリアも怒っていたわよ?」
「二人は連絡を続けているのね?」
「ええ、それはもちろん。大切なお友達だもの」
「少し耳が痛いわね」

 色々と思う所がないという訳でもないが、エルドスが幸せならそれでいいと思っている。
 とりあえず私は、彼女としばらく楽しい話に花を咲かせるとしよう。
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