妾の子である公爵令嬢は、何故か公爵家の人々から溺愛されています。

木山楽斗

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第47話 秘めたる思いを

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 私は、お兄様から様々な思いを聞いていた。
 その思いを聞いて、私はあることを言わなければならないと改めて思った。私の秘めたる思いは、今こそお兄様に告げるべきものなのだ。

「お兄様、私の話を聞いてもらえますか?」
「なんだ?」
「実は、私にはお兄様に言わなければならないことがあるのです」

 話を切り出そうとすると、私の心臓は鼓動を早めた。
 全身から汗が出てきていることがわかる。その緊張感で、決意が鈍りそうなくらいだ。
 だが、私は言うべきなのである。この思いを隠したまま、お兄様と婚約している現状を、私は良しとできないのだ。

「私は……お兄様のことが好きです」
「……何?」

 決意を込めた私の言葉に、お兄様は目を丸くしていた。
 とても驚いていることは、明白である。妹から告白されたのだから、それは当然のことだろう。
 そんなお兄様に、私は追い打ちをかけなければならない。勘違いや逃げる道を用意しないために、私の思いを確定的なものにさせるのだ。

「兄と妹としてではありません。私は、男女としてお兄様のことが好きなのです」
「……」
「この思いを秘めたまま、お兄様と婚約していることに、私は耐えられません。だから、この思いを告げておこうと思ったのです」
「……そうか」

 お兄様は、かなり動揺しているようである。
 いつもなら、私の言葉に色々と答えてくれるのに、口数がとても少ない。それは、頭の中で色々と考えている証拠だろう。
 お兄様の整理ができるまで、私は待つことにした。聡明なお兄様のことなので、そこまで時間はかからないだろう。

「驚いた……」
「お兄様……」

 お兄様の口から出てきたのは、そのような言葉だった。
 最低限の情報しかないその言葉が、彼がかなり動揺していることを表している。

「お前から、そういう思いを向けられているなど、まったく思っていなかった。だが、その気持ち自体は嬉しいと思っておこう」
「はい……」
「だが、俺にとって、お前は妹だ。そうとしか思ったことはないとまでは言わないが、基本的には妹でしかない」
「わかっていました……」

 お兄様の言葉に、私はゆっくりと頷いた。
 彼が、私のことを妹としか思っていないことはわかっていたことだ。
 わかっていたことでも、言われたら辛い。だが、それは仕方ないことだ。私が告白したのだから、お兄様はそう返すしかないだろう。

「それで、お前はどうしたいのだ?」
「え? どうしたい?」
「婚約について、何か言いたいことがあるのだろう? 一体、どうするつもりなのだ?」
「え、えっと……」

 そこで、お兄様は私に質問してきた。
 婚約について、どうするのか。それは、あまり考えていなかったことである。
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