妾の子である公爵令嬢は、何故か公爵家の人々から溺愛されています。

木山楽斗

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第41話 授業中でも

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 私は、学校に来ていた。
 今日からは、普通に授業が始まっている。
 現在は、魔法に関する授業を受けている。最初の授業であるためか、今日は基本的なことを学ぶようだ。

「魔法というものは、人体に宿る魔力というエネルギーを使って行使される特別な力のことである」

 しかし、私はその授業があまり頭に入ってきていなかった。
 なぜなら、お兄様との婚約が気になって仕方ないからだ。
 だが、このままではいけないだろう。きちんと授業を聞くことが、今の私がやるべきことなのだ。

「皆さんの体にも、魔力が宿っています。その魔力の使い方は、多くの人が知っているでしょう。ただ、知らない人も中に入るかもしれません。ですが、それでも問題ありません。魔法学校では、魔力の使い方を基礎から学ぶことができます」

 授業の内容に耳を傾けようとしたが、やはりあまり集中できない。
 昨日言われたことは、それ程までに衝撃的なことだったのである。
 というか、何故、入学式の後にあのようなことを言われなければならないのだろうか。もう少し落ち着いてから伝えてくれても、良かったはずである。

 それとも、私が入学したからこそ、あの話をしたのだろうか。
 この魔法学校には、色々な人がいる。婚約者を求めている人も、いない訳ではないだろう。
 そういう人達になびかないように、私に話したと考えられないこともない。最も、私にその可能性はなかったのだが。

 それに、私が大人に近づいたから話したとも考えられる。
 魔法学校に入学して、一歩大人になった。だから、話してもいい。そういう流れなのかもしれない。

「まずは、座学による学習を行ってもらいます。魔法がどのような原理で引き起こされているか、どのような魔法があるか、それを学ぶことがこの授業の基本となります」

 そこまで考えて、私は自分が無駄なことを考えていると理解した。
 そんなことは、どうでもいいことである。頭が混乱して、余計なことまで考えてしまっているようだ。
 今重要なのは、お兄様と婚約したという事実だけだろう。その過程など、考えるだけ無駄であるはずだ。

 そもそも、お兄様は今回の婚約についてどう思っているのだろう。
 あの場では、有益だと言っていたが、気持ちとしてはどうなのかは言ってくれなかった。
 それを、私は知りたいと思う。だが、本人に聞いて、素直に教えてくれるものなのだろうか。

「その後は、実習により学んでもらいます。実際に魔法を使って、それらを覚える。どちらかというと、こちらの方が楽しいかもしれませんね」

 そこで、私はあることに気づいた。
 この教室には、一人そういうことが聞けそうな人がいるのだ。
 その人は、お兄様と親しそうだった。もしかしたら、彼から情報が手に入るかもしれない。
 こうして、私はお兄様のことをクリムド様に相談してみることに決めるのだった。
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