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第31話 入学式から帰って
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私は、家に帰って来ていた。
入学式は、午前中で終わったが、少し疲れている。やはり、色々と緊張してからだろうか。
そのため、休もうと思っていたのだが、お兄様から呼び出されていた。なんでも、ある人物が私を呼んでいるらしい。
「ここだ」
「ここは……」
お兄様に連れられて辿り着いたのは、この屋敷の端である。
ほとんど人が寄り付かないこの場所は、ある人物の部屋だ。
そのある人物は、敢えて人々から離れる生活を送っている。自らの罪を戒めるために、ここに籠っているのだ。
「父上、入ってもよろしいでしょうか」
「ああ……」
お兄様の呼びかけに、中から返事が聞こえてきた。
私のお父様であるアルドラ・ルーデインが、この部屋の中に確かにいるのだ。
「失礼します」
「失礼します……え?」
部屋に入って、私は少し驚いた。
なぜなら、部屋の中にはお父様だけでなく、アルニラ様もいたからだ。
アルニラ様は、お父様の隣で少し複雑そうな顔をしている。その顔は、これから話す内容に関係しているのだろうか。それても、お父様の隣にいるからなのだろうか。
「よく来たな……アルード、ラルネア。まずは、一つ謝罪しておこう……」
「謝罪?」
「ラルネア、君の入学式に行かなかったことは申し訳なかった。アルードから聞いたのだが、君は私に来て欲しいと思っていたようだね?」
「あ、えっと……はい」
お父様は、最初に謝罪してきた。
私が、入学式に来なかったことを悲しんでいたことは、お兄様から伝えられていたようである。
なんというか、少し恥ずかしい。小さな子のわがままみたいで、顔が赤くなってしまうのだ。
「とはいえ、私が君の入学式に行くということは、色々と問題でね……君のお母さんを悲しませる訳にはいかない。私は、取り返しのつかないことをしてしまったからね……」
「お父様……」
お父様が入学式に行けなかった事情は、理解できることだった。
だから、私の感情はわがままでしかなかったのだ。それを理解しているから、私はお父様に少し申し訳ない気持ちになっている。
「お言葉ですが、父上。ラルネアはそれを理解できていない訳ではありません」
「アルード?」
「あなたが今、彼女にかけるべき言葉はそういう言葉ではないでしょう。己の罪悪感に酔うより、ラルネアにかけるべき言葉をかけてあげてください」
「かけるべき言葉……」
そこで、お兄様がお父様に声をかけた。
その言葉に、お父様は目を丸くする。
どうやら、お兄様がお父様にこの事実を話したのには、何か意味があったらしい。その意味を、お父様は理解したのではないだろうか。
入学式は、午前中で終わったが、少し疲れている。やはり、色々と緊張してからだろうか。
そのため、休もうと思っていたのだが、お兄様から呼び出されていた。なんでも、ある人物が私を呼んでいるらしい。
「ここだ」
「ここは……」
お兄様に連れられて辿り着いたのは、この屋敷の端である。
ほとんど人が寄り付かないこの場所は、ある人物の部屋だ。
そのある人物は、敢えて人々から離れる生活を送っている。自らの罪を戒めるために、ここに籠っているのだ。
「父上、入ってもよろしいでしょうか」
「ああ……」
お兄様の呼びかけに、中から返事が聞こえてきた。
私のお父様であるアルドラ・ルーデインが、この部屋の中に確かにいるのだ。
「失礼します」
「失礼します……え?」
部屋に入って、私は少し驚いた。
なぜなら、部屋の中にはお父様だけでなく、アルニラ様もいたからだ。
アルニラ様は、お父様の隣で少し複雑そうな顔をしている。その顔は、これから話す内容に関係しているのだろうか。それても、お父様の隣にいるからなのだろうか。
「よく来たな……アルード、ラルネア。まずは、一つ謝罪しておこう……」
「謝罪?」
「ラルネア、君の入学式に行かなかったことは申し訳なかった。アルードから聞いたのだが、君は私に来て欲しいと思っていたようだね?」
「あ、えっと……はい」
お父様は、最初に謝罪してきた。
私が、入学式に来なかったことを悲しんでいたことは、お兄様から伝えられていたようである。
なんというか、少し恥ずかしい。小さな子のわがままみたいで、顔が赤くなってしまうのだ。
「とはいえ、私が君の入学式に行くということは、色々と問題でね……君のお母さんを悲しませる訳にはいかない。私は、取り返しのつかないことをしてしまったからね……」
「お父様……」
お父様が入学式に行けなかった事情は、理解できることだった。
だから、私の感情はわがままでしかなかったのだ。それを理解しているから、私はお父様に少し申し訳ない気持ちになっている。
「お言葉ですが、父上。ラルネアはそれを理解できていない訳ではありません」
「アルード?」
「あなたが今、彼女にかけるべき言葉はそういう言葉ではないでしょう。己の罪悪感に酔うより、ラルネアにかけるべき言葉をかけてあげてください」
「かけるべき言葉……」
そこで、お兄様がお父様に声をかけた。
その言葉に、お父様は目を丸くする。
どうやら、お兄様がお父様にこの事実を話したのには、何か意味があったらしい。その意味を、お父様は理解したのではないだろうか。
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