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第29話 王子との再会
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私は、魔法学校の入学式に来ていた。
当然のことではあるが、入学する学生と保護者は別々の場所で入学式に参加する。そのため、お兄様達とは離れている。
「……」
一人というのは、それなりに緊張するものだった。
周りの視線が、私に集中しているのも、その緊張の要因だ。
この待機場所として設けられている教室は、顔見知りの貴族達が話している。その話している内容は、私のことなのだ。
私をとても甘やかす公爵家の人々を見たことで、そのようになってしまったのである。皆、私が何者なのか、公爵家の人々が何を話しているのか、とても気になっているようだ。
「おや……」
「え?」
そんな私の前に現れたのは、見知った人物だった。
この魔法学校に入学する中で、唯一知っている人。第三王子のクリムド様である。
「お久し振りですね……ルーデインン家の屋敷で会って以来ですから、一ヶ月ぶりでしょうか?」
「お、お久し振りです……そうですね、一ヶ月ぶりだと思います」
クリムド様は、私に話しかけてきた。お兄様達と仲が良いクリムド様が、私に話しかけてくるのは当然のことである。
それにより、教室の視線は私達にさらに集中してくる。公爵家の隠し子と第三王子が話しているという光景は、興味を引くものだろう。
正直、もうその視線は気になっていない。どの道、注目されているので、あまり変わらないのだ。
「なんというか……噂になっているのは知っています。ルーデイン家の人々は、妾の子を大変可愛がっていると、ここに来るまでに何度も聞いていますから」
「そうなのです……なんだか、大変なことになってしまって……」
「まあ、仕方ないことですね。正直、端から見ていると、あなたに対する愛はとてもすごいですから。多分、妾の子でなくても、話題なっていると思います」
クリムド様の言葉に、私はとても納得できた。
確かに、例え私が妾の子でなかったとしても、私の家族の愛は噂になるレベルだろう。
それなのに、妾の子という前提条件までついているのだから、その話題にもちきりになるに決まっている。私だって、他人だったら、噂にしているはずだ。
だから、これは仕方ないことなのだろう。甘んじて、受け入れるしかないのである。
「それに、これで皆さんがあなたの評価を改めてくれるかもしれませんよ? 妾の子だけど、関係ない。そのような認識が広まるかもしれません」
「そうだったら、いいのですけど……」
クリムド様の言葉に、私はゆっくりと頷く。
確かに、そういう噂が広まってくれるなら、とてもありがたいことである。
公爵家の人々が差別していない。その事実は、私に対して差別をしようという気を失わせるものであるだろう。
そうなってくれると嬉しい。淡い希望かもしれないが、抱いておくだけ抱いておこう。
当然のことではあるが、入学する学生と保護者は別々の場所で入学式に参加する。そのため、お兄様達とは離れている。
「……」
一人というのは、それなりに緊張するものだった。
周りの視線が、私に集中しているのも、その緊張の要因だ。
この待機場所として設けられている教室は、顔見知りの貴族達が話している。その話している内容は、私のことなのだ。
私をとても甘やかす公爵家の人々を見たことで、そのようになってしまったのである。皆、私が何者なのか、公爵家の人々が何を話しているのか、とても気になっているようだ。
「おや……」
「え?」
そんな私の前に現れたのは、見知った人物だった。
この魔法学校に入学する中で、唯一知っている人。第三王子のクリムド様である。
「お久し振りですね……ルーデインン家の屋敷で会って以来ですから、一ヶ月ぶりでしょうか?」
「お、お久し振りです……そうですね、一ヶ月ぶりだと思います」
クリムド様は、私に話しかけてきた。お兄様達と仲が良いクリムド様が、私に話しかけてくるのは当然のことである。
それにより、教室の視線は私達にさらに集中してくる。公爵家の隠し子と第三王子が話しているという光景は、興味を引くものだろう。
正直、もうその視線は気になっていない。どの道、注目されているので、あまり変わらないのだ。
「なんというか……噂になっているのは知っています。ルーデイン家の人々は、妾の子を大変可愛がっていると、ここに来るまでに何度も聞いていますから」
「そうなのです……なんだか、大変なことになってしまって……」
「まあ、仕方ないことですね。正直、端から見ていると、あなたに対する愛はとてもすごいですから。多分、妾の子でなくても、話題なっていると思います」
クリムド様の言葉に、私はとても納得できた。
確かに、例え私が妾の子でなかったとしても、私の家族の愛は噂になるレベルだろう。
それなのに、妾の子という前提条件までついているのだから、その話題にもちきりになるに決まっている。私だって、他人だったら、噂にしているはずだ。
だから、これは仕方ないことなのだろう。甘んじて、受け入れるしかないのである。
「それに、これで皆さんがあなたの評価を改めてくれるかもしれませんよ? 妾の子だけど、関係ない。そのような認識が広まるかもしれません」
「そうだったら、いいのですけど……」
クリムド様の言葉に、私はゆっくりと頷く。
確かに、そういう噂が広まってくれるなら、とてもありがたいことである。
公爵家の人々が差別していない。その事実は、私に対して差別をしようという気を失わせるものであるだろう。
そうなってくれると嬉しい。淡い希望かもしれないが、抱いておくだけ抱いておこう。
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