妾の子である公爵令嬢は、何故か公爵家の人々から溺愛されています。

木山楽斗

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第26話 適切な罰

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 私は、馬車の中でお兄様と話していた。
 お兄様は、学校で何を言われるか心配していた私に、よくわからない言葉をかけてきた。
 そんな奴は、魔法学校から消える。それは、どういう意味なのだろうか。

「えっと……それは、どういうことですか?」
「簡単なことだ。お前を妾の子と笑う者がいたなら、俺はそいつを許しはしない。適切な罰を下すだけだ」
「適切な……罰」

 お兄様は、とても怖いことを考えていた。
 私を馬鹿にしただけで、罰を下すというのだ。それは、いくらなんでもやり過ぎではないだろうか。
 適切な罰と言っているが、今のお兄様の口調からそのような罰が下されるとはまったく思えない。念のため、そこも確認した方がいいのだろうか。

「ぐ、具体的にはどういう罰が下されるのでしょうか?」
「一家断絶まで追い込んでやる」
「お兄様、それは絶対に適切な罰ではありません」

 お兄様の口から出てきた罰は、とても重いものだった。
 それは、やり過ぎ所の騒ぎではない。
 私を馬鹿にしただけで、そんなことになったら、この国中の貴族達から反感を買ってしまうだろう。公爵家であろうとも、限度というものがあるはずだ。それは、明らかにその限度を超えている。

「くくく……冗談だ。流石に、俺もそこまで鬼ではない。一家断絶など、最終手段に過ぎない」
「最終手段では、あるのですね……」

 お兄様の冗談は、まったく笑えなかった。
 そもそも、最終手段である時点で、まったく冗談ではない。
 なんというか、お兄様はその最終手段を気軽に使うような気がする。この言葉は、まったく安心できないものだ。

「さて……見えてきたか」
「え?」

 そこで、お兄様は窓の外を見た。
 私も、それに釣られて、窓の外を見る。
 すると、大きな建物が見えてきた。口振りからして、あれが魔法学校なのだろう。

「あれが、魔法学校なのですか?」
「ああ、そうだ」
「あそこが……」

 その建物を、私はしっかりと見据える。
 あの中で、私には色々な困難が降りかかってくるのだろう。
 その困難を、お兄様やアルニラ様辺りに伝えるのはやめておいた方がいいかもしれない。かなり大変なことになるはずだからだ。

「ああ、一つお前に言っておくことがあったな」
「え? なんですか?」

 そこで、お兄様はそのように話しかけてきた。
 何か、思い出したようである。

「あそこには、第三王子のクリムド氏も通うことになっている。とりあえず、覚えて置てくれ」
「あ、そうなのですね……」

 どうやら、クリムド様も魔法学校に通うことになっているらしい。
 それは、少しいいことだろう。私はそこまで知らないが、ルーデイン家とかなり親しい関係の人だ。きっと、仲良くしてもらえるだろう。
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