妾の子である公爵令嬢は、何故か公爵家の人々から溺愛されています。

木山楽斗

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第24話 家族がいるから

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 私は、お母さん、イルマリお姉様、ウィルテリナお姉様の三人に、魔法学校に入学することを告げていた。
 皆、その宣言に落ち込んでいた。特に、お姉様達の悲しみは顕著である。

「二人とも、落ち込まないで……」
「はい……そうですよね、ラルミナ様も辛いのに……」
「わかっています……私達ばかり、落ち込んでいてはいけません」

 そんなお姉様二人を、お母さんは抱きしめた。
 少し大げさな気もするが、二人はその温もりが必要なのだろう。

「お母さん、一緒に過ごせる時間は少なって、一人の時間が長くなってしまうと思うけど……」
「大丈夫、丁度、私もアルニラ様の仕事を手伝うようになったから、問題ないわ」
「そうだね……それなら、寂しくないかな」

 お母さんが一人になることを心配した私だったが、よく考えてみれば、お母さんはアルニラ様の仕事を手伝っているのだ。
 だから、私が魔法学校に行っても行かなくても、その時間は私と一緒にいないのである。そのため、今の生活とあまり変わらない毎日になるようだ。

「それに、私が寂しくなることはないと思うわ。だって、あなたの兄弟姉妹達が、私に色々と相談しに来てくれるもの。皆がいるから、私はちっとも寂しくないと思うわ」
「そうですね……私達、ラルミナ様の元によく訪ねることになると思います」
「いっぱい、相談したいことがありますからね……」

 そこで、お母さんは笑っていた。
 私は、何も心配することはなかったのだ。
 かつて、お母さんの家族は私一人だった。だけど、今は違う。ここにたくさんの家族がいるのだから、お母さんが寂しくなることなどあり得ないのである。

 そのことが、私はなんだか嬉しかった。
 二人きりだった私達には、今はこんなに家族がいる。
 その幸福を、改めて実感することができたのだ。

「さて、落ち込んでいてばかりいても、仕方ないわ……ウィルテリナ、私達がこれからどうするかはわかっているわね」
「ええ、お姉様、もちろんです」

 落ち込んでいた二人のお姉様は、いつの間にか元気を取り戻していた。
 お母さんの言葉を聞いて、何か思う所があったのだろうか。それとも、時間が経ったため、落ち着いてきたのだろうか。

「ラルネア、これから入学するまで、私達はあなたにかなりついて行くと思うわ」
「ついて行く?」
「会えなくなる分を、今しっかり補充しておかなければいけないもの」
「な、なるほど……」

 二人が元気を取り戻したのには、色々と理由があるだろう。
 だが、一番はやるべきことがわかったからなのかもしれない。
 入学するまで、私と一緒にいる。二人の愛を考えれば、とても理解できる選択だ。

「もちろん、ラルミナ様もラルネアとしっかりと一緒にいましょうね?」
「え? 私も?」
「当然です。会えない分を一緒に補充しましょう?」
「……そうね。そうしましょうか」

 二人のお姉様は、お母さんまで巻き込んでいた。
 その言葉に、お母さんは少し明るくなっていた。二人の言葉が、嬉しかったのだろう。
 どうやら、私はしばらく色々な人に囲まれそうである。
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