妾の子である公爵令嬢は、何故か公爵家の人々から溺愛されています。

木山楽斗

文字の大きさ
上 下
23 / 48

第23話 母と姉達

しおりを挟む
 私は、お兄様の指導で、魔法学校に入学するための書類の作成を終えていた。
 そして、自室に戻って来ていた。すると、部屋に数名の人がいたのである。

「ラルミナ様、それで私達はどうすればいいのでしょうか?」
「まあ、心配なのはわかるけど、信頼するしかないのではないと思うわ」
「そうですよね……でも、心配で仕方ないのです……」
「大丈夫、安心して……」

 自室では、お母さんが二人のお姉様を励ましていたのだ。
 この状況に、私は少し驚いていた。色々と、状況が複雑だからだ。

 まず、お母さんは、アルニラ様の仕事を手伝いに行っていたはずである。それなのに、どうして、ここにいるのだろうか。
 しかし、それはすぐに解決した。そういえば、アルニラ様は、先程廊下ですれ違ったのである。恐らく、お兄様と話した後、何か用事があって、あそこにいたのだろう。だから、お母さんが戻ってきたということに違和感はない。

 次に、お姉様達が、どうしてここにいるのかである。
 それは、恐らく、お母さんに相談しに来たのだろう。二人というか、この公爵家の子供達は、お母さんに何かを相談をしに来ることがある。だから、二人はここに来たのだろう。

 とりあえず、状況は整理することができた。
 後は、三人に話しかけるだけである。

「あの……イルマリお姉様、ウィルテリナお姉様、来ていたのですね」
「あ、ラルネア……」
「帰って来たのね……」

 私が話しかけると、お姉様二人は、少しだけ驚いた。
 ただ、私の部屋に私が帰ってくるのは当然のことである。だから、そこまで驚きはないようだ。

「その……どういう選択をしたのか、聞かせてもらえる?」
「ラルミナ様も、気になっていますよね?」
「ええ、ラルネア、言ってもらえるかしら?」

 そこで、お姉様達とお母さんは、私の選択について聞いてきた。
 よく考えてみれば、私の魔法学校入学を選択したことを、皆まだ知らないのだ。
 これを知らせると、お姉様達はきっと悲しむだろう。私やエルヴィルやオルリエと一緒にいたいから、魔法学校に入学しなかった二人が、どうなるかは明白である。
 だが、知らせるしかないだろう。できるだけ、慰められるように努力するとしかない。

「私は、魔法学校に入学することに決めました」

 私は、三人の前で堂々とそう宣言した。
 すると、予想通り、お姉様達の表情は暗くなる。

「やっぱり……そうよね。あなたなら、そういう選択をする。そう思っていたわ」
「だからこそ、私もお姉様もこんなにも心配しているのだもの」

 二人は、私の選択を予想していたようだ。
 確かに、二人もアルニラ様も、私が入学することを前提としていた。皆、私のことをよく理解している。だから、私が何を選択するか、簡単にわかったのだろう。

「私も、わかっていたわ。やっぱり、あなたはそうよね」
「うん、私はこうなんだ……」

 当然、お母さんも私のことを理解していた。
 お姉様達程ではないが、お母さんも少し寂しそうだ。やはり、お母さんですら、そういう気持ちがあるらしい。
 こうして、私は三人に魔法学校に入学することを告げたのだった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!

古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。 そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は? *カクヨム様で先行掲載しております

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

婚約破棄の慰謝料を払ってもらいましょうか。その身体で!

石河 翠
恋愛
ある日突然、前世の記憶を思い出した公爵令嬢ミリア。自分はラストでざまぁされる悪役令嬢ではないかと推測する彼女。なぜなら彼女には、黒豚令嬢というとんでもないあだ名がつけられていたからだ。 実際、婚約者の王太子は周囲の令嬢たちと仲睦まじい。 どうせ断罪されるなら、美しく散りたい。そのためにはダイエットと断捨離が必要だ! 息巻いた彼女は仲良しの侍女と結託して自分磨きにいそしむが婚約者の塩対応は変わらない。 王太子の誕生日を祝う夜会で、彼女は婚約破棄を求めるが……。 思い切りが良すぎて明後日の方向に突っ走るヒロインと、そんな彼女の暴走に振り回される苦労性のヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:29284163)をお借りしています。

学園にいる間に一人も彼氏ができなかったことを散々バカにされましたが、今ではこの国の王子と溺愛結婚しました。

朱之ユク
恋愛
ネイビー王立学園に入学して三年間の青春を勉強に捧げたスカーレットは学園にいる間に一人も彼氏ができなかった。  そして、そのことを異様にバカにしている相手と同窓会で再開してしまったスカーレットはまたもやさんざん彼氏ができなかったことをいじられてしまう。  だけど、他の生徒は知らないのだ。  スカーレットが次期国王のネイビー皇太子からの寵愛を受けており、とんでもなく溺愛されているという事実に。  真実に気づいて今更謝ってきてももう遅い。スカーレットは美しい王子様と一緒に幸せな人生を送ります。

跡継ぎが産めなければ私は用なし!? でしたらあなたの前から消えて差し上げます。どうぞ愛妾とお幸せに。

Kouei
恋愛
私リサーリア・ウォルトマンは、父の命令でグリフォンド伯爵令息であるモートンの妻になった。 政略結婚だったけれど、お互いに思い合い、幸せに暮らしていた。 しかし結婚して1年経っても子宝に恵まれなかった事で、義父母に愛妾を薦められた夫。 「承知致しました」 夫は二つ返事で承諾した。 私を裏切らないと言ったのに、こんな簡単に受け入れるなんて…! 貴方がそのつもりなら、私は喜んで消えて差し上げますわ。 私は切岸に立って、夕日を見ながら夫に別れを告げた―――… ※この作品は、他サイトにも投稿しています。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

貧乏伯爵家の妾腹の子として生まれましたが、何故か王子殿下の妻に選ばれました。

木山楽斗
恋愛
アルフェンド伯爵家の妾の子として生まれたエノフィアは、軟禁に近い状態で生活を送っていた。 伯爵家の人々は決して彼女を伯爵家の一員として認めず、彼女を閉じ込めていたのである。 そんな彼女は、ある日伯爵家から追放されることになった。アルフェンド伯爵家の財政は火の車であり、妾の子である彼女は切り捨てられることになったのだ。 しかし同時に、彼女を訪ねてくる人が人がいた。それは、王国の第三王子であるゼルーグである。 ゼルーグは、エノフィアを妻に迎えるつもりだった。 妾の子であり、伯爵家からも疎まれていた自分が何故、そんな疑問を覚えながらもエノフィアはゼルーグの話を聞くのだった。

処理中です...