妾の子である公爵令嬢は、何故か公爵家の人々から溺愛されています。

木山楽斗

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第18話 その態度は

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 私は、アルードお兄様の部屋に向かう途中、アルニラ様とお姉様達と出会った。
 いつもなら会ってすぐに赤く挨拶してくれる彼女達だったが、今日は何故か何も言ってこない。その様子は、こちらが心配になってくるようなものである。

「ラルネア、その……何と言っていいか、わからないのですけど……」
「え? どうかしたのですか?」
「詳しい話は、アルードからあります。だから、私達はまだ何も言えないのですけど、これからあなたには試練が降りかかるでしょう。そのことが、とても心配なのです」

 そこで、アルニラ様はそのようなことを言ってきた。
 どうやら、アルードお兄様が私を呼び出した用件を、三人は既に知っているようだ。
 恐らく、私に話す前にお兄様が三人に話したということなのだろう。その内容によって、三人はこんな風になっているようだ。

 三人の様子だけ見ると、とても深刻なことが起こったように思える。
 ただ、この三人は筋金入りの心配性だ。案外、くだらないことで、こうなっている可能性もある。

「ラルネア、少し抱きしめてもいい?」
「え? あ、はい……」
「あ、それなら、私も」
「別に構いませんけど……」

 よくわからないが、イルマリお姉様とウィルテリナお姉様が、両側から私を抱きしめてきた。
 雰囲気だけなら、今生の別れのようだ。だが、絶対にその内容はもっとくだらないことである。
 三人の様子から、私はなんとなくお兄様の用件の内容がわかってきた。恐らく、私はしばらくどこかに行くのだ。だから、このように別れの雰囲気なのだろう。

「えっと……イルマリお姉様、ウィルテリナお姉様? その……内容はわかりませんが、きっと大丈夫です。私のことを、あまり心配しないでください」
「そんなことは無理な話よ……」
「イルマリお姉様の言う通り。私達があなたを心配しないなんて、息をしないのと同じようなことだもの」

 どうやら、二人にとって、私を心配することは呼吸と同じようなことらしい。
 かなり大袈裟な表現のように思えるが、二人に関してはまったく誇張表現ではないだろう。実際、息をするように心配してくれるので、間違いはない。

「二人とも、悲しいのはよくわかりますが、そろそろラルネアを離しなさい。アルードも待っているだろうし、行かせてあげないと駄目ですよ」
「はい……わかっていますわ、お母様。さあ、ウィルテリナ、あなたも離しなさい」
「でも……」
「わがままを言っては駄目よ? あなたは、ラルネアのお姉様なのだから、こういう所のメリハリはきちんとして」
「……わかりました」

 アルニラ様の言葉で、名残惜しそうに二人は体を離してくれた。
 なんというか、すごい時間だったが、三人の愛情は感じられた。本当に、愛が深い人達である。
 こうして、私は三人と別れて、お兄様の部屋に向かうのだった。
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