妾の子である公爵令嬢は、何故か公爵家の人々から溺愛されています。

木山楽斗

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第16話 兄の来訪

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 私達の部屋に、アルニラ様が来ていた。
 アルニラ様は、お母さんと話して、結果的に二人は手を取り合っていた。色々とあったが、話はまとまったので、良かったということにしておこう。

「あら?」
「あら?」

 手を取り合っている二人は、ほとんど同時に声をあげた。
 それは、部屋の戸が叩かれたからである。
 とりあえず、私は立ち上がって、戸の方に向かう。流石に、今のアルニラ様やお母さんに行かせようとは思わなかったからだ。

「はーい……え?」
「む? ラルネアか」

 私が戸を開けると、そこにはアルードお兄様が立っていた。
 まさかの人物の来客に、私は思わず動揺していた。しかし、すぐに平静を取り戻す。あまり動揺すると、お兄様が心配しかねないからだ。

「お兄様、何かご用ですか?」
「ああ、お前とエルヴィルとオルリエに用があってここに来た」
「あ、私達もですか?」

 お兄様は、私とエルヴィルとオルリエに用があるらしい。
 その三人は、先程の事件の当事者の三人である。
 私は、少し嫌な予感がしていた。もしかして、お兄様が先程言っていたことが、本当に実現したのではないかと。

「医者が来た。三人とも、念のため診てもらえ」
「あ、やっぱり……」

 私が予想した通り、お兄様はお医者様の来訪を告げに来たのだ。
 正直、私達三人は、診てもらうようなことなど何もない。至って健康で、元気である。
 しかし、逃げ道は封じられていた。私達を逃がさないように、お兄様は自ら来たのだ。他の人ならまだしも、お兄様は絶対に折れてくれないだろう。

「この国でも、有数の名医を連れて来た。お前達に何かあっても、絶対に発見してくれるだろう」
「え? そんな人を呼んだのですか?」

 お兄様の言葉に、私は驚いていた。
 この国での有数の名医が、こんなくだらないことのために来たのだ。
 いや、もちろん、公爵家の人間を診てもらうのは、腕がいい人であることは当然のことではある。ただ、前提にあったことがくだらなさ過ぎて、とても気が引ける。

「わかりました。お兄様、お医者様に診てもらえばいいのですね」
「オルリエ?」
「お姉様、行きましょう。というか、足掻いても無駄なので、早く終わらせるべきだと思います」
「……確かに」

 後ろから来たオルリエの言葉に、私は納得した。
 確かに、言う通りかもしれない。この期に及んで、色々と言ってももう遅いだろう。早く行って、早く終わらせてもらった方が得策である。
 こうして、私達は国でも有数のお医者様に診てもらうのだった。
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