妾の子である公爵令嬢は、何故か公爵家の人々から溺愛されています。

木山楽斗

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第11話 基準は誰か

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 私とお母さんの部屋に、エルヴィルとオルリエが訪ねて来た。
 そこで、オルリエのアルニラ様達に対する愚痴が始まったのである。

「まあ、でも、私も心配性ではありますよね? お母様達程ではありませんが、自覚は持っています」
「そうだね……オルリエも、それにエルヴィルも心配性ではあると思う」
「やっぱり、そうですよね……」

 オルリエは、自分も心配性であることを自覚していた。
 公爵家の人々は、基本的に家族に対する愛情が深い。そのため、心配性になるのだろう。
 というか、別に家族だけに対して心配性という訳でもない。ここで働いている使用人の人達にもそれは向けられている。
 この公爵家の人々は、本当に優しいのだ。その優しさに、私は何度も助けられている。本当に、私の家族には感謝の気持ちでいっぱいだ。

「やっぱり、お兄様くらいがいいのでしょうか? 厳しいけど、心配する。あれが普通ということなのでしょうか?」
「え? お兄様? いや、それは、どうなのかな……」
「でも、お母様やお姉様達に比べると、お兄様はましに見えるのですけど……」
「それは、比較対象がちょっと駄目かな……」

 オルリエの言葉を、私は否定した。
 アルードお兄様は、確かにアルニラ様やお姉様達よりは心配性ではない。だが、それを普通であると考えるべきではないだろう。
 なぜなら、あの三人があまりに心配性であるため、比較対象にすると、大抵の人がましになるからだ。
 お兄様は、充分度を越した心配性である。普通の人は、あんなにすぐにお医者様を呼ばない。それ以外にも、色々とお兄様は心配するので、それを普通だと思うことはやめた方がいいだろう。

「それなら、お姉様くらいが普通ということなのでしょうか?」
「え? 私? それは……自分では、判断が難しいけど……」

 そこで、オルリエは私を基準にしようとした。
 その質問は、少し困るものである。私は、自分ではかなり普通な部類だと思っている。
 だが、他人から見るとどうかわからない。客観視した時、自分がどう映っているなど、判断ができないのである。

「横からで悪いけど……その子も、充分心配性だと思うわ」
「え? お母さん? そうなの?」
「ええ、だって、あなたは私のことをとても心配してくれているでしょう? それは、多分、アルニラ様達程ではないけれど、心配性ではあると思うわ」
「あ、そうなんだ……」

 私の評価については、お母さんが話してくれた。
 どうやら、私も普通ではないようだ。
 確かに、私は結構お母さんのことを気にかけている。二人暮らしだった時に比べればましになっているが、今もそれは変わっていないだろう。
 結局、この公爵家の人間は、私も含めて、心配性であるようだ。
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