6 / 48
第6話 穏やかな態度
しおりを挟む
オルリエと子猫を助けた私の前に現れたのは、この屋敷に訪れていた第三王子のクリムド様だった。
予想していなかった人物の登場に、私はかなり焦っている。正直、王子とはできれば会いたくなかった。その人に会ってしまったため、とても混乱している。
こういう時には、どうすればいいのだろうか。礼儀作法は、お兄様から教えられている。その通りにすれば、いいだけのはずだ。とりあえず、落ち着いて、それを思い出すのだ。
「……大丈夫ですか? なんだか怯えているようですけど」
「え? あ、えっと……」
「緊張しなくても大丈夫ですよ。落ち着いてください。といっても、難しいですよね? 王子に急に話しかけられて、動揺するななんて」
動揺している私に、クリムド様は落ち着いた声で話しかけてきた。
クリムド様は、穏やかな人であるようだ。そのことに、私は少し安心する。
だが、それでも無礼があってはならない。私も、ルーデイン家の一員なのだ。王子に対して、きちんとした態度で接していかなければならないだろう。
「お二人も、そんなに緊張しないでいいですよ」
「え?」
そこで、クリムド様は少し困ったような顔でそう言ってきた。
私が左右を確認すると、それぞれ固まっているエルヴィルとオルリエがいた。
どうやら、二人もかなり緊張しているようだ。それも、当然だろう。相手は同じなのだ。まだ幼い二人が、緊張しないはずはない。
ここは、年長者である私がきちんとしなければならないだろう。弟や妹の前で、みっともない姿を見せている場合ではない。
「ああ、あなたが魔法で救助していた様子は、全て見ていましたよ。見事な手際でしたね……」
「え? あ、ありがとうございます」
「あの距離から、子供とはいえ、人一人を止めておくのはかなり大変でしょう。あなたは、かなりの魔力を持っているようですね」
「えっと……そうなのかもしれません」
クリムド様は、一連の事件の一部始終を向ていたようだ。
確かに、私の魔法の才能はすごいかもしれない。私も、あの距離から人一人を止められることが普通ではないことはわかっている。
その才能があったから、私はオルリエを助けられたのだ。魔法の才能に恵まれていて、本当に良かったと思う。
「あなたには、魔法の才能がありますね。魔法学校への入学などは、考えていますか?」
「え? あ、それは、一応、お兄様からそういう話はされたことはあります」
クリムド様は、魔法学校について触れてきた。
魔法学校とは、魔法の扱い方など習うための学校である。そこへの入学については、お兄様から話されたことが何度かあった。魔法以外も学べるし、行っておいて損はないそうだ。
ただ、ルーデイン家に学費まで出してもらうのは、少し忍びなかった。恐らく、アルニラ様もお兄様も気にしないとは思うが、少し気が引けるのだ。
「三人とも! 無事!?」
そう思っていた私の耳に、聞きなれた声が聞こえてきた。
これは、アルニラ様の声だ。どうやら、騒ぎに他の人達が気づいたようだ。
予想していなかった人物の登場に、私はかなり焦っている。正直、王子とはできれば会いたくなかった。その人に会ってしまったため、とても混乱している。
こういう時には、どうすればいいのだろうか。礼儀作法は、お兄様から教えられている。その通りにすれば、いいだけのはずだ。とりあえず、落ち着いて、それを思い出すのだ。
「……大丈夫ですか? なんだか怯えているようですけど」
「え? あ、えっと……」
「緊張しなくても大丈夫ですよ。落ち着いてください。といっても、難しいですよね? 王子に急に話しかけられて、動揺するななんて」
動揺している私に、クリムド様は落ち着いた声で話しかけてきた。
クリムド様は、穏やかな人であるようだ。そのことに、私は少し安心する。
だが、それでも無礼があってはならない。私も、ルーデイン家の一員なのだ。王子に対して、きちんとした態度で接していかなければならないだろう。
「お二人も、そんなに緊張しないでいいですよ」
「え?」
そこで、クリムド様は少し困ったような顔でそう言ってきた。
私が左右を確認すると、それぞれ固まっているエルヴィルとオルリエがいた。
どうやら、二人もかなり緊張しているようだ。それも、当然だろう。相手は同じなのだ。まだ幼い二人が、緊張しないはずはない。
ここは、年長者である私がきちんとしなければならないだろう。弟や妹の前で、みっともない姿を見せている場合ではない。
「ああ、あなたが魔法で救助していた様子は、全て見ていましたよ。見事な手際でしたね……」
「え? あ、ありがとうございます」
「あの距離から、子供とはいえ、人一人を止めておくのはかなり大変でしょう。あなたは、かなりの魔力を持っているようですね」
「えっと……そうなのかもしれません」
クリムド様は、一連の事件の一部始終を向ていたようだ。
確かに、私の魔法の才能はすごいかもしれない。私も、あの距離から人一人を止められることが普通ではないことはわかっている。
その才能があったから、私はオルリエを助けられたのだ。魔法の才能に恵まれていて、本当に良かったと思う。
「あなたには、魔法の才能がありますね。魔法学校への入学などは、考えていますか?」
「え? あ、それは、一応、お兄様からそういう話はされたことはあります」
クリムド様は、魔法学校について触れてきた。
魔法学校とは、魔法の扱い方など習うための学校である。そこへの入学については、お兄様から話されたことが何度かあった。魔法以外も学べるし、行っておいて損はないそうだ。
ただ、ルーデイン家に学費まで出してもらうのは、少し忍びなかった。恐らく、アルニラ様もお兄様も気にしないとは思うが、少し気が引けるのだ。
「三人とも! 無事!?」
そう思っていた私の耳に、聞きなれた声が聞こえてきた。
これは、アルニラ様の声だ。どうやら、騒ぎに他の人達が気づいたようだ。
4
お気に入りに追加
2,074
あなたにおすすめの小説
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。

玉の輿を狙う妹から「邪魔しないで!」と言われているので学業に没頭していたら、王子から求婚されました
歌龍吟伶
恋愛
王立学園四年生のリーリャには、一学年下の妹アーシャがいる。
昔から王子様との結婚を夢見ていたアーシャは自分磨きに余念がない可愛いらしい娘で、六年生である第一王子リュカリウスを狙っているらしい。
入学当時から、「私が王子と結婚するんだからね!お姉ちゃんは邪魔しないで!」と言われていたリーリャは学業に専念していた。
その甲斐あってか学年首位となったある日。
「君のことが好きだから」…まさかの告白!

若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております

みんなが嫌がる公爵と婚約させられましたが、結果イケメンに溺愛されています
中津田あこら
恋愛
家族にいじめられているサリーンは、勝手に婚約者を決められる。相手は動物実験をおこなっているだとか、冷徹で殺されそうになった人もいるとウワサのファウスト公爵だった。しかしファウストは人間よりも動物が好きな人で、同じく動物好きのサリーンを慕うようになる。動物から好かれるサリーンはファウスト公爵から信用も得て溺愛されるようになるのだった。

家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
婚約破棄の慰謝料を払ってもらいましょうか。その身体で!
石河 翠
恋愛
ある日突然、前世の記憶を思い出した公爵令嬢ミリア。自分はラストでざまぁされる悪役令嬢ではないかと推測する彼女。なぜなら彼女には、黒豚令嬢というとんでもないあだ名がつけられていたからだ。
実際、婚約者の王太子は周囲の令嬢たちと仲睦まじい。
どうせ断罪されるなら、美しく散りたい。そのためにはダイエットと断捨離が必要だ! 息巻いた彼女は仲良しの侍女と結託して自分磨きにいそしむが婚約者の塩対応は変わらない。
王太子の誕生日を祝う夜会で、彼女は婚約破棄を求めるが……。
思い切りが良すぎて明後日の方向に突っ走るヒロインと、そんな彼女の暴走に振り回される苦労性のヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真のID:29284163)をお借りしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる