妾の子である公爵令嬢は、何故か公爵家の人々から溺愛されています。

木山楽斗

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第5話 助けられた命

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 私は、木から落ちそうになっていたオルリエを魔法で助けた。
 とりあえず、私は外に出てきていた。二人は、私を見て、少しだけ驚いている。

「お姉様、どうして、こちらに……」
「あ、もしかして……」
「うん。窓から、あなた達の様子が見えたから、魔法で助けたんだ」

 私は、事情を説明しながら、オルリエの体をゆっくりと下ろしていく。
 近づいたことで、魔法の操作はかなり楽になっている。そのため、ゆっくりと安全にオルリエの体を下すことができた。

「オルリエ、どこも怪我をしていない?」
「あ、はい。大丈夫です。それより、お姉様にお願いが……」
「大丈夫、それはわかっているよ」

 オルリエは、どこも怪我をしていないようだった。
 一先ず、私はそのことに安心する。
 ただ、まだ終わっていない。木の上にいる子猫を、助ける必要があるのだ。

「はあっ……」
「ニャァ……?」

 私は、魔法を使って子猫を木の上から下ろしいく。
 子猫は、不思議そうな顔をしながら、私の手の中に納まった。意外なことに、子猫は暴れたりしない。結構、人懐っこい性格であるようだ。

「お姉様、ありがとうございます」
「どういたしまして、この子はどこから来たのかな?」
「それはわかりません。恐らく、迷い込んだのだと思いますけど……」
「迷い込んだか……それは、少し困ったことだね」

 私は、子猫をオルリエに渡してから、周囲を見渡してみた。
 まだ小さいこの子の親が、どこかにいないかと思ったからだ。ただ、人間の目で、動物を見つけるのは難しい。どこかに隠れられたら、見つけることはできないだろう。
 もしかしたら、飼い猫の可能性はある。ただ、首輪などはつけていないので、野良猫である可能性が高いだろう。

「この子を、どうしましょうか……? お姉様は、家で飼うこと……または預かることができると思いますか?」
「それは、どうだろう? でも、アルニラ様もお兄様も、オルリエが真剣に頼めば、その思いを汲み取ってはくれると思うよ」
「そうですね……私は、この子のことを相談しようと思います」

 オルリエは、この子を飼いたいと思っているようだ。
 それに、アルニラ様もお兄様も、別に反対はしないだろう。オルリエが真摯に決めたなら、二人はそれを受け止めてくれるはずだ。

「見事でしたね……」
「え?」

 そんなことを考えていた私の耳に、若い男性の声が聞こえてきた。
 その声は、今まで私が聞いたことがない声だ。少なくとも、この屋敷の人間ではないだろう。
 今ここで、この屋敷の人間ではない。そこから考えると、私に話しかけてきた人物が誰かが大体わかる。

「クリムド様……?」
「ええ、よくわかりましたね」

 私達の前に現れたのは、第三王子のクリムド様だった。
 そんな大物がいきなり現れるとは、とても驚きである。
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