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第3話 母とともに
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私は、お兄様との話し合いを終えて、自室に戻って来ていた。
「ただいま」
「あ、お帰りなさい」
部屋にいたお母さんが、私の挨拶に返してくれた。
私は、お母さんと一つの部屋で暮らしている。この屋敷に来た時、不安だったため同室にしてもらい、それからずっとそれが続いているのだ。
アルニラ様やお兄様から、個々に部屋を割り当ててもいいと言われることもあるが、私達は今の生活に満足している。
というか、このような広い部屋は一人では不安になるので、二人で暮らすくらいが丁度いいのだ。
「どうだった?」
「えっと……近々、第三王子であるグリムド様が訪ねてくるみたいだよ」
「あ、そうなのね。それは、結構大変そうだけど……」
「まあ、私達はこの部屋から出ないようにしようよ。その方が楽だろうし……」
「そうね。そうしましょうか」
私だけでなく、お母さんにもこの屋敷の人々は優しかった。
アルニラ様は、夫の浮気相手であるはずのお母さんをとても気遣ってくれるし、兄弟姉妹もまるでもう一人の母親であるかのように慕っているのだ。
そのような扱いなど、中々できることではない。本当に、この屋敷の人々は優しい人ばかりなのだ。
「はあ、それにしても、王子様ね……まさか、こんな暮らしをしているなんて、数年前までは考えてもみなかったわ……」
「そうだよね……」
お母さんは、私を一人で育てていた。
お父様にも、私ができた事実を秘匿して、隠し通していたのである。
しかし、お父様が罪の大きさに耐え切れず、アルニラ様に打ち明けて、調査した結果、私達が見つかったのだ。
「あの時は、こんなことになるなんて、予測していなかったわ。でも、結果的には良かったということなのかしら?」
「うん。良かったと思うよ。家族も増えたし、いいことばかりだったね」
「あの人には、申し訳ないことをしたような気がするけど……」
「それは、仕方ないことだよ。そもそも、お父様が過ちを犯さなかければ、こうならなかった訳だし……」
お父様は、酒に酔った勢いで、お母さんを口説いてしまったらしい。
平民だったお母さんは、公爵家の貴族であるお父様の押しに耐え切れず、結果的に過ちが起こったようである。
その結果、なんと子供ができたのだ。それが、私なのである。
「まあ、アルニラ様もお父様には色々と思う所があるみたいだし、多分大丈夫なんじゃないかな?」
「そうだといいのだけど……」
お父様の立場は、かなり悪くなった。
普通に考えて、アルニラ様が許さなくてもおかしくはない。
だが、アルニラ様は特に厳しい処分などを下していないのだ。アルードお兄様の件ですくわれた恩があるからなのかもしれない。
とりあえず、今は皆、普通に幸せといえるだろう。だから、特に悩む必要などないはずである。
「ただいま」
「あ、お帰りなさい」
部屋にいたお母さんが、私の挨拶に返してくれた。
私は、お母さんと一つの部屋で暮らしている。この屋敷に来た時、不安だったため同室にしてもらい、それからずっとそれが続いているのだ。
アルニラ様やお兄様から、個々に部屋を割り当ててもいいと言われることもあるが、私達は今の生活に満足している。
というか、このような広い部屋は一人では不安になるので、二人で暮らすくらいが丁度いいのだ。
「どうだった?」
「えっと……近々、第三王子であるグリムド様が訪ねてくるみたいだよ」
「あ、そうなのね。それは、結構大変そうだけど……」
「まあ、私達はこの部屋から出ないようにしようよ。その方が楽だろうし……」
「そうね。そうしましょうか」
私だけでなく、お母さんにもこの屋敷の人々は優しかった。
アルニラ様は、夫の浮気相手であるはずのお母さんをとても気遣ってくれるし、兄弟姉妹もまるでもう一人の母親であるかのように慕っているのだ。
そのような扱いなど、中々できることではない。本当に、この屋敷の人々は優しい人ばかりなのだ。
「はあ、それにしても、王子様ね……まさか、こんな暮らしをしているなんて、数年前までは考えてもみなかったわ……」
「そうだよね……」
お母さんは、私を一人で育てていた。
お父様にも、私ができた事実を秘匿して、隠し通していたのである。
しかし、お父様が罪の大きさに耐え切れず、アルニラ様に打ち明けて、調査した結果、私達が見つかったのだ。
「あの時は、こんなことになるなんて、予測していなかったわ。でも、結果的には良かったということなのかしら?」
「うん。良かったと思うよ。家族も増えたし、いいことばかりだったね」
「あの人には、申し訳ないことをしたような気がするけど……」
「それは、仕方ないことだよ。そもそも、お父様が過ちを犯さなかければ、こうならなかった訳だし……」
お父様は、酒に酔った勢いで、お母さんを口説いてしまったらしい。
平民だったお母さんは、公爵家の貴族であるお父様の押しに耐え切れず、結果的に過ちが起こったようである。
その結果、なんと子供ができたのだ。それが、私なのである。
「まあ、アルニラ様もお父様には色々と思う所があるみたいだし、多分大丈夫なんじゃないかな?」
「そうだといいのだけど……」
お父様の立場は、かなり悪くなった。
普通に考えて、アルニラ様が許さなくてもおかしくはない。
だが、アルニラ様は特に厳しい処分などを下していないのだ。アルードお兄様の件ですくわれた恩があるからなのかもしれない。
とりあえず、今は皆、普通に幸せといえるだろう。だから、特に悩む必要などないはずである。
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