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26.それぞれの結末
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「それで、あれから二人がどうなったのかわかったのか?」
「ああ、はい。一応、聞いてはいます。どうやら捕まったみたいで……」
「捕まった?」
「どうやら盗みを働いていたらしく……」
私は、サルマンデ侯爵家に挨拶に来ていた。
それ自体はなんとか無事に終わり、今はノルード様と二人きりで話している。
そこで話題に出たのは、イルルグ様とウルーナ嬢のことだ。あれから二人がどうなったのか、ノルード様は気にしていたらしい。
私もそこそこ気になっていたため、彼らに関しては少々調べていた。
その情報は、すぐに見つかった。二人はあの後、憲兵に拘束されていたのだ。どうやら彼らは、リヴァーテ伯爵家の屋敷に来るまでの間に盗みを働いていたらしい。
「二人には貴族としての誇りなど欠片もなかったということか……」
「ええ、まあ、そういうことになりますね……」
イルルグ様とウルーナ嬢は、落ちる所まで落ちていたといえる。
ノルード様には言っていないが、二人はどうやら高級な宿でしばらくの間過ごしていたらしい。
追い出された時に、それだけのお金があったならもっと色々なことができただろう。彼らは色々と、勝手過ぎる。その報いを、今はしっかりと受けていることだろう。
「でも、あの時のノルード様は、格好良かったですよ?」
「む……」
「良い婚約だとは思っていましたが、あの時ノルード様が二人に食ってかかってくれて、思ったんです。この人が婚約者で、本当に良かったって」
そこで私は、ノルード様にあの時の自分の気持ちを伝えておくことにした。
あの身勝手な二人を追い返せたのは、まず間違いなくノルード様のお陰だ。彼という婚約者と巡り会えたことは、本当に幸運なことだろう。今はそう思っている。
「……それなら良かった。しかし、そういう意味なら俺はあなたのことを尊敬している。あなたは困難を乗り越えてきたのだと、あの時わかったからな」
「いいえ、別に特別なことなどはしていませんよ。私はただ、流れに身を任せていただけで……ああ、もちろん、心強い味方のお陰でもありますが」
「そういった気丈な所に、俺は好感が持てるのだろうな。あなたとなら、幸せな家庭が築けそうだ……なんて、気が早いだろうか」
「い、いえ、そのようなことは……」
私達は、お互いに笑い合っていた。
これから、どのような未来が訪れるのかはわからない。
ただ、わかるのはそれが幸せな未来であるということだ。ノルード様と一緒なら、きっとそうなるだろう。根拠はないが、私はそう思っている。
END
◇◇◇
エピローグ(モブside)
「出せー! ここから出せ!」
「私を誰だと思っているのですか! このウルーナを、こんな所に閉じ込めておくなんて、なんという愚かなことをっ!」
牢屋の中から、二人の声が響き渡ってきた。
それに見張りの兵士は、辟易とする。その声は何度も聞こえてきており、いくら注意しても収まらないからだ。
「どうしてこんなことに……」
「……元はと言えば、お兄様のせいではありませんか」
「何?」
「お兄様が婚約破棄なんてしなければ、こんなことにはならなかったのです! 何が妹のためですか! 本当に私のことを思っているなら、あんなことをしなければ良かったのに!」
「な、なんだと……」
牢屋の中で、二人は言い争いを始めていた。
それに兵士は、ゆっくりと息を吐く。二人に呆れていたのである。
「この! 僕がどれだけお前に良くしてやったと思っている!」
「恩を着せたかったのですか! みっともない兄ですこと」
「お前はっ――」
「……てめぇら! うるさいんだよ!」
兵士が呆れていると、別の牢屋から怒号が飛んだ。
それは、他の囚人の声である。二人の言い争いによって安寧の時を邪魔されて、かなり怒りを覚えているようだ。
そこで兵士は気付いた。二人は貴族だったと聞いている。そういった権力者に対して、囚人達の中には激しい恨みを抱いている者もいる。
そういった者達から、二人はこれから厳しい接し方をされるかもしれない。そう思ったのだ。
ただ彼は、そのことをすぐに気にしないことにした。自分が助ける義理があるという訳でも、ないと思ったからだ。
それから兵士は、いつも通り仕事を続けることにしたのだった。
「ああ、はい。一応、聞いてはいます。どうやら捕まったみたいで……」
「捕まった?」
「どうやら盗みを働いていたらしく……」
私は、サルマンデ侯爵家に挨拶に来ていた。
それ自体はなんとか無事に終わり、今はノルード様と二人きりで話している。
そこで話題に出たのは、イルルグ様とウルーナ嬢のことだ。あれから二人がどうなったのか、ノルード様は気にしていたらしい。
私もそこそこ気になっていたため、彼らに関しては少々調べていた。
その情報は、すぐに見つかった。二人はあの後、憲兵に拘束されていたのだ。どうやら彼らは、リヴァーテ伯爵家の屋敷に来るまでの間に盗みを働いていたらしい。
「二人には貴族としての誇りなど欠片もなかったということか……」
「ええ、まあ、そういうことになりますね……」
イルルグ様とウルーナ嬢は、落ちる所まで落ちていたといえる。
ノルード様には言っていないが、二人はどうやら高級な宿でしばらくの間過ごしていたらしい。
追い出された時に、それだけのお金があったならもっと色々なことができただろう。彼らは色々と、勝手過ぎる。その報いを、今はしっかりと受けていることだろう。
「でも、あの時のノルード様は、格好良かったですよ?」
「む……」
「良い婚約だとは思っていましたが、あの時ノルード様が二人に食ってかかってくれて、思ったんです。この人が婚約者で、本当に良かったって」
そこで私は、ノルード様にあの時の自分の気持ちを伝えておくことにした。
あの身勝手な二人を追い返せたのは、まず間違いなくノルード様のお陰だ。彼という婚約者と巡り会えたことは、本当に幸運なことだろう。今はそう思っている。
「……それなら良かった。しかし、そういう意味なら俺はあなたのことを尊敬している。あなたは困難を乗り越えてきたのだと、あの時わかったからな」
「いいえ、別に特別なことなどはしていませんよ。私はただ、流れに身を任せていただけで……ああ、もちろん、心強い味方のお陰でもありますが」
「そういった気丈な所に、俺は好感が持てるのだろうな。あなたとなら、幸せな家庭が築けそうだ……なんて、気が早いだろうか」
「い、いえ、そのようなことは……」
私達は、お互いに笑い合っていた。
これから、どのような未来が訪れるのかはわからない。
ただ、わかるのはそれが幸せな未来であるということだ。ノルード様と一緒なら、きっとそうなるだろう。根拠はないが、私はそう思っている。
END
◇◇◇
エピローグ(モブside)
「出せー! ここから出せ!」
「私を誰だと思っているのですか! このウルーナを、こんな所に閉じ込めておくなんて、なんという愚かなことをっ!」
牢屋の中から、二人の声が響き渡ってきた。
それに見張りの兵士は、辟易とする。その声は何度も聞こえてきており、いくら注意しても収まらないからだ。
「どうしてこんなことに……」
「……元はと言えば、お兄様のせいではありませんか」
「何?」
「お兄様が婚約破棄なんてしなければ、こんなことにはならなかったのです! 何が妹のためですか! 本当に私のことを思っているなら、あんなことをしなければ良かったのに!」
「な、なんだと……」
牢屋の中で、二人は言い争いを始めていた。
それに兵士は、ゆっくりと息を吐く。二人に呆れていたのである。
「この! 僕がどれだけお前に良くしてやったと思っている!」
「恩を着せたかったのですか! みっともない兄ですこと」
「お前はっ――」
「……てめぇら! うるさいんだよ!」
兵士が呆れていると、別の牢屋から怒号が飛んだ。
それは、他の囚人の声である。二人の言い争いによって安寧の時を邪魔されて、かなり怒りを覚えているようだ。
そこで兵士は気付いた。二人は貴族だったと聞いている。そういった権力者に対して、囚人達の中には激しい恨みを抱いている者もいる。
そういった者達から、二人はこれから厳しい接し方をされるかもしれない。そう思ったのだ。
ただ彼は、そのことをすぐに気にしないことにした。自分が助ける義理があるという訳でも、ないと思ったからだ。
それから兵士は、いつも通り仕事を続けることにしたのだった。
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感想ありがとうございます。
この作品で楽しんでいただけているなら嬉しいです。
仰る通り、こんな兄妹は嫌だと思います。積極的に付き合い人達ではありません。
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