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20.相互の報告

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「なるほど、それは良い話だな……」
「ええ、そう思っています」

 リヴァーテ伯爵家に戻って来た私は、お父様にサルマンデ侯爵家であったことを伝えていた。
 お父様は、ひどく驚いているようだ。それは当然の反応である。友人の家に遊びに行ってきた娘が帰って来ていきなりそんなことを言われたら、動揺しない訳もない。

 お父様の目には、期待が宿っている。侯爵家との婚約、それはやはり嬉しいものなのだろう。
 だが、お父様の表情はすぐに曇った。思い出したのだろう。私の以前の婚約がどうなったかということを。

「……喜んでいる場合ではないな。私は以前、一度失敗している。しっかりと考えなければならないことだ」
「ええ、そう思います。私個人の意見としては、ノルード様は良い人ではあると思います。少なくとも、イルルグ様のように妹に偏愛を向けてはいません」
「ああ……」

 私の言葉に、お父様は目を見開いた。
 それはなんというか、何かを思い出したかのような反応だ。

「そういえば、お前にはまだ伝えていなかったな。イルルグの婚約破棄について、エーヴァン伯爵家から連絡があった。きちんと補填は行うつもりであるらしい」
「そうなのですか? それは良かったですね……イルルグ様は今、何を?」
「それが追い出されたみたいだ」
「え?」

 お父様の端的な言葉に、私は思わず変な声を出してしまった。
 私の理解が追いつかない。正直、かなり困惑してしまっている。

「お父様、それは一体どういうことなのですか?」
「言葉の通りだ。イルルグ、それにウルーナもエーヴァン伯爵家から追放されたらしい。既に親子の縁も切っているそうだ」
「それは……」

 エーヴァン伯爵の措置は、あまりに迅速で苛烈だった。
 まともな伯爵であるならば、何かしらの罰などを与えるものだとは思っていたが、そこまでのことをしているなんて驚きだ。
 ただ、考えてみれば二人がやったことはエーヴァン伯爵家に大きな打撃を与えることである。身勝手な理由で婚約破棄をした。そんな二人に対して、追放はそこまで過ぎた処置ではないのかもしれない。

「知らせを聞いた時は、私も驚いた。まあ、エーヴァン伯爵の気持ちがわからない訳ではない。とはいえ、実の息子や娘に対してそういったことをできる者はいないだろうな」
「そうですよね……」
「もっとも、それは実際に被害を受けていないから言えることなのかもしれない。私だって、妹が嫌がっているからとお前が婚約破棄したらどうなるかわからん」
「時と場合によるものなのでしょうかね……」

 イルルグ様とウルーナ嬢は、結果的に伯爵家から追い出されてしまった。
 これから二人は、苦労することになるだろう。しかしそれは、自業自得である。二人はそれだけで、とんでもないことをしたのだ。それを少しは自覚しただろうか。
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