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18.届いてきた知らせ
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「……」
「……」
祖父母の別荘で過ごしている私とルヴァリオは、届いた知らせに困惑することになった。
私の元婚約者であるアルガース様が、浮気相手だったメルセティとともに失踪した。それは、割ととんでもない事件である。
「何があったんだろうか。やっぱり駆け落ち、ということなのかな?」
「……正直、アルガース様の性質を考えると、そんなことをするとは思えないのだけれどね」
駆け落ちという可能性が、ないとは言い切れない。
ただ、アルガース様はお坊ちゃま気質な所がある。そんな彼が愛する人とはいえ、一緒に逃げ出すということなどがあるのだろうか。それは少々、疑問である。
「そもそもの話、アルガース様もメルセティ嬢にそこまで本気には見えなかったのよね。婚約破棄をした時も、どちらかというと私に縋る感じだったし」
「ふむ……」
「もっとも、メルセティ嬢の方は本気で愛しているという感じだったから、彼女が強引にことを運んだということかもしれないわね」
私は、婚約破棄した時のメルセティ嬢の様子を思い出していた。
彼女は、かなりアルガース様に熱を持っていた。彼のような人間にそこまで入れ込めるものなのかと、驚いたくらいである。
そんな彼女が駆け落ちしたいと主張して、それにアルガース様が流されたという可能性もあるだろう。それなら今頃、二人はどこかで静かに暮らしているのかもしれない。
「まあでも、状況的には駆け落ちとみなされるでしょうね。それは私達にとっては、好都合だわ」
「ああ、それはそうだよね。これで、レゼイル侯爵家には非がないと、本格的に判断されそうだ」
二人の失踪は、レゼイル侯爵家にも関係があることだった。
今までアルガース様の浮気は、一応疑惑の域を出ていなかったため、婚約破棄した側であるレゼイル侯爵家の立場も微妙だったのだ。
しかし今回の出来事によって、それも覆るだろう。私達にとって、この状況は正直ありがたいくらいである。
「そういうことなら、私達もそろそろ家に戻った方がいいのかもしれないわね。休暇はもう充分過ぎる程に、謳歌させてもらったもの」
「うん。そうしようか。お父様とお母様には、感謝しなければならないね。この休暇は、とても楽しい時間を過ごせた」
「ええ、そうね。だからこそ、私達は私達の役目を果たさなければならないわね」
これからきっと、レゼイル侯爵家は改めて動き始めるだろう。弟と平和に過ごせる時間は、もうなくなってしまうかもしれない。
しかしそれでも、私は自分の役目を果たすつもりだった。それが侯爵家の娘として生まれた私の役目だと、思っているからだ。
だから私は、胸の中にある痛みを必死に抑え込んでいた。ルヴァリオともっと一緒にいたい。その思いは、切り捨てなければならないものなのだ。
「……」
祖父母の別荘で過ごしている私とルヴァリオは、届いた知らせに困惑することになった。
私の元婚約者であるアルガース様が、浮気相手だったメルセティとともに失踪した。それは、割ととんでもない事件である。
「何があったんだろうか。やっぱり駆け落ち、ということなのかな?」
「……正直、アルガース様の性質を考えると、そんなことをするとは思えないのだけれどね」
駆け落ちという可能性が、ないとは言い切れない。
ただ、アルガース様はお坊ちゃま気質な所がある。そんな彼が愛する人とはいえ、一緒に逃げ出すということなどがあるのだろうか。それは少々、疑問である。
「そもそもの話、アルガース様もメルセティ嬢にそこまで本気には見えなかったのよね。婚約破棄をした時も、どちらかというと私に縋る感じだったし」
「ふむ……」
「もっとも、メルセティ嬢の方は本気で愛しているという感じだったから、彼女が強引にことを運んだということかもしれないわね」
私は、婚約破棄した時のメルセティ嬢の様子を思い出していた。
彼女は、かなりアルガース様に熱を持っていた。彼のような人間にそこまで入れ込めるものなのかと、驚いたくらいである。
そんな彼女が駆け落ちしたいと主張して、それにアルガース様が流されたという可能性もあるだろう。それなら今頃、二人はどこかで静かに暮らしているのかもしれない。
「まあでも、状況的には駆け落ちとみなされるでしょうね。それは私達にとっては、好都合だわ」
「ああ、それはそうだよね。これで、レゼイル侯爵家には非がないと、本格的に判断されそうだ」
二人の失踪は、レゼイル侯爵家にも関係があることだった。
今までアルガース様の浮気は、一応疑惑の域を出ていなかったため、婚約破棄した側であるレゼイル侯爵家の立場も微妙だったのだ。
しかし今回の出来事によって、それも覆るだろう。私達にとって、この状況は正直ありがたいくらいである。
「そういうことなら、私達もそろそろ家に戻った方がいいのかもしれないわね。休暇はもう充分過ぎる程に、謳歌させてもらったもの」
「うん。そうしようか。お父様とお母様には、感謝しなければならないね。この休暇は、とても楽しい時間を過ごせた」
「ええ、そうね。だからこそ、私達は私達の役目を果たさなければならないわね」
これからきっと、レゼイル侯爵家は改めて動き始めるだろう。弟と平和に過ごせる時間は、もうなくなってしまうかもしれない。
しかしそれでも、私は自分の役目を果たすつもりだった。それが侯爵家の娘として生まれた私の役目だと、思っているからだ。
だから私は、胸の中にある痛みを必死に抑え込んでいた。ルヴァリオともっと一緒にいたい。その思いは、切り捨てなければならないものなのだ。
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