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5.同じ部屋で過ごして
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「ふう……」
私は、自室のベッドの上にゆっくりと腰を下ろした。
なんだかんだ言って、今回の出来事はそれなりにショックではある。せっかく決まった婚約がなくなり、今までの苦労は水の泡だ。それなりに気落ちしてしまう。
とはいえ、自分の判断が間違っているとは思っていない。あのままアルガース様と結婚していたら、私はもっと苦労することになっていただろう。
「姉さん、大丈夫かい?」
「ええ、ルヴァリオ、心配してくれてありがとう。私は大丈夫よ……所で、どうしてそんな所に立っているの?」
一緒に部屋まで来たルヴァリオは、部屋の入り口付近に立っている。
なんというか、少し居心地が悪そうだ。私の部屋なんて、勝手知ったる場所であると思うのだが。
「いや、こうして姉さんの部屋に来るのは随分と久し振りだと思ってね……」
「あら? そうだったかしら?」
「ああ、最近は姉さんも色々と忙しかったから」
「まあ、それはそうね」
アルガース様との婚約が決まってから、私は結構忙しくしていた。
彼の浮気の噂を掴んでからは、それにかかりっきりになっていたし、こうしてルヴァリオと部屋で会う機会は、思えばなかったかもしれない。
「でもだからといって、そんなに遠慮する必要はないのではないかしら? 小さな頃は、あなたもここで過ごしていた訳だし」
「その時と今とでは、色々と事情が違うと思うんだけどね」
ここは私の部屋ではあるのだが、実質的にルヴァリオの部屋といえなくもない。
小さな頃から自室を与えられていたが、この弟は私と生活をともにしていた。お互いに寂しがり屋であったため、そうしていたのだ。
そんなルヴァリオが一人で過ごすようになったのは、いつからだっただろうか。そんなに昔のことではないような気がするのだが。
「えっと、今から四年くらい前だったかしらね? あなたが一人で過ごすようになったのは……」
「まあ、そんな所かな?」
「えっと、あなたが五歳の時に部屋を与えられた訳だから、そこから七年間……ここで過ごした時間の方が長いじゃない」
「長さの問題ではないというか……」
「そういうものかしらね」
あまり意識したことはなかったが、ルヴァリオも思春期ということなのかもしれない。
仲の良い姉弟であることは間違いないのだが、それでも一線というものがあるのだろうか。
その辺りの見極めは、私としては難しい。ルヴァリオの年の時も、弟との触れ合いなどで心境の変化などがあった訳ではないからだ。
「……えっと」
「まあでも、隣に座らせてもらってもいいかな?」
「え? ええ、それはもちろん」
私がどうするべきか考えていると、ルヴァリオが隣に腰掛けてきた。
それはもしかしたら、私に気を遣ってくれたのかもしれない。弟が離れていく寂しさなどが、表情に出ていただろうか。
私は、自室のベッドの上にゆっくりと腰を下ろした。
なんだかんだ言って、今回の出来事はそれなりにショックではある。せっかく決まった婚約がなくなり、今までの苦労は水の泡だ。それなりに気落ちしてしまう。
とはいえ、自分の判断が間違っているとは思っていない。あのままアルガース様と結婚していたら、私はもっと苦労することになっていただろう。
「姉さん、大丈夫かい?」
「ええ、ルヴァリオ、心配してくれてありがとう。私は大丈夫よ……所で、どうしてそんな所に立っているの?」
一緒に部屋まで来たルヴァリオは、部屋の入り口付近に立っている。
なんというか、少し居心地が悪そうだ。私の部屋なんて、勝手知ったる場所であると思うのだが。
「いや、こうして姉さんの部屋に来るのは随分と久し振りだと思ってね……」
「あら? そうだったかしら?」
「ああ、最近は姉さんも色々と忙しかったから」
「まあ、それはそうね」
アルガース様との婚約が決まってから、私は結構忙しくしていた。
彼の浮気の噂を掴んでからは、それにかかりっきりになっていたし、こうしてルヴァリオと部屋で会う機会は、思えばなかったかもしれない。
「でもだからといって、そんなに遠慮する必要はないのではないかしら? 小さな頃は、あなたもここで過ごしていた訳だし」
「その時と今とでは、色々と事情が違うと思うんだけどね」
ここは私の部屋ではあるのだが、実質的にルヴァリオの部屋といえなくもない。
小さな頃から自室を与えられていたが、この弟は私と生活をともにしていた。お互いに寂しがり屋であったため、そうしていたのだ。
そんなルヴァリオが一人で過ごすようになったのは、いつからだっただろうか。そんなに昔のことではないような気がするのだが。
「えっと、今から四年くらい前だったかしらね? あなたが一人で過ごすようになったのは……」
「まあ、そんな所かな?」
「えっと、あなたが五歳の時に部屋を与えられた訳だから、そこから七年間……ここで過ごした時間の方が長いじゃない」
「長さの問題ではないというか……」
「そういうものかしらね」
あまり意識したことはなかったが、ルヴァリオも思春期ということなのかもしれない。
仲の良い姉弟であることは間違いないのだが、それでも一線というものがあるのだろうか。
その辺りの見極めは、私としては難しい。ルヴァリオの年の時も、弟との触れ合いなどで心境の変化などがあった訳ではないからだ。
「……えっと」
「まあでも、隣に座らせてもらってもいいかな?」
「え? ええ、それはもちろん」
私がどうするべきか考えていると、ルヴァリオが隣に腰掛けてきた。
それはもしかしたら、私に気を遣ってくれたのかもしれない。弟が離れていく寂しさなどが、表情に出ていただろうか。
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