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11.私を知る人

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 オルタナス殿下の発案により、私はドナテル王国の魔法関連の仕事をすることになった。
 定食屋のネルリーさんは、私の新たなる門出をお祝いしてくれた。今でも彼女とは交流がある。オルタナス殿下と一緒に、食事に行くことがあるのだ。

「レフィーナさん……エルトナさんは、本当に優秀な魔法使いですね。正直、その力が怖いくらいです。前にあなたを問い詰めた時、僕は相当愚かなことをしていたのでしょうね」
「まあ、それについてはノーコメントで」

 私とオルタナス殿下は、王城のとある部屋にて対面していた。
 彼はこの国において、私の秘密を知る数少ない人物だ。そういった人が元の名前で呼んでくると、私はエルトナであることを忘れられずに済む。

「しかしこうして改めて見てみると、エルトナさんは素敵ですね。まあ、いつもも素敵ではあるのですが……」
「それはありがとうございます」
「その姿でいられないのが、残念ですね」
「いえ、その辺りは既に割り切っていますから」

 オルタナス殿下の前では、基本的に元の姿に戻るようにしている。
 そんな私のことを、彼はいつも褒めてくれる。それは素直に嬉しいことだ。
 ただ、別に私はこちらの姿にこだわりがあるという訳でもない。魔法使いにとって、姿や形などといったものは案外些細なものなのだ。

「でも、そういうことならオルタナス殿下もどちらの姿でも素敵ですよ。まあ、オルタナス殿下の元の姿はこの国の誰もが知っているものではありますが……」
「褒められるのは嬉しいですよ。ありがとうございます、エルトナさん」

 私にとって、オルタナス殿下との時間は憩いの時間になっていた。
 秘密を知っている彼には、心の底から気を許すことができる。そういう相手がいるというのは、本当に幸せなことだろう。

「さてと、そろそろ戻らないといけませんか」
「ええ、それでは私はレフィーナに戻るとしましょうか……」

 オルタナス殿下の言葉に頷いてから、私は顔を変える。
 それを彼は、じっと見つめてきた。そんな風に見つめられると、少し恥ずかしい。

「オルタナス殿下、それは少々マナー違反ではありませんか?」
「ああ、すみません。エルトナさんをなんだか目に焼き付けておきたくて……」
「それは……」

 注意した結果、私はさらに照れることになった。
 オルタナス殿下は、どうしてそのようなことを恥ずかしげもなくいえるのだろうか。なんというか、彼という人間が時々わからなくなる。
 とはいえ、悪い気分ではない。むしろ良い気分で、仕事に戻ることができそうだ。
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