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7.王城に招かれて
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「あの、本当にこんな所で話すんですか?」
「ええ、ここで構いません」
「でも、ここって……」
私は、定食屋の常連客にとある場所まで連れて来られていた。
そこは、ドナテル王国の王城である。訳もわかっていない内に、私は他国の王城に足を踏み入れていたのだ。
「王城はお気に召しませんか?」
「いえ、そういう訳ではありませんが……」
「さてと、正確な自己紹介がまだでしたね。僕の名前は、オルタナス・ドナテル。この国の第三王子です」
「第三王子?」
私は、目の前にいる人物の言葉にかなり驚いた。
まさか、彼自身が王族の一人なんて、思ってもいなかったことだ。
いや、あんな定食屋に王族が来たりするだろうか。もしかしたら、これは私を惑わすための嘘なのかもしれない。
「言っておきますが、嘘などではありませんよ」
「……ほ、本当ですか? でもそれなら、どうして王子が定食屋なんかに?」
「あそこの味が好きなんですよ。時々、お忍びで行っています。あなたと同じように、顔を少し変えてね……」
「……ばれていますか」
ドナテル王国の第三王子は、当然顔は知れているだろう。
そんな彼があんなわかりやすい所にいたということは、何かしらの魔法によって顔を変えている以外はあり得ない。
同じ魔法を使っているのだから、それくらいは気付くべきだった。どうやら私は、かなり気が緩んでいたようだ。
「行きつけの店に、そのような人がいるということで、少し調べさせてもらいました。すると、あなたの情報がまったく出てこない。まるで存在していないかのようだ」
「……存在していない、ですか」
「偽物の顔に、偽名ともなると、犯罪者なのでしょうか? その割には、中々に穏便であるということが、僕からしてみればとても恐ろしいのですが」
「別に私は、あなたに危害を加えようとは思っていませんよ」
「それは安心できますね」
オルタナス殿下は、言葉とは裏腹に私のことを警戒しているようだった。
先程から部屋には屈強な男性二人が私を見張っているし、いざとなったら容赦なんてしないということだろう。
もっとも、彼は私の力量を見誤っている。この程度の状況は、私ならどうとでもなるということまでは、わかっていないようだ。
「そろそろ教えていただけませんか? あなたが一体、何者なのか」
「そうですね……」
オルタナス殿下に事実を話すべきかどうかは、少々迷う。
半端な嘘は見抜かれる可能性が高そうだ。ここは正直に話した方がいいのかもしれない。その方が、結果的に良いような気もする。
「ええ、ここで構いません」
「でも、ここって……」
私は、定食屋の常連客にとある場所まで連れて来られていた。
そこは、ドナテル王国の王城である。訳もわかっていない内に、私は他国の王城に足を踏み入れていたのだ。
「王城はお気に召しませんか?」
「いえ、そういう訳ではありませんが……」
「さてと、正確な自己紹介がまだでしたね。僕の名前は、オルタナス・ドナテル。この国の第三王子です」
「第三王子?」
私は、目の前にいる人物の言葉にかなり驚いた。
まさか、彼自身が王族の一人なんて、思ってもいなかったことだ。
いや、あんな定食屋に王族が来たりするだろうか。もしかしたら、これは私を惑わすための嘘なのかもしれない。
「言っておきますが、嘘などではありませんよ」
「……ほ、本当ですか? でもそれなら、どうして王子が定食屋なんかに?」
「あそこの味が好きなんですよ。時々、お忍びで行っています。あなたと同じように、顔を少し変えてね……」
「……ばれていますか」
ドナテル王国の第三王子は、当然顔は知れているだろう。
そんな彼があんなわかりやすい所にいたということは、何かしらの魔法によって顔を変えている以外はあり得ない。
同じ魔法を使っているのだから、それくらいは気付くべきだった。どうやら私は、かなり気が緩んでいたようだ。
「行きつけの店に、そのような人がいるということで、少し調べさせてもらいました。すると、あなたの情報がまったく出てこない。まるで存在していないかのようだ」
「……存在していない、ですか」
「偽物の顔に、偽名ともなると、犯罪者なのでしょうか? その割には、中々に穏便であるということが、僕からしてみればとても恐ろしいのですが」
「別に私は、あなたに危害を加えようとは思っていませんよ」
「それは安心できますね」
オルタナス殿下は、言葉とは裏腹に私のことを警戒しているようだった。
先程から部屋には屈強な男性二人が私を見張っているし、いざとなったら容赦なんてしないということだろう。
もっとも、彼は私の力量を見誤っている。この程度の状況は、私ならどうとでもなるということまでは、わかっていないようだ。
「そろそろ教えていただけませんか? あなたが一体、何者なのか」
「そうですね……」
オルタナス殿下に事実を話すべきかどうかは、少々迷う。
半端な嘘は見抜かれる可能性が高そうだ。ここは正直に話した方がいいのかもしれない。その方が、結果的に良いような気もする。
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