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第15話 重すぎる信頼

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 私は、中庭でお父様と話していた。
 その話のおかげで、私の悩みは吹き飛んだ。
 お父様は、頼りになる人だ。悩みがあるなら、彼に相談するのが一番いいのかもしれない。

「……さて、そんなお前に、一つ頼みたいことがあるんだが、いいだろうか?」
「え? まあ、内容によりますけど……」
「実は、お前に次の当主を決めて欲しいのだ」
 
 そこで、お父様はそんなことを言ってきた。
 次の領主を決めて欲しい。軽い感じでその口から放たれた言葉は、とても重い内容である。

「え? 何を言っているのですか?」
「お前に、このメルスード家の次期当主に相応しい人物を見極めて欲しいのだ。つまり、弟達の中から誰を夫にするのか選ぶということだな」
「えっ……ええっ!?」

 お父様の言葉に、私は色々と動揺していた。
 当主を選ぶことは、とても重大な責任だ。自分で夫を選ぶのは、なんだか気恥ずかしい。
 色々な思いが重なって、私はいつになく大きな声を出していた。お父様は、いきなり何を言っているのだろうか。
 せっかく、悩みが解決したのに、お父様は新たな悩みを植え付けてきた。せっかく晴れやかな気持ちだったのに、曇り空に逆戻りだ。

「ちょっと待ってください。それは流石に、荷が重すぎます」
「何を言っている。お前は、次期当主の妻なのだぞ? これくらいのことで、荷が重いなどと言っている場合ではないだろう」
「いや、でも……」
「大丈夫だ。私はお前を信頼している。お前が決めた当主なら、私も異存はない。簡単なことだ。お前が、ともに歩んで行きたいと思う男を当主に決めればいい」
「そ、そんな……」

 お父様の言っていることは、なんとなく理解できてきた。
 恐らく、彼は私に選択権を与えてくれているのだろう。
 三つ子の中の誰と歩みたいか、自分で決めるように方針を定めているのだ。
 もちろん、言葉通りの信頼はあるのかもしれない。だが、一番は私を気遣っているからなのだろう。

 しかし、いくらなんでも荷が重い。
 当主を決めるということは、このメルスード家の未来を決めるということだ。
 その責任に、押しつぶされそうになってしまう。ただ、同時にお父様の言葉が響いてくる。
 当主の妻になる私は、この程度の責任から逃げてはいけないのだろう。私も、そういうことを背負う時期が、来たということなのかもしれない。

「……わかりました。私が、次の当主を決めればいいのですね」
「ああ。何、時間はある。ゆっくりと考えるといい」
「……ちなみに、弟達にそれは?」
「当然伝えるつもりだ」
「そうですか……また、色々と大変なことになりそうですね」

 私は、思わずため息をついてしまう。
 どうやら、私と弟達は、また揺れ動くことになりそうだ。
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