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第12話 仲直りして
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私は、ウルーグを探していた。
彼に、謝らなければならない。そう思っているからだ。
「あっ……」
そう思いながら、歩いているとウルーグを発見した。
彼は、廊下の壁にもたれかかって遠くを見つめている。その様子は、何かを考えているかのようだ。
「ウルーグ?」
「え?」
私が声をかけると、ウルーグは少し驚いたような表情になった。
声をかけるまで、私が来ているとはわかっていなかったようだ。
「なっ……なんだよ、俺に何か用か?」
「えっと……あなたに、謝りたいと思って」
「謝る……そうか」
私の言葉に、ウルーグはため息をついた。その表情は、少し悲しそうだ。
彼は、時々こういう顔をする。それがどういうことなのかは、定かではない。
私は、彼のこの表情は気まずさからくるものだと推測している。本当は優しい彼は、姉との関係が悪くなることを悲しく思っているのではないだろうか。
それは、私の期待なのかもしれない。しかし、もしそう思っているなら、この問題は早く解決するべきだろう。
「ごめんなさい、あなたの気持ちも考えずに、あんなことを言ってしまって……」
「くっ……」
「あなたにはあなたの考えがあるのよね? それは、全部私に話せることではない。そういうことでいいのかしら? それなら、私はもう何も言わないわ」
ウルーグは、私の言葉を受けて震えていた。
それは、怒りからくるものなのだろうか。悲しみからくるものなのだろうか。
どちらかわからないので、私は彼の言葉を待つ。彼が答えを出してくれるまで、その場を動くつもりはない。
「……俺の方こそ、悪かった。あんたにひどいこと言ってしまった」
「ウルーグ……」
「あんたは何も悪くない。俺が勝手に怒っただけだ。すまなかっ……うわっ!」
私は、思わずウルーグに抱き着いていた。
彼の言葉を聞いて、体が勝手に動いてしまったのである。
「大丈夫、気にしていないわ」
「な、何を急に……抱き着いている?」
「ごめんなさい、あなたと仲直りできたのが嬉しくて……」
「……あ、ああ、まあ、わかったから、とりあえず離れてくれ。色々とまずい」
ウルーグは、すぐに私に離れるように言ってきた。
その口調はとても優しい。先程までの彼とは、大違いである。
それを聞いて、私は安心した。彼とはきちんと仲直りできたようだ。
「もう少しこうしていたら、駄目?」
「え?」
「だって、こうやってウルーグと触れ合うのは久し振りだから。もっと、あなたの温もりを噛みしめたいの……」
「……えっと」
私は、そんなウルーグに少しお願いすることにした。
こういう風に彼と触れ合えることは、中々ない。だから、離れることを名残惜しく思ってしまったのである。
彼が次に嫌と言ったら、離れるつもりだ。しかし、どうしても彼ともう少し触れ合っていたいのである。
「まあ、後少しだけなら……」
「ありがとう、ウルーグ」
「あ、ああ……」
ウルーグは、私の提案を受け入れてくれた。
彼は、根本はとても優しい子だ。そのため、私の提案を受けいれてくれたのだろう。
こうして、私はしばらく可愛い弟の温もりを噛みしめるのだった。
彼に、謝らなければならない。そう思っているからだ。
「あっ……」
そう思いながら、歩いているとウルーグを発見した。
彼は、廊下の壁にもたれかかって遠くを見つめている。その様子は、何かを考えているかのようだ。
「ウルーグ?」
「え?」
私が声をかけると、ウルーグは少し驚いたような表情になった。
声をかけるまで、私が来ているとはわかっていなかったようだ。
「なっ……なんだよ、俺に何か用か?」
「えっと……あなたに、謝りたいと思って」
「謝る……そうか」
私の言葉に、ウルーグはため息をついた。その表情は、少し悲しそうだ。
彼は、時々こういう顔をする。それがどういうことなのかは、定かではない。
私は、彼のこの表情は気まずさからくるものだと推測している。本当は優しい彼は、姉との関係が悪くなることを悲しく思っているのではないだろうか。
それは、私の期待なのかもしれない。しかし、もしそう思っているなら、この問題は早く解決するべきだろう。
「ごめんなさい、あなたの気持ちも考えずに、あんなことを言ってしまって……」
「くっ……」
「あなたにはあなたの考えがあるのよね? それは、全部私に話せることではない。そういうことでいいのかしら? それなら、私はもう何も言わないわ」
ウルーグは、私の言葉を受けて震えていた。
それは、怒りからくるものなのだろうか。悲しみからくるものなのだろうか。
どちらかわからないので、私は彼の言葉を待つ。彼が答えを出してくれるまで、その場を動くつもりはない。
「……俺の方こそ、悪かった。あんたにひどいこと言ってしまった」
「ウルーグ……」
「あんたは何も悪くない。俺が勝手に怒っただけだ。すまなかっ……うわっ!」
私は、思わずウルーグに抱き着いていた。
彼の言葉を聞いて、体が勝手に動いてしまったのである。
「大丈夫、気にしていないわ」
「な、何を急に……抱き着いている?」
「ごめんなさい、あなたと仲直りできたのが嬉しくて……」
「……あ、ああ、まあ、わかったから、とりあえず離れてくれ。色々とまずい」
ウルーグは、すぐに私に離れるように言ってきた。
その口調はとても優しい。先程までの彼とは、大違いである。
それを聞いて、私は安心した。彼とはきちんと仲直りできたようだ。
「もう少しこうしていたら、駄目?」
「え?」
「だって、こうやってウルーグと触れ合うのは久し振りだから。もっと、あなたの温もりを噛みしめたいの……」
「……えっと」
私は、そんなウルーグに少しお願いすることにした。
こういう風に彼と触れ合えることは、中々ない。だから、離れることを名残惜しく思ってしまったのである。
彼が次に嫌と言ったら、離れるつもりだ。しかし、どうしても彼ともう少し触れ合っていたいのである。
「まあ、後少しだけなら……」
「ありがとう、ウルーグ」
「あ、ああ……」
ウルーグは、私の提案を受け入れてくれた。
彼は、根本はとても優しい子だ。そのため、私の提案を受けいれてくれたのだろう。
こうして、私はしばらく可愛い弟の温もりを噛みしめるのだった。
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