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第9話 イルルドの見解
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私は、弟の誰かの妻になることが決まった。
色々と急なことであるため、まだ心は整理できていない。
という訳で、私は弟達の話を聞いてみることにした。彼らがどう思っているか、今後のために聞いておきたいのである。
「それで、イルルドはどう思っているの?」
「どう思っているか……ですか」
最初は、三つ子の一番上のイルルドから話を聞くことにした。
彼は、とても真面目な人間である。そんな彼は、姉と婚約することをどう思っているのだろうか。
「私と婚約しても、大丈夫なの? 姉と婚約することになるのよ?」
「私は、特に問題があるとは思っていません。貴族というのは、結婚する相手の選択権がないものだと思っています。その相手が、姉上だったに過ぎません」
「……そうよね。あなたは、そういう風に判断できる子だったわね」
そこで、私は彼の性格を思い出していた。
彼は、貴族としての自覚が高い。その性分故に、私との婚約をすぐに受け入れてもおかしくない人物だったのである。
「でも、もう少し考えてみて欲しいわ。そうやって、貴族として生きることは立派なことかもしれないけど、自分が嫌なことをするのは案外苦しいものよ。私がそうだったもの……」
「姉上……」
だが、イルルドの考え方は、いつか苦しくなる可能性がある考え方だ。
事実、私は貴族として婚約者のことを我慢してきた。その結果は、イルルドも知っての通りである。
だから、彼には考えて欲しかった。本当に、望まぬ結婚を我慢できるのかを。
「……姉上、私は姉上と婚約したいとは思っていませんでした。あなたのことは、尊敬するべき姉だと思っていましたから、婚約するなどという可能性は考慮していなかったのです」
「ええ、それは当然のことだと思うわ」
「父上に言われた時、私も一瞬ではありましたが考えました。姉上と婚約することが、どういうことなのかということを」
「そうなのね……」
イルルドは、私との婚約を自分なりに考えていたらしい。
真面目な彼は、きちんと私との婚約に向き合っていたようである。
「考えた結果、私は構わないと思いました。姉上となら、婚約してもいいと思ったのです」
「……そうなの?」
「ええ、姉上は強く気高い女性です。そういう人と婚約できれば、そう思っていました。もちろん、姉上自身を望んでいた訳ではありません。ですが、姉上のような人がいいと思っていた中、姉上自身を提案されて、私はそれ程悪くないと思ったのです」
「それは……ええっと、ありがとう?」
イルルドの言葉に、私は思わずお礼を言っていた。
彼が、私のような女性を理想としていたということは、少し驚きだ。だが、同時に嬉しかった。弟に理想の女性像とされていたのは、姉としてそれなりに喜ばしいことである。
「とにかく、私は姉上と婚約しても問題ありません。きっと、姉上のように後悔することはないでしょう」
「……わかったわ。それなら、大丈夫そうね」
イルルドの話を聞いて、私は彼ならば大丈夫だと思った。
きっと、彼は私と同じような考え方をしているのだろう。
私は、弟達のことが大好きだ。それは、姉弟としての感情ではあるが、確かな好意である。
他のよく知らない人と結ばれるよりも、そういう人と結ばれる方がいい。私は、そのように思っている。
イルルドも、似たような考え方であるはずだ。他の人より、親しく理想に近い私と婚約する方がいいと思ったのだろう。
色々と急なことであるため、まだ心は整理できていない。
という訳で、私は弟達の話を聞いてみることにした。彼らがどう思っているか、今後のために聞いておきたいのである。
「それで、イルルドはどう思っているの?」
「どう思っているか……ですか」
最初は、三つ子の一番上のイルルドから話を聞くことにした。
彼は、とても真面目な人間である。そんな彼は、姉と婚約することをどう思っているのだろうか。
「私と婚約しても、大丈夫なの? 姉と婚約することになるのよ?」
「私は、特に問題があるとは思っていません。貴族というのは、結婚する相手の選択権がないものだと思っています。その相手が、姉上だったに過ぎません」
「……そうよね。あなたは、そういう風に判断できる子だったわね」
そこで、私は彼の性格を思い出していた。
彼は、貴族としての自覚が高い。その性分故に、私との婚約をすぐに受け入れてもおかしくない人物だったのである。
「でも、もう少し考えてみて欲しいわ。そうやって、貴族として生きることは立派なことかもしれないけど、自分が嫌なことをするのは案外苦しいものよ。私がそうだったもの……」
「姉上……」
だが、イルルドの考え方は、いつか苦しくなる可能性がある考え方だ。
事実、私は貴族として婚約者のことを我慢してきた。その結果は、イルルドも知っての通りである。
だから、彼には考えて欲しかった。本当に、望まぬ結婚を我慢できるのかを。
「……姉上、私は姉上と婚約したいとは思っていませんでした。あなたのことは、尊敬するべき姉だと思っていましたから、婚約するなどという可能性は考慮していなかったのです」
「ええ、それは当然のことだと思うわ」
「父上に言われた時、私も一瞬ではありましたが考えました。姉上と婚約することが、どういうことなのかということを」
「そうなのね……」
イルルドは、私との婚約を自分なりに考えていたらしい。
真面目な彼は、きちんと私との婚約に向き合っていたようである。
「考えた結果、私は構わないと思いました。姉上となら、婚約してもいいと思ったのです」
「……そうなの?」
「ええ、姉上は強く気高い女性です。そういう人と婚約できれば、そう思っていました。もちろん、姉上自身を望んでいた訳ではありません。ですが、姉上のような人がいいと思っていた中、姉上自身を提案されて、私はそれ程悪くないと思ったのです」
「それは……ええっと、ありがとう?」
イルルドの言葉に、私は思わずお礼を言っていた。
彼が、私のような女性を理想としていたということは、少し驚きだ。だが、同時に嬉しかった。弟に理想の女性像とされていたのは、姉としてそれなりに喜ばしいことである。
「とにかく、私は姉上と婚約しても問題ありません。きっと、姉上のように後悔することはないでしょう」
「……わかったわ。それなら、大丈夫そうね」
イルルドの話を聞いて、私は彼ならば大丈夫だと思った。
きっと、彼は私と同じような考え方をしているのだろう。
私は、弟達のことが大好きだ。それは、姉弟としての感情ではあるが、確かな好意である。
他のよく知らない人と結ばれるよりも、そういう人と結ばれる方がいい。私は、そのように思っている。
イルルドも、似たような考え方であるはずだ。他の人より、親しく理想に近い私と婚約する方がいいと思ったのだろう。
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