婚約破棄された私は、妹の代わりに血塗れ伯爵に嫁ぐことになりました。

２７

　ウェリルフ伯爵家の屋敷の自室にて、私はゆっくりと休んでいた。
　ウェルリフ伯爵とは、一体何者なのだろうか。最近、私の頭にあるのはいつもそれである。

「はあ……」

　そんな考えを振り払うために、私は自室の整理整頓をしていた。
　別のことをして、気を紛らせることにしたのだ。

「あれ？　これは……」

　そこで、私はあるものを見つけた。
　ウェルリフ伯爵から父に送られた手紙である。それは、私がこの屋敷に来る前に父から受け取ったものだ。彼の人となりを理解して欲しいと言われて、預かったものである。
　私は、なんとなくその手紙を読んでみることにした。この手紙を見て、今なら前と違うことを考えるのではないかと思ったのだ。

「うん……？」

　手紙を読んで、私は違和感を覚えた。
　その文字を見て、既視感を覚えたのである。一度読んでいるので、それは当然のことなのかもしれない。
　だが、そうではない気がする。何か、直近でこのような文字を見た気がするのだ。

「あっ……」

　そこで、私はある手紙を取り出した。
　それは、書庫で見つけた使用人がウェルリフ伯爵のことを記した手紙である。
　手紙に目を通して、私は驚愕することになった。その手紙の文字が、父から預かった手紙の文字と似ていたからである。

「まさか……」

　私は、二つの手紙を並べてみた。
　やはり、この手紙に書かれている文字は同じ人物によって書かれたものだ。明らかに文字が似ている。

「そんな……」

　まず思い浮かんだのは、恐怖だった。
　私は自らの体が震えていることを自覚する。こんなにも恐ろしいことがあるだろうか。使用人が記したはずの手紙は、ウェルリフ伯爵が記した手紙だったのだ。

「どうして……？」

　次に思い浮かんだのは、疑問だった。
　どうして、彼がこんな手紙を書いたのだろう。どうして、それを書庫に置いていたのだろう。私の中には、次々と疑問が思い浮かんでいた。

「……私に知らせたかった？」

　少し考えて、私はそのような答えを出した。
　いや、正確には誰かに知らせたかったと考えるべきかもしれない。自分で自分のことを他人として書くということは、そういうことなのではないだろうか。
　注目するべきなのは、この手紙の最後の方に書いてあることだろう。伯爵がどのような人物なのかは、個人の感想でしかない。その一文こそが、彼がこの手紙を書いた理由であるような気がする。

「話してみるしかないのかも……」

　私は、ウェルリフ伯爵と話してみることにした。
　この事実があれば、本当の彼と話せるのではないか。そんな期待が、私の中に芽生えたのである。