70 / 70
第70話 大好きだから
しおりを挟む
私は、イルディンから告白されていた。
弟が抱えていた思いに、私はとても胸が苦しくなってくる。
「辛かったわね……イルディン」
「姉さん……」
私は、そんな弟をゆっくりと抱きしめた。
きっと、イルディンは今までとても辛い思いをしてきただろう。
「あなたの告白、嬉しいわ」
「嬉しい?」
「ええ、最愛の弟に好きだと言ってもらえて、私は今とても嬉しいの。あなたの気持ちにすぐに応えることはできないけれど、それだけは伝えておくわ」
私は、イルディンからの告白を嬉しく思っていた。
大好きな弟が、自分を愛してくれていたのだから、それを喜ぶのは当然のことである。
ただ、それをすぐに受け入れることはできない。今まで、弟として見てきてからだ。
だから、私はこれから考えていかなければならないだろう。イルディンとの関係のことを。
「……イルディン、あなたが私のことを好きというなら、婚約を断る必要なんてないじゃない」
「え? でも、なんだか、公平ではないというか……」
「別に、素直に喜んでくれていいのよ? 私と婚約できるというのは、恋が実るという訳ではないけど、ゴールは確定しているのだから、後はこれから頑張ればいいわ」
「これから?」
「ええ、私を惚れさせてくれればいいのよ。自分で言うのも変だけど、可能性は高いと思うわ。私、イルディンのこと大好きだもの」
「姉さん……」
イルディンは、自分がそういう気持ちを抱いていることで、この婚約を断ろうとしていた。
そういう誠実さは、とても素敵なことだ。一緒になる男性が、そのような人物なら、それはとても喜ばしいことである。
このように、私は基本的に弟に対する評価は高い。だから、きっと私は近い内に、イルディンに落とされてしまうだろう。
というか、もう半分落ちているようなものかもしれない。別に、今の感情でも、私はイルディンと一線を越えられるはずだ。なんというか、私は本当に弟のことが大好きなのである。
「……わかった。それなら、これから頑張らせてもらおうかな」
「ええ、イルディン。それでこそ、私の弟よ」
イルディンは、私を惚れさせる決意をしてくれた。
そういう風に思い切れるのも、この弟の良い所である。
「ねえ、イルディン……勇気を出したあなたに、一つご褒美をあげてもいいかしら?」
「え? 何を……」
「目を瞑って……」
「うん……」
目を瞑ったイルディンに、私はそっと唇を重ねた。
最近はしていなかったが、それは弟への定番のご褒美だ。
「なっ……」
私が唇を離すと、慌てている弟が目に入ってきた。
その顔がとても可愛らしくて、私はもう一度キスしたくなったくらいだ。
こうして、私は最愛の弟と婚約することになった。これから、私の感情がどう変わっていくかはわからない。
だが、私が弟を大好きであるということだけは、絶対に変わらないことである。
弟が抱えていた思いに、私はとても胸が苦しくなってくる。
「辛かったわね……イルディン」
「姉さん……」
私は、そんな弟をゆっくりと抱きしめた。
きっと、イルディンは今までとても辛い思いをしてきただろう。
「あなたの告白、嬉しいわ」
「嬉しい?」
「ええ、最愛の弟に好きだと言ってもらえて、私は今とても嬉しいの。あなたの気持ちにすぐに応えることはできないけれど、それだけは伝えておくわ」
私は、イルディンからの告白を嬉しく思っていた。
大好きな弟が、自分を愛してくれていたのだから、それを喜ぶのは当然のことである。
ただ、それをすぐに受け入れることはできない。今まで、弟として見てきてからだ。
だから、私はこれから考えていかなければならないだろう。イルディンとの関係のことを。
「……イルディン、あなたが私のことを好きというなら、婚約を断る必要なんてないじゃない」
「え? でも、なんだか、公平ではないというか……」
「別に、素直に喜んでくれていいのよ? 私と婚約できるというのは、恋が実るという訳ではないけど、ゴールは確定しているのだから、後はこれから頑張ればいいわ」
「これから?」
「ええ、私を惚れさせてくれればいいのよ。自分で言うのも変だけど、可能性は高いと思うわ。私、イルディンのこと大好きだもの」
「姉さん……」
イルディンは、自分がそういう気持ちを抱いていることで、この婚約を断ろうとしていた。
そういう誠実さは、とても素敵なことだ。一緒になる男性が、そのような人物なら、それはとても喜ばしいことである。
このように、私は基本的に弟に対する評価は高い。だから、きっと私は近い内に、イルディンに落とされてしまうだろう。
というか、もう半分落ちているようなものかもしれない。別に、今の感情でも、私はイルディンと一線を越えられるはずだ。なんというか、私は本当に弟のことが大好きなのである。
「……わかった。それなら、これから頑張らせてもらおうかな」
「ええ、イルディン。それでこそ、私の弟よ」
イルディンは、私を惚れさせる決意をしてくれた。
そういう風に思い切れるのも、この弟の良い所である。
「ねえ、イルディン……勇気を出したあなたに、一つご褒美をあげてもいいかしら?」
「え? 何を……」
「目を瞑って……」
「うん……」
目を瞑ったイルディンに、私はそっと唇を重ねた。
最近はしていなかったが、それは弟への定番のご褒美だ。
「なっ……」
私が唇を離すと、慌てている弟が目に入ってきた。
その顔がとても可愛らしくて、私はもう一度キスしたくなったくらいだ。
こうして、私は最愛の弟と婚約することになった。これから、私の感情がどう変わっていくかはわからない。
だが、私が弟を大好きであるということだけは、絶対に変わらないことである。
1
お気に入りに追加
1,833
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(8件)
あなたにおすすめの小説
【完結】私、四女なんですけど…?〜四女ってもう少しお気楽だと思ったのに〜
まりぃべる
恋愛
ルジェナ=カフリークは、上に三人の姉と、弟がいる十六歳の女の子。
ルジェナが小さな頃は、三人の姉に囲まれて好きな事を好きな時に好きなだけ学んでいた。
父ヘルベルト伯爵も母アレンカ伯爵夫人も、そんな好奇心旺盛なルジェナに甘く好きな事を好きなようにさせ、良く言えば自主性を尊重させていた。
それが、成長し、上の姉達が思わぬ結婚などで家から出て行くと、ルジェナはだんだんとこの家の行く末が心配となってくる。
両親は、貴族ではあるが貴族らしくなく領地で育てているブドウの事しか考えていないように見える為、ルジェナはこのカフリーク家の未来をどうにかしなければ、と思い立ち年頃の男女の交流会に出席する事を決める。
そして、そこで皆のルジェナを想う気持ちも相まって、無事に幸せを見つける。
そんなお話。
☆まりぃべるの世界観です。現実とは似ていても違う世界です。
☆現実世界と似たような名前、土地などありますが現実世界とは関係ありません。
☆現実世界でも使うような単語や言葉を使っていますが、現実世界とは違う場合もあります。
楽しんでいただけると幸いです。
婚約者と妹が運命的な恋をしたそうなので、お望み通り2人で過ごせるように別れることにしました
柚木ゆず
恋愛
※4月3日、本編完結いたしました。4月5日(恐らく夕方ごろ)より、番外編の投稿を始めさせていただきます。
「ヴィクトリア。君との婚約を白紙にしたい」
「おねぇちゃん。実はオスカーさんの運命の人だった、妹のメリッサです……っ」
私の婚約者オスカーは真に愛すべき人を見つけたそうなので、妹のメリッサと結婚できるように婚約を解消してあげることにしました。
そうして2人は呆れる私の前でイチャイチャしたあと、同棲を宣言。幸せな毎日になると喜びながら、仲良く去っていきました。
でも――。そんな毎日になるとは、思わない。
2人はとある理由で、いずれ婚約を解消することになる。
私は破局を確信しながら、元婚約者と妹が乗る馬車を眺めたのでした。
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
姉の持ち物はすべて妹のもの。それなのに、玉の輿!? 旦那様を渡しなさいよ!
青の雀
恋愛
第1話
妹レイナは、なんでも私のものを欲しがる。ドレスでもアクセサリーでも。
「お姉さまの幸せは、妹レイナの幸せ。」をモットーに。
婚約者を寝取られ、差し上げたにもかかわらず、次の婚約者にまでちょっかいを出した妹。王女殿下の怒りを買い…。
第2話
公爵令嬢が婚約者の王太子の誕生日会で男爵令嬢を虐めていたと冤罪をでっちあげ婚約破棄される。
公爵令嬢は、「どうぞ、ご勝手に」とさっさと破棄を受け入れる。
慌てる国王陛下と王妃殿下、その理由は…。
セクションの意味がわかりませんか?一般的だと思って使用していました。第〇条のことをいいます。お小さい方が読まれることが多いのかしら。一般教養で普通に習うことです。法律用語の使い方を知らない人が読まれているようです。正しい法律用語を覚えられるように書いていく所存です。
永く書き過ぎました。今日で終話とさせていただきます。
また、いつかどこかで。
他サイトで継続して書いています。探してみてください。HN,タイトル違うからわからないかもです。
【完結】美しい人。
❄️冬は つとめて
恋愛
「あなたが、ウイリアム兄様の婚約者? 」
「わたくし、カミーユと言いますの。ねえ、あなたがウイリアム兄様の婚約者で、間違いないかしら。」
「ねえ、返事は。」
「はい。私、ウイリアム様と婚約しています ナンシー。ナンシー・ヘルシンキ伯爵令嬢です。」
彼女の前に現れたのは、とても美しい人でした。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。
紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。
「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」
最愛の娘が冤罪で処刑された。
時を巻き戻し、復讐を誓う家族。
娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。
男と女の初夜
緑谷めい
恋愛
キクナー王国との戦にあっさり敗れたコヅクーエ王国。
終戦条約の約款により、コヅクーエ王国の王女クリスティーヌは、"高圧的で粗暴"という評判のキクナー王国の国王フェリクスに嫁ぐこととなった。
しかし、クリスティーヌもまた”傲慢で我が儘”と噂される王女であった――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
結婚式パートは番外編で必須だと思うの。
もちろん、お父様お母様の泣き笑いのシーンも。
感想ありがとうございます。
機会があったら、それも描きたいと思っています。
誤字報告です。
「津が繋がっていない」→「血が繋がっていない」
「叶う願いと諦めていたが」→「叶わない願いと諦めていたが」
ご指摘ありがとうございます。
修正させていただきます。
68話、お前とアルメニアは津がつながっていないとあるが、血の間違いではないですか。
ご指摘ありがとうございます。
修正させていただきます。