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第64話 友人との再会

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 私は、家の前である人物の来訪を待っていた。
 今日は、家に友人が来るのだ。色々とあったため、最近はあまり会っていなかった。久し振りの再会に、私はとても嬉しい気持ちだ。
 家の前に止まった馬車から、ゆっくりと一人の令嬢が下りて来た。彼女が、私の友人であるエスリア・ラプティルファである。

「アルメ、久し振りね。元気にしていた?」
「ええ、エスリアも元気だった?」
「まあね。私は、別に問題もなかったからね」

 久し振りに会った友人は、以前と変わらず元気そうだった。
 そのことに、私は安心する。何事もなくて、本当に良かった。

「エスリアは、順調に行っているのね。その話を聞くと、なんだか安心したわ」
「そっちは、かなりこじれたみたいだね……というか、まだこじれているのかな?」
「ええ、そうなのよ。色々と、大変なことになっているの」
「そっか……まあ、元々、面倒な人だとは聞いていたけど、そこまでだったとは、驚きかも……」

 エスリアは、特に婚約者と問題が起こっていないようだった。
 しかし、よく考えてみれば、それは当然のことである。ガルビム様のような人でもなければ、大抵の婚約は上手くいくだろう。
 特に、エスリアの婚約者は人格者だと聞いている。そのような人の間に、失敗などあるはずがないのだ。
 最近、婚約者に悩まされた私にとって、そういう問題がないというのはとても羨ましい。同時に、安心できる。友人に、私と同じような苦労があって欲しいとは思わないからだ。

「イルディン君は、元気?」
「ええ、でも、今日は仕事があるみたいで、会えないかもしれないわ。時間が空けば、こっちに来たいとは言っていたけど……」
「次期当主として、絶賛勉強中だったよね? そんな忙しい人なのだから、会えないのも仕方ないかな? まあ、元気にやっているのだったら、問題ないよ」

 エスリアは、イルディンのことも聞いてきた。
 彼女とは、幼少の頃からの付き合いだ。当然、イルディンのこともよく知っている。
 ただ、今日イルディンは仕事と格闘中なのだ。早く仕事を終わらせて、こっちに合流したいと言っていたのだが、どうなるかはわからない。

「とりあえず、中に入りましょうか? いつまでも、外で話す必要はないもの」
「うん、それじゃあ、お邪魔しようかな」

 いつまでも、外で話している必要はないので、私はエスリアを家の中に招き入れる。
 久し振りの友人との再会で、とても幸福な気持ちだ。今日は、楽しい一日になりそうである。
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