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第48話 怪我している騎士
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私とイルディンは、ダルケンさんとともに村長の家に来ていた。
村長が案内してくれたのは、とある一室である。そこには、一つのベッドがあり、その上には一人の男性が寝転がっている。
「ダルケンさん……この方達が?」
「ええ、アルメネア・ラガンデ様とイルディン・ラガンデ様です」
「そうですか……このような姿で申し訳ありません。自分は、騎士のログバン・エーリンドと申します」
ベッドの上のログバンさんは、私達を見て、体を起こそうとした。
しかし、それは明らかに危ないことである。なぜなら、ログバンさんの腹部には、包帯が巻いてあるからだ。
「ログバンさん、そのままで結構です。無理に体を起こす必要はありません」
「申し訳ありません……」
イルディンは、そんなログバンさんを制止した。
当然のことではあるが、こんな状態の人に無理はさせられない。
「それより、何が起こっているのですか? その怪我といい、何か大変なことがあったように思えますが……」
「わかりました。まずは、それをお話ししましょう。村長、自分が知らない部分を話してもらえますか?」
「ええ、もちろんです」
ログバンさんの言葉に、村長はゆっくりと頷いた。
この村で何があったか、それはこの二人から聞けるようだ。
「既にご存知とは思いますが、この村は害獣による作物被害に悩まされていました。多くの作物が荒らされてしまい、その害獣に私達も対抗できない程でした。そこで、領主であるラガンデ家様に相談することになったのです」
「ええ、その相談は、僕が取り扱いましたね。それで、騎士団に協力を要請したはずです」
「その要請で、こちらのログバンさんが来てくれました。彼は、とても誠実な騎士です。私達に寄り添いながら、害獣の対策にあってくれました」
村長は、ログバンさんの方を見ながら、彼を誉めていた。
ログバンさんがまともな騎士であることは、わかっていたことだ。
こちらに来た時の接し方からも、怪我をしている様子からも、それはわかる。彼は、真面目な騎士だろう。彼自身には、特に問題はなかったはずだ。
「ただ、それでも、奴に勝てなかったのです。その結果、ログバンさんはこのように怪我をして、動けない状況になってしまったのです」
「動けない状態ですか……」
村長は、ログバンさんの腹部を悲しそうな瞳で見つめた。
その怪我が、何によって負わされたものかは考えるまでもない。
害獣と戦い、彼はこのようになってしまったのである。つまり、この村を荒らす害獣はかなり凶悪なものであるということだ。
村長が案内してくれたのは、とある一室である。そこには、一つのベッドがあり、その上には一人の男性が寝転がっている。
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「そうですか……このような姿で申し訳ありません。自分は、騎士のログバン・エーリンドと申します」
ベッドの上のログバンさんは、私達を見て、体を起こそうとした。
しかし、それは明らかに危ないことである。なぜなら、ログバンさんの腹部には、包帯が巻いてあるからだ。
「ログバンさん、そのままで結構です。無理に体を起こす必要はありません」
「申し訳ありません……」
イルディンは、そんなログバンさんを制止した。
当然のことではあるが、こんな状態の人に無理はさせられない。
「それより、何が起こっているのですか? その怪我といい、何か大変なことがあったように思えますが……」
「わかりました。まずは、それをお話ししましょう。村長、自分が知らない部分を話してもらえますか?」
「ええ、もちろんです」
ログバンさんの言葉に、村長はゆっくりと頷いた。
この村で何があったか、それはこの二人から聞けるようだ。
「既にご存知とは思いますが、この村は害獣による作物被害に悩まされていました。多くの作物が荒らされてしまい、その害獣に私達も対抗できない程でした。そこで、領主であるラガンデ家様に相談することになったのです」
「ええ、その相談は、僕が取り扱いましたね。それで、騎士団に協力を要請したはずです」
「その要請で、こちらのログバンさんが来てくれました。彼は、とても誠実な騎士です。私達に寄り添いながら、害獣の対策にあってくれました」
村長は、ログバンさんの方を見ながら、彼を誉めていた。
ログバンさんがまともな騎士であることは、わかっていたことだ。
こちらに来た時の接し方からも、怪我をしている様子からも、それはわかる。彼は、真面目な騎士だろう。彼自身には、特に問題はなかったはずだ。
「ただ、それでも、奴に勝てなかったのです。その結果、ログバンさんはこのように怪我をして、動けない状況になってしまったのです」
「動けない状態ですか……」
村長は、ログバンさんの腹部を悲しそうな瞳で見つめた。
その怪我が、何によって負わされたものかは考えるまでもない。
害獣と戦い、彼はこのようになってしまったのである。つまり、この村を荒らす害獣はかなり凶悪なものであるということだ。
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