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第37話 褒めるべきこと
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私とイルディンは、業務中少しだけ休憩していた。
私に関しては自発的に休んだが、イルディンが休んだのは私のせいである。仕事をしている弟に見惚れてしまい、その視線で集中力を切らさせてしまったのだ。
「姉さんにかっこいいと思われるのは、光栄だね」
「そうなの?」
「うん、とても嬉しいよ」
私がかっこいいと言ったため、イルディンは照れていた。そして、嬉しそうである。
まさか、ここまで嬉しそうにされるとは思っていなかった。もしかして、普段あまり褒めていないからだろうか。
私は、イルディンに色々と小言を言うことが多い。それにより、弟はストレスが溜まっている可能性は充分ある。
それなら、ここはいっぱい褒めてあげるべきなのではないだろうか。別に、私はイルディンのことを評価していない訳ではない。機会がないから、あまり褒めていないだけなのだ。
こういうことをきちんと言っておかないと、この弟は自分が評価されていないと落ち込んでしまう。それは、私も望む所ではない。
「イルディン、あなたはとても立派よ」
「え?」
「いつもは言えていないけど、あなたは誠実だし、仕事熱心だし、とても立派な人間だわ」
「そ、そうかな……あ、ありがとう」
私が急に褒めだしたからか、イルディンは少し引いていた。
どうやら、少し脈略がなさ過ぎたようだ。
確かに、いきなり褒めだしたら、嬉しさよりも気味悪さが勝つかもしれない。ここは、事情を順序立てて話した方がいいだろう。
「えっと、私はいつもイルディンに小言を言うことが多いわよね?」
「え? 小言?」
「あれ?」
説明しようと思った私だったが、イルディンは何故か最初の段階でつまずいていた。
なんというか、お互いの認識に齟齬があるようだである。
「姉さん、小言なんか言っていたかな?」
「え? 言っていなかったかしら? いつも、こういう所が駄目とか言っているし……」
「ああ、それは別に小言ではないよ。僕にとってもありがたいことだから、嫌だと思ったことは一回もないよ」
「あ、そうなの……」
どうやら、イルディンは私が普段から色々と言っていることを、特に嫌とは思っていなかったようだ。
それなら、良かった。ストレスになっていないなら、私としても安心できる。
「そもそも、姉さんはいつも優しく語りかけてくれているし、あれを小言なんて思えるはずがないよ。むしろ、僕としては嬉しいというか……」
「嬉しい?」
「あ、いや、なんでもないよ」
どうやら、イルディンは私が色々と言うことを嬉しいと思ってくれているようだ。
向上心が高い弟なので、きっと私から色々と学べることを幸福に思っているのかもしれない。
そういう面も、イルディンのすごい所である。普通は、そのように考えることなどできないだろう。
私に関しては自発的に休んだが、イルディンが休んだのは私のせいである。仕事をしている弟に見惚れてしまい、その視線で集中力を切らさせてしまったのだ。
「姉さんにかっこいいと思われるのは、光栄だね」
「そうなの?」
「うん、とても嬉しいよ」
私がかっこいいと言ったため、イルディンは照れていた。そして、嬉しそうである。
まさか、ここまで嬉しそうにされるとは思っていなかった。もしかして、普段あまり褒めていないからだろうか。
私は、イルディンに色々と小言を言うことが多い。それにより、弟はストレスが溜まっている可能性は充分ある。
それなら、ここはいっぱい褒めてあげるべきなのではないだろうか。別に、私はイルディンのことを評価していない訳ではない。機会がないから、あまり褒めていないだけなのだ。
こういうことをきちんと言っておかないと、この弟は自分が評価されていないと落ち込んでしまう。それは、私も望む所ではない。
「イルディン、あなたはとても立派よ」
「え?」
「いつもは言えていないけど、あなたは誠実だし、仕事熱心だし、とても立派な人間だわ」
「そ、そうかな……あ、ありがとう」
私が急に褒めだしたからか、イルディンは少し引いていた。
どうやら、少し脈略がなさ過ぎたようだ。
確かに、いきなり褒めだしたら、嬉しさよりも気味悪さが勝つかもしれない。ここは、事情を順序立てて話した方がいいだろう。
「えっと、私はいつもイルディンに小言を言うことが多いわよね?」
「え? 小言?」
「あれ?」
説明しようと思った私だったが、イルディンは何故か最初の段階でつまずいていた。
なんというか、お互いの認識に齟齬があるようだである。
「姉さん、小言なんか言っていたかな?」
「え? 言っていなかったかしら? いつも、こういう所が駄目とか言っているし……」
「ああ、それは別に小言ではないよ。僕にとってもありがたいことだから、嫌だと思ったことは一回もないよ」
「あ、そうなの……」
どうやら、イルディンは私が普段から色々と言っていることを、特に嫌とは思っていなかったようだ。
それなら、良かった。ストレスになっていないなら、私としても安心できる。
「そもそも、姉さんはいつも優しく語りかけてくれているし、あれを小言なんて思えるはずがないよ。むしろ、僕としては嬉しいというか……」
「嬉しい?」
「あ、いや、なんでもないよ」
どうやら、イルディンは私が色々と言うことを嬉しいと思ってくれているようだ。
向上心が高い弟なので、きっと私から色々と学べることを幸福に思っているのかもしれない。
そういう面も、イルディンのすごい所である。普通は、そのように考えることなどできないだろう。
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