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 私とエリグス様は、ギーファン家の現当主であるアルグナ様の前に立っていた。
 この人が、エリグス様のお父様であり、私を呼び出した張本人なのである。

「さて、まずはわざわざこちらまで出向いて頂いたことに感謝します」
「いえ……」

 アルグナ様は、特に表情を変えずに挨拶してきた。
 ここまでは、まだ社交辞令といった所なのだろう。問題は、本題に入ってからである。

「本日、あなたに来てもらったのは、私があなた方ペルート家に抱いている疑念を知って頂くためです」
「疑念……ですか?」
「ええ、私はペルート家と手を結ぶことで、よりよい未来が作れると思っていました。ですぅが、今はそれが疑問に変わっているのです」
「……」

 アルグナ様が切り出してきたのは、ペルート家への疑念だった。
 やはり、今日の呼び出しはあまりいいものではなかったらしい。
 彼が言っていることは、理解できる。つい最近まで起こっていた婚約破棄に関する騒動は、セレリアとオーフィス様が起こしたものだ。つまり、私達ペルート家が起こしたことなのである。

 それに対して、彼が疑念を抱くことは、何もおかしいことではない。
 信用できない家。そのような評価をされても、仕方ないことをしたからだ。

「最初の婚約破棄……結局は婚約解消になりましたが、あれには驚きました。ですが、その後の対応は悪くなかったと思っています。婚約者を交換して、それで本人達も納得している。問題はありましたが、そこまで評価を落としたりはしませんでした」
「そう……なのですね」

 アルグナ様の言葉に、私は少し驚いていた。
 彼は、最初の婚約破棄の時点では疑念を抱いていなかったようだ。いや、抱いていたかもしれないが、気にする必要がない程だったのだろう。
 それなら、彼のペルート家に対する疑念を強める要因は、なんなのだろうか。他に最近あったことは思いつくが、それで彼が評価を改めるのかは少し疑問である。

「それなら、セレリアとオーフィス様の婚約破棄がきっかけですか?」
「それも、まだ私は許容していました。端的に言えば、こちらには関係のないことだったからです。あなたの妹の出来が悪いという心配は、その時点で少し抱いていましたが……」

 私の予想は、少し外れていた。
 セレリアとオーフィス様の婚約破棄も、その要因ではなかったようだ。
 だが、セレリアに対して何か思う所はあったらしい。どうやら、彼が抱いている疑念は、彼女に対するものであるようだ。

「先日、私の元に一通の手紙が来ました。あなたの妹からの手紙です」
「セレリアから……?」
「その手紙の内容で、私の疑念は許容を越えました。だから、あなたを呼び出したのです」

 そこで、アルグナ様は懐から一通の手紙を取り出した。
 それが、彼の疑念が溢れ出した原因。セレリアからの手紙であるようだ。
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