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 私は、エリグス様と両想いになった。
 そこで、やっとセレリアとオーフィス様が抱いていた気持ちが理解できたのである。

「どうかしましたか?」
「その……二人も、こんな幸福な気持ちだったのかと思ったのです」
「二人……セレリア様とオーフィス様ですか?」
「ええ……」

 私の言葉に、エリグス様も少し表情を歪めた。
 彼等の気持ちと言われて、色々と思いついたようだ。

「確かに、このような幸福な気持ちになっていたなら、少しだけ理解できます。彼等が取った選択が愚かだったという事実は変わりませんが、流されたいと思うような気持ちですね」
「そうだと思います。だから、私、二人に少し同情してしまって……」
「同情ですか……確かに、前よりはわかりますね」

 私の言葉に、エリグス様はゆっくりと頷いてくれた。
 あの二人の行動には、色々と問題があった。もっと上手いやり方はあっただろうし、いい判断はできたはずだ。
 だが、それでも、あの二人には同情してしまう。同じ気持ちにならなければ、このような思いは抱かなかったかもしれない。

「改めて、僕達は彼等のようになってはいけません。何かあっても、きちんとした判断をしましょう」
「ええ、そうですね……」

 気持ちを理解した今、私達は改めて決意した。二人のように、なってはならないと。
 何もないなら、それが一番だが、何かあった時、正しい判断ができるようになっていなければならないのだ。その決意をしっかりと固めておこう。

「……さて、もう少しここにいたい気持ちはあるのですが、そろそろ僕も帰らなければなりませんね」
「あ、もうそんな時間なのですね……」
「ええ、申し訳ありませんが、これで失礼させてもらいます」

 そこで、エリグス様はそのように言ってきた。
 彼も、忙しい身である。もう少し話したい気持ちが強いが、これは仕方ないだろう。

「……」
「どうかしましたか?」
「いえ、名残惜しいと思ってしまいました。このまま、予定を無視しても一緒にいたい。そう思うと、また彼等のことを思い出したのです」
「そうですか……やっぱり、そういう気持ちが出てきてしまいますよね」
「ええ、ですが、僕は予定を果たしに行きます。それが、貴族として正しい判断ですから」

 エリグス様は、感情に流されなかった。
 このまま、予定を無視すれば、それは貴族として失格である。二人のようにならないためにも、彼は正しい判断をしようとしているのだ。

「また会える人を、楽しみにしていればいいのですよね」
「そうですね、そうするのが一番だと思います」

 そう言って、私達は笑い合った。
 また会える日を楽しみにする。そう思いながら、私達は別れるのだった。
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