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 私は、セレリアと別れて、廊下を歩いていた。
 すると、前方から見知った人間が歩いてくるのが見える。
 その人物は、オーフィス様だ。どうやら、この家を訪問していたらしい。

「オーフィス様、こんにちは。セレリアをお探しですか?」
「……なんだ、君か」

 私の言葉に、オーフィス様は微妙な反応を示してきた。
 彼は妹と同じように遠い目をしている。二人そろって、同じような目だ。その点を考えれば、相性は悪くないようにも思える。
 ただ、オーフィス様が実際どのように思っているかは知らない。もしかしたら、妹とは違うことで遠い目をしている可能性もある。ここは、彼の真意を探ってみることにしよう。

「どうかしたのですか?」
「……セレリアとの婚約のことを、少し考えているのさ」
「妹との婚約が、不満なのですか?」
「ああ……まったく、どうして僕はあそこまで彼女に惹かれていたのだろうか。今となっては、まるで理解できないことだ」

 質問してみると、とても簡単な言葉が返ってきた。
 どうやら、彼も自身の婚約に対して不満を持っているようだ。
 この二人は、私が予想した通り、恋に恋している状態だったのだろう。苦難を乗り越える自分達。その状況に酔っていたのだ。

 しかし、乗り越えるべき試練はすぐになくなってしまった。
 私とエリグス様がした提案が原因で、二人の気分は一気に冷めたのである。
 それにより、相手への愛も消失した。それが、この二人がここまで態度を変えた原因なのだろう。

 だから、妹もオーフィス様も私に対して、少し敵意のような視線を向けてくるのだ。
 どうして、自分達から試練を奪った。そのような勝手な恨みを持っているのだ。

「まあ、これから会いに行こうとは思っているが、どうせ大した気分にはならないだろう。正直、時間の無駄だと思ってしまうね」
「そうですか……」
「仕方ないか……婚約者だから、行かない訳にもいかない」

 そのように文句を言いながら、オーフィス様は歩いて行った。
 恐らく、彼等が再び愛を育むことはできないだろう。一気に冷め過ぎて、二人はお互いに対して悪い印象まで持ってしまっている。こうなっては、中々元に戻らないだろう。
 だが、それに対して、私が何かすることはない。そもそも、婚約破棄した自分達の責任なのだから、勝手にすればいいのだ。

「はあ、でも……」

 そう思った私だったが、身を翻していた。
 二人の様子を、少し見てみようと思ったのだ。
 あのままの状態の二人が衝突すると、何が起こるかわからない。その結果によって、私の寝覚めが悪くなる可能性がある。
 それを避けるために、体が勝手に動いていたのだ。割り切りたいと思っても、結局動いてしまうのは、私の悪い所かもしれない。
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