100 / 100
100.きっとこれからも
しおりを挟む
「おはようございます、イルリア嬢」
「おはようございます、マグナード様」
私とマグナード様は、朝の挨拶を交わした。
隣の席で、彼は背筋を伸ばして座っている。そういった仕草は、一学期の時と何ら変わらない。
「今日から二学期ですか。なんというか、少しやる気が出ませんね」
「マグナード様がそのように言うなんて、驚きです。まあ、その意見には同意しかないのですが」
「イルリア嬢と過ごす時間が、とても楽しかったですからね。魔法学園では、こうして教室で顔を合わせることしかできません。それが今から、少し億劫です」
私とマグナード様は、夏休みをそれなりに長い時間一緒に過ごした。
しかし、魔法学園ではそういう訳にはいかない。寮暮らしであり、異性の寮に入ることができない以上、会えるのは学び舎の中だけになる。
「放課後もぎりぎりまで一緒に過ごしましょう。もっとも、それでも一目はありますから、大胆なことはできませんが……」
「いいえ、それでもイルリア嬢と一緒に過ごせる時間が今は欲しいですね。まだ夏休みの気分が抜けていませんから、少なくともこちらの生活に慣れるまでは、そういった時間を増やしていくとしましょう」
私達の気持ちは、概ね同じだといえるだろう。
夏休みという時間を一緒に過ごせたことは、幸せなことだったといえる。
だが、その時間は幸せ過ぎたのかもしれない。このままでは、学園生活に支障が出てしまいそうだ。
ただ、それではいけないことは、私もマグナード様もわかっている。
私達はルヴィード子爵家を背負うためにも、この学園でしっかりと学ばなければならない。決して、恋愛にうつつを抜かしてばかりではならないのだ。
「……まあ後は、今学期を平和に過ごせることを願うべきでしょうね。ただでさえ、私とマグナード様の関係が公表されたことによって、鋭い視線を感じますし」
「イルリア嬢……あなたのことは、僕が守ります」
「ええ、特に心配はしていません。マグナード様のことは、信頼していますから。でも、何もないにこしたことはないですからね」
「それはまあ、そうだとしか言いようがありませんね」
一学期の時から考えて、今後私の身に何かしらの火の粉がかかってくる可能性はあるだろう。
そうならないことを祈っているのだが、それは中々に難しいことなのかもしれない。恋愛的な事柄から貴族としての事柄まで、敵を作る理由がいくらでもあってしまうからだ。
しかしそれでも、きっと大丈夫だろう。
隣にいる彼は、私のことを必ず守ってくれる。これからも、ずっと。
END
「おはようございます、マグナード様」
私とマグナード様は、朝の挨拶を交わした。
隣の席で、彼は背筋を伸ばして座っている。そういった仕草は、一学期の時と何ら変わらない。
「今日から二学期ですか。なんというか、少しやる気が出ませんね」
「マグナード様がそのように言うなんて、驚きです。まあ、その意見には同意しかないのですが」
「イルリア嬢と過ごす時間が、とても楽しかったですからね。魔法学園では、こうして教室で顔を合わせることしかできません。それが今から、少し億劫です」
私とマグナード様は、夏休みをそれなりに長い時間一緒に過ごした。
しかし、魔法学園ではそういう訳にはいかない。寮暮らしであり、異性の寮に入ることができない以上、会えるのは学び舎の中だけになる。
「放課後もぎりぎりまで一緒に過ごしましょう。もっとも、それでも一目はありますから、大胆なことはできませんが……」
「いいえ、それでもイルリア嬢と一緒に過ごせる時間が今は欲しいですね。まだ夏休みの気分が抜けていませんから、少なくともこちらの生活に慣れるまでは、そういった時間を増やしていくとしましょう」
私達の気持ちは、概ね同じだといえるだろう。
夏休みという時間を一緒に過ごせたことは、幸せなことだったといえる。
だが、その時間は幸せ過ぎたのかもしれない。このままでは、学園生活に支障が出てしまいそうだ。
ただ、それではいけないことは、私もマグナード様もわかっている。
私達はルヴィード子爵家を背負うためにも、この学園でしっかりと学ばなければならない。決して、恋愛にうつつを抜かしてばかりではならないのだ。
「……まあ後は、今学期を平和に過ごせることを願うべきでしょうね。ただでさえ、私とマグナード様の関係が公表されたことによって、鋭い視線を感じますし」
「イルリア嬢……あなたのことは、僕が守ります」
「ええ、特に心配はしていません。マグナード様のことは、信頼していますから。でも、何もないにこしたことはないですからね」
「それはまあ、そうだとしか言いようがありませんね」
一学期の時から考えて、今後私の身に何かしらの火の粉がかかってくる可能性はあるだろう。
そうならないことを祈っているのだが、それは中々に難しいことなのかもしれない。恋愛的な事柄から貴族としての事柄まで、敵を作る理由がいくらでもあってしまうからだ。
しかしそれでも、きっと大丈夫だろう。
隣にいる彼は、私のことを必ず守ってくれる。これからも、ずっと。
END
499
お気に入りに追加
2,152
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(36件)
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。
結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに
「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
【完結】都合のいい女ではありませんので
風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。
わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。
サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。
「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」
レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。
オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。
親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。
しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。
それを指示したのは、妹であるエライザであった。
姉が幸せになることを憎んだのだ。
容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、
顔が醜いことから蔑まされてきた自分。
やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。
しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。
幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。
もう二度と死なない。
そう、心に決めて。
婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです
神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。
そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。
アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。
仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。
(まさか、ね)
だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。
――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。
(※誤字報告ありがとうございます)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
必要な反省をするのは、大切ですね。
感想ありがとうございます。
仰る通りだと思います。
94.剣を交えて⚔️まだまだお兄ちゃんには敵わない‼️💦😭💦。
感想ありがとうございます。
敵うようになるには、もう少し時間がかかると思います。
93. 支える役目・お兄ちゃんの追及は続く😵。
感想ありがとうございます。
もうしばらくお付き合いください。