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81.二人きりで

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 騎士団の本拠地は王都にあるため、ロダルト様に会いに来た私達は、王都に訪れている。
 王都と言えば、ブライト殿下の実家がある。まあ実家というか、王城なのだが。
 その王城に、私達はブライト殿下のご厚意で泊まらせてもらえることになった。宿としては、これ以上ない程に豪華な場所だ。

「まあ、困ったことがあったら、そこら変にいる使用人の誰かに言ってくれ。俺の友人ということで、大抵のことは聞いてくれる」
「そ、そうですか……」

 ブライト殿下の言葉に、私はかなり縮こまっていた。
 王城なんて早々来られる場所ではない。増してやそこに泊まることになるなんて、少し前までは思ってもいなかったことだ。

「さてと、俺は父上や兄上と色々と話さなければならないことがある。まあ、一時間くらいしたら戻るから、それまで二人でゆっくりとしていてくれ」
「あ、はい」

 ブライト殿下は、この後予定があるらしい。
 王子である彼も、中々忙しい身であるのだろう。そのままブライト殿下は、足早にかけていってしまった。
 ちなみに私とマグナード様は、現在は泊まるのとは別の客室にいる。ブライト殿下がいなくなったことで、二人きりになった。まあ、ここに来るまでの道中も二人きりの時はあったので、今更といえば今更なのだが。

「ふう……とりあえず、一段落ついたと考えても良さそうですね」
「ええ、そうですね」

 マグナード様は、ゆっくりとため息をついた。
 彼の言う通り、ロダルト様が起こした一連の事件は片付いたということでいいだろう。
 なんというか、最近は本当に事件続きである。貴族であるのだから、敵を作ることも多くて当然なのだが、少し疲れてしまう。

 とはいえ、私の場合はまだ恵まれている方だ。
 マグナード様やブライト殿下といった権力者が、味方についてくれているのだから、文句なんていえる立場ではない。

「イルリア嬢は、大丈夫ですか? 色々とあった訳ですが……」
「ええ、私は大丈夫です」
「そうですか。それなら良かった」

 マグナード様は、私の言葉に笑顔を浮かべてくれていた。
 その笑顔に、私の心臓は少しだけ鼓動を早くした。なんというか、とても眩しい笑顔だ。

 それを認識して、私は思い出す。
 よく考えてみれば、事件ばかりであったため、このように憂いなく二人きりになるのは、久し振りなのかもしれない。

 そう考えると、なんだか少し緊張してきた。
 先程まではそうではなかったというのに、私はマグナード様のことを強く意識し始めていた。
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