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65.町の散策

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 ビルドリム公爵家の実家には、二泊三日の期間滞在する予定である。
 明日にはもう帰らなければならないため、ゆっくりと過ごせるのは今日が最後だ。
 という訳で、私達は別荘の近くにある町に来ていた。今日は、この辺りを散策する予定なのである。

「さてと、どちらに行きましょうかね? 何かご希望はありますか?」
「いや、俺は特にないな。ここは初めて来るイルリア嬢達に聞くとしよう」
「そもそも、ブライト殿下には聞いていませんよ。こういう時にはレディを優先するべきですからね?」
「ああ、それもそうか」

 マグナード様とブライト殿下は、私達の方を見てきた。
 それに対して、私とミレリア嬢は顔を見合わせる。そしてそのまま私達は、エムリーの方に視線を向けた。どうやら、私達の気持ちは同じようである。

「エムリー、どこか行きたい所はあるかしら?」
「え? 私、ですか? 私なんかのことは気にせず、お二人の意見を……」
「時間はそれなりにありますから、順番ということにしませんか? まずはエムリー嬢の意見から、その次にイルリア嬢で、最後に私、ということでいかかでしょうか?」
「あ、そういうことなら……」

 最初は遠慮していたエムリーだったが、三人平等に行きたい場所を選べるということで、納得してくれたようだ。
 実の所、この提案の裏には年少者であり精神的にも幼いエムリーを優先させたかったという気持ちもあったのだが、それは恐らく本人には悟られていないだろう。

「それで、エムリー嬢の行きたい場所はどこなのでしょうか?」
「えっと、そうですね……それならせっかくですから、ケーキとかそういったものが食べたいです」
「ケーキ……それはいいわね。私も行きたいわ」

 エムリーの提案は、私にとっても嬉しいものだった。
 ただ、同時に私はあることを思っていた。エムリーは昔から甘いものが好きだったのだが、そういった趣向は変わっていないようなのである。

「甘いものか、別にそういったものが悪いとは思わないが、まずは昼食の方がいいんじゃないか?」
「あ、それはそうですね。すみません。それについてあまり考慮していませんでした」
「ああいや、謝るようなことではないが」

 ブライト殿下は、とてももっともな意見を出してくれた。
 私達はまだ、昼食を取っていない。時間帯的に、まず優先するべきはそちらだ。

「せっかくなら、山の幸なんかをいただきたいですね。この辺りは緑が豊富ですし」
「それでは、そういったお店に行きましょうか。ケーキはその後、ということで」

 私の意見に、マグナード様はゆっくりと頷いてくれた。
 こうして、私達のこれからの予定がある程度決まったのだった。
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