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63.認識の変化

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「……それで、エムリー嬢のことは気にならなくなったと?」
「ええ、そうなんです。なんというか、もうすっきりしました」
「なるほど、そうですか。心の持ちよう、ということなのでしょうかね……」

 エムリーのことを割り切れるようになってから一夜明けて、私はマグナード様と話していた。
 昨日のことを話すと、マグナード様は驚いたような顔をした。私の割り切り方というものは、他の人からみたら不思議なものなのかもしれない。

「エムリー嬢はどんな様子なんですか? あなたとのことを気にしていたのですよね?」
「まあ、まだ少しだけぎこちない感じはしますね。でも、多分大丈夫だと思います。私の態度が変わったのは、向こうも察しているでしょうから」
「そういうものですか……」

 エムリーの方は、急に私の態度が変わったためか、まだ困惑している様子だった。
 ただ、昨日のように気落ちしているとい感じでもなかったし、それ程心配はいらないだろう。
 私と彼女の過去のことは、うやむやにしておく方がいい。このまま上手く誤魔化していくことにしよう。

 ちなみに件のエムリーは、今は私達の視線の先で、ブライト殿下とミレリア嬢と話している。
 エムリーは昨日の内に、二人とは概ね打ち解けて仲良くなっていたのだ。
 逆に、私と同じように微妙な感情を抱いていたマグナード様とは、まだほとんど話していないらしい。

「……確かに、彼女を見る目が変わっていますね」
「え? わかるものなのですか?」
「ええ、なんというか、とても温かい目をしているので」

 そこでマグナード様は、私の視線について指摘してきた。
 その指摘には、少し驚いてしまう。ただ、わからないという訳ではない。エムリーに対する気持ちが変わったのだから、そうなってもおかしくはないだろう。
 もっとも、それが他者から見てわかるものだったという事実は恥ずかしい。私はそんなにわかりやすい人間なのだろうか。

「まあでも、確かにエムリーのことは可愛いと思えるようになりました」
「可愛い、ですか?」
「ええ、妹というのは普通はそういう存在なのでしょうけれどね。私は初めてそう思いました。物心ついた頃には、もうエムリーは生意気でしたから」
「そうでしたか」
「……こういう考え方をするのはよくないとは思いますが、あのエムリーは既に死んだ、と思っています。今の彼女は、今の彼女です。それ以上でもそれ以下でもない……」

 エムリーの記憶が戻るのかどうかは、わからない。
 ただ、それはもう考えないようにするつもりだ。戻った時は戻った時に、考えればいいのだから、今はただ仲の良い姉妹として、彼女と過ごすことにしよう。
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