53 / 100
53.合わせづらい顔
しおりを挟む
「おはようございます、イルリア嬢」
「お、おはようございます、マグナード様……」
ミレリア嬢と寮で色々と話した翌日、私は登校していた。
登校すると、いつも通りにマグナード様が挨拶してくれる。事件の後は反省していたのか、少し元気がなかった彼も、今はすっかり以前のように戻っている。
それはとても喜ばしいことではあるのだが、今の私は彼の顔をまともに見られなくなっていた。原因はわかっている。ミレリア嬢が、色々と余計なことを言ってくれたおかげだ。
「どうかされましたか? なんだか、変ですね?」
「え? そ、そうでしょうか?」
挙動不審だったからなのか、マグナード様は私の様子を指摘してきた。
基本的に、彼は聡い人である。だからこそ、昨日のことを引きずりたくなかったのだが、一晩寝ても残念ながら落ち着くことはできなかった。
「ああそういえば、昨日はミレリア嬢を部屋に招いていたのでしたね? もしかして、それが原因なのでしょうか?」
「え? えっと、その、それは……」
いくらマグナード様が聡い人だからといって、原因まで見抜かれているとは驚きだ。
驚きすぎて、言葉が出て来ない。一体彼は、どこまで把握しているのだろうか。
「仲が良いことはいいことだとは思いますが、あまり夜更かしなどしてはいけませんよ。それで翌日に支障が出るというのは、良くありませんからね。ですから次は休みの前日などにお誘いしたらいかがでしょうか?」
「あ、はい。そうですね……」
マグナード様の言葉に、私は安心していた。
どうやら彼は、私が単に夜更かして疲れていると思ったらしい。ミレリア嬢と夜通しして話したとでも、思っているのだろうか。
ただ実際の所、昨日は日が暮れる頃には別れていた。それ以上いると明日に支障が出るかもしれないと、ミレリア嬢が帰ったのだ。
「ミレリア嬢とは、楽しい時間を過ごすことができました」
「そうですか。それは何よりです。彼女はお元気ですか? 違うクラス故に、あまり顔を合わせませんから、実の所少し心配していたのです」
「ああ、それに関しては安心してください。とても元気でしたから」
「そうですか」
私の言葉に、マグナード様は安心したように笑顔を浮かべていた。
やはり彼も、先日の件で傷ついたミレリア嬢のことが、かなり心配だったのだろう。立場的に、彼女を直接訪ねることなどは、避けていたのかもしれない。
ちなみに、そのミレリア嬢は元気が有り余っていたと思う。有り余っていなかったら、あんなに私を問い詰めてはこなかっただろうし。
「お、おはようございます、マグナード様……」
ミレリア嬢と寮で色々と話した翌日、私は登校していた。
登校すると、いつも通りにマグナード様が挨拶してくれる。事件の後は反省していたのか、少し元気がなかった彼も、今はすっかり以前のように戻っている。
それはとても喜ばしいことではあるのだが、今の私は彼の顔をまともに見られなくなっていた。原因はわかっている。ミレリア嬢が、色々と余計なことを言ってくれたおかげだ。
「どうかされましたか? なんだか、変ですね?」
「え? そ、そうでしょうか?」
挙動不審だったからなのか、マグナード様は私の様子を指摘してきた。
基本的に、彼は聡い人である。だからこそ、昨日のことを引きずりたくなかったのだが、一晩寝ても残念ながら落ち着くことはできなかった。
「ああそういえば、昨日はミレリア嬢を部屋に招いていたのでしたね? もしかして、それが原因なのでしょうか?」
「え? えっと、その、それは……」
いくらマグナード様が聡い人だからといって、原因まで見抜かれているとは驚きだ。
驚きすぎて、言葉が出て来ない。一体彼は、どこまで把握しているのだろうか。
「仲が良いことはいいことだとは思いますが、あまり夜更かしなどしてはいけませんよ。それで翌日に支障が出るというのは、良くありませんからね。ですから次は休みの前日などにお誘いしたらいかがでしょうか?」
「あ、はい。そうですね……」
マグナード様の言葉に、私は安心していた。
どうやら彼は、私が単に夜更かして疲れていると思ったらしい。ミレリア嬢と夜通しして話したとでも、思っているのだろうか。
ただ実際の所、昨日は日が暮れる頃には別れていた。それ以上いると明日に支障が出るかもしれないと、ミレリア嬢が帰ったのだ。
「ミレリア嬢とは、楽しい時間を過ごすことができました」
「そうですか。それは何よりです。彼女はお元気ですか? 違うクラス故に、あまり顔を合わせませんから、実の所少し心配していたのです」
「ああ、それに関しては安心してください。とても元気でしたから」
「そうですか」
私の言葉に、マグナード様は安心したように笑顔を浮かべていた。
やはり彼も、先日の件で傷ついたミレリア嬢のことが、かなり心配だったのだろう。立場的に、彼女を直接訪ねることなどは、避けていたのかもしれない。
ちなみに、そのミレリア嬢は元気が有り余っていたと思う。有り余っていなかったら、あんなに私を問い詰めてはこなかっただろうし。
75
お気に入りに追加
2,152
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。
結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに
「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……
ほらやっぱり、結局貴方は彼女を好きになるんでしょう?
望月 或
恋愛
ベラトリクス侯爵家のセイフィーラと、ライオロック王国の第一王子であるユークリットは婚約者同士だ。二人は周りが羨むほどの相思相愛な仲で、通っている学園で日々仲睦まじく過ごしていた。
ある日、セイフィーラは落馬をし、その衝撃で《前世》の記憶を取り戻す。ここはゲームの中の世界で、自分は“悪役令嬢”だということを。
転入生のヒロインにユークリットが一目惚れをしてしまい、セイフィーラは二人の仲に嫉妬してヒロインを虐め、最後は『婚約破棄』をされ修道院に送られる運命であることを――
そのことをユークリットに告げると、「絶対にその彼女に目移りなんてしない。俺がこの世で愛しているのは君だけなんだ」と真剣に言ってくれたのだが……。
その日の朝礼後、ゲームの展開通り、ヒロインのリルカが転入してくる。
――そして、セイフィーラは見てしまった。
目を見開き、頬を紅潮させながらリルカを見つめているユークリットの顔を――
※作者独自の世界設定です。ゆるめなので、突っ込みは心の中でお手柔らかに願います……。
※たまに第三者視点が入ります。(タイトルに記載)
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
【完結】都合のいい女ではありませんので
風見ゆうみ
恋愛
アルミラ・レイドック侯爵令嬢には伯爵家の次男のオズック・エルモードという婚約者がいた。
わたしと彼は、現在、遠距離恋愛中だった。
サプライズでオズック様に会いに出かけたわたしは彼がわたしの親友と寄り添っているところを見てしまう。
「アルミラはオレにとっては都合のいい女でしかない」
レイドック侯爵家にはわたししか子供がいない。
オズック様は侯爵という爵位が目的で婿養子になり、彼がレイドック侯爵になれば、わたしを捨てるつもりなのだという。
親友と恋人の会話を聞いたわたしは彼らに制裁を加えることにした。
※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。
妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。
しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。
それを指示したのは、妹であるエライザであった。
姉が幸せになることを憎んだのだ。
容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、
顔が醜いことから蔑まされてきた自分。
やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。
しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。
幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。
もう二度と死なない。
そう、心に決めて。
婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです
神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。
そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。
アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。
仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。
(まさか、ね)
だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。
――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。
(※誤字報告ありがとうございます)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる